見出し画像

うなぎの寝床がららぽーと福岡店をオープンする理由

地域文化を感じ取る場所を都市につくりたい
うなぎの寝床は2012年7月に、福岡県南部の筑後地方を中心としたものづくりを発信する場として、福岡県八女市でスタートしました。アンテナショップとしてスタートしましたが、2015年から久留米絣のMONPEのメーカーとしても活動をはじめました。当初は福岡県南のものづくりが主要な取り扱いでしたがが九州、そして全国のものづくりも紹介するようになりました。

アンテナショップとしてのはじまりから、メーカーや、ECなどの役割を付加し、2017年ころから「地域文化商社」という名称に改め、地域文化を解釈し、それを生活者に対してどう伝えることができるのか?模索と研究を続けています。

新型コロナウィルスが2020年の初頭から蔓延し、地域のものづくり、伝統的工芸品などの産地は大きく打撃を受けています。私たちはその中で、都市生活者の方々にも、地域文化という歴史やつくりて、地域資源などの文脈を組んだ「もの」を見る機会をつくらねば!という焦りを感じていました。既に地域文化に興味がある人たちが八女に来てもらうだけではなく、より多くの人に、むしろ工芸やものづくりに興味がない人にとっても、地域文化を含んだ「もの」を見てもらい、興味を持ってもらいたい。自分ごととして福岡のものづくり、九州、日本のものづくりを知ってほしい。

そういう気持ちからこの都市部の生活者の方々とコミュニケーションをとれる「うなぎの寝床 ららぽーと福岡店」をオープンします。

ららぽーと_パースタテ

産地が無くなってからでは、また復活は難しい。
日本は1974年に国は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」を定めました。その法律により、全国で伝統的工芸品を守る動きが生まれたと思います。しかし、かつては栄え、分業化が進み、各工程の職人さんが技を磨き、クオリティを保っていた時代がありましたが、現在は、分業を担っている方々が高齢化したり、材料がとれなくなったりと危機的な状況に晒されています。

古いものを単純に残すだけでは、だめで、そこに存在する技術や歴史も含んだ人々の知恵を残すという軸を忘れずに、未来へと更新し続けることが重要なのではないかと考えます。

なんとなく保存するのではなく、意思を持って、現在、未来へと更新し続けることで、生活的視点を持ちながら保存と継承を行う。それが重要なのではないでしょうか?

数年前、オランダのクラフトを振興している機関の方とお話し「日本はまだ手仕事やクラフトが仕事として残っているから良いですね。」ということを言われました。そしてセレクトショップの方は「伝統的なものや、地域でつくられたものを買い支えてくれるお客さんが存在することも良いね」とも言われました。オランダは、クラフト的な領域が職業としてはなくなり、作家やアーティストか、趣味でものづくりを行うか、二つに割れているようです。産地という概念がなくなっています。

まだ、日本では産地でのものづくりが残っていて、それは、無くなったら復活はできません。僕は教育的観点、原理的なものを知れるという観点でも、市場の中で「地域文化に接続するものづくりという知恵」を絶やしてはいけないのではないのかな?と考えます。

つくりては、現代生活で使ってもらえるように工夫し、つかいては、生活の中でものを使いながら現地を訪れて、つくりてと交流したり歴史や技術を学んだりする。

そういう双方向のやりとりが増えることを願っており、このららぽーと福岡という場所では、生活者(つかいて)に近い場所で、双方のコミュニケーションを誘発できる取り組みをいろいろ行うことができたらと考えています。

スクリーンショット 0034-03-21 午前1.03.53

全体感の中の拠点と役割 / 生活を知ることの重要性
「福岡の八女という場所で独立系カルチャーとしてやってきたのに、商業施設に出ることは残念」という声を、身内からも少し聞きます。なるほどな!そう見えるのか!と僕の中では発見でした。確かに基本的につくりてがたくさんいる地域に拠点を置いているということは、最も重要なことだと思います。そして、そこに足を運んでもらい、ものや、人、地域文化を紹介していくというスタンスは変わりません。あくまでも地域文化商社としての仕事の全体感の中で、都市部の人たち、生活者の方々に自分たちできちんと、ものや地域文化の状況をつくったりすることは大事だなと10年間運営をしていく上で感じています。

MONPEの活動に関しては、都市部の小売店さんにものとともに丁寧に産地の状況や、ものの機能性、背景なども伝えてもらうことができていると思いますが、MONPE以外のものたちや情報もきちんと伝えねばと感じています。その観点からの今回は出店です。

ぜひ、多くの方に地域文化の背景や、産地のこと、地域のこと、文化のことを考えてもらえるきっかけ、コミュニケーションの場としていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

うなぎの寝床 白水

本質的な地域文化の継承を。