詩『点景』

夏の終わる夕暮れに
 淡い風が蝉の声を運んで

白い糸のように浮き
 そして去ってゆく送り火の煙

陶器に込められた火に
 枯れた茎がぱちぱちと爆ぜて

男の子が母親に聞いた
 おじいちゃんもう帰っちゃうの

                 (1991)

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