マンイータークラブマンって何? (前編)

 インターネット上に断片情報が散らばる謎多き番組マンイータークラブマン。食人と自我というおよそ子供向けとは思えない題材の特撮ヒーローであること以外、一般には殆ど知られていない。一時期コアなファンがツイッターに非公式キャラクター名鑑を投稿していたため、目にしたことのある読者も多いのではないだろうか。本記事では、かつてカルト的な人気を誇ったイロモノ特撮ヒーロー「捕食戦士マンイータークラブマン」について解説したい。前編では作品概要、あらすじ、用語について解説しよう。
 ※という体の自作品解説記事です。捕食戦士マンイータークラブマンは現実には存在しません。

作品概要

 マンイータークラブマンを語るには胡乱戦士シリーズから説明せねばならない。胡乱戦士シリーズとは、1989年から放送開始した特撮ヒーローシリーズである。このシリーズは子供向けヒーロー作品では通常扱わないような題材を選ぶことが多かった。第1作の認識戦士ファットマンからして世界そのものを悪と断ずる狂った作家を主役に据えた攻めた内容だったし、多少尖りが収まってきた第9作の彼岸戦士ギアゾンビーにしてもトランスヒューマニズムと生死の定義を扱った一般ウケしないものだった。捕食戦士マンイータークラブマンもそうした流れの中で記念すべき第10作として撮られた作品である。テーマは食人行為と自己同一性。例に漏れず大衆に受け入れられ難いテーマであった。

 毎週日曜日の朝、全国のお茶の間に食人行為が流されていた訳だが、当然問題になった。しかし、何を目的に生きるのか、他者との関わりの中から如何に自己を確立するか、といった普遍的なテーマが理解されるにつれ視聴率が向上していったという。

あらすじ

 公式には、初回〜トキシン時田撃破がシーズン1、人食い鵺人間撃破までがシーズン2、最終回までがシーズン3とされている。しかし、この区分はシーズン3が長すぎるため、ファンの間ではグランパ・トニー撃破までがシーズン3、それ以降がシーズン4とされている。

シーズン1

 主人公の興太郎こうたろうは日々を無為に過ごす青年であったが、ある日秘密結社『人』のDr.パーソンによる改造手術を受けて人食い蟹人間ひとくいかににんげんに生まれ変わる。その直後、怪人絡みの事件によって恋人の紀子が体を失い、興太郎はズワイガニ興太郎と名乗り、全ての怪人を食い殺すことを決意するのだった。

シーズン2

 興太郎は鏡地獄かがみじごく松本と出会い、松本の影響を受けて戦う理由と生きる理由を見つめ直していく。そして、戦いを通じてDr.パーソンの遠大な陰謀の一端を掴むのであった。

 興太郎・松本とDr.パーソンとの戦いが激化していく中、新たな脅威、雑食人人間ざっしょくひとにんげんが姿を現す。雑食人人間の背後には古の種族、象人間がちらつく。

シーズン3

 辛くもDr.パーソンの人食い鵺人間形態を撃破した興太郎と松本であったが、依然として食人怪人は増加を続けていた。その謎を探るべく、興太郎らは怪人事件発生件数の多い北米へ向かった。

 興太郎は北米で松本とはぐれてしまい、現地の雑食人人間に追い詰められるが、偶然現れた偽人食い蟹人間ぎじんくいかににんげんに助けられる。以後、興太郎と偽人食い蟹人間は行動を共にする。

 北米では雑食人人間だけでなく、Dr.ピープルを名乗る怪人グループも暗躍していた。Dr.ピープルの大半は人造怪人から天然怪人に変異した強化怪人で構成されており興太郎らは苦戦を強いられたが、蟹食い人人間への変異や松本との再会でこれを退ける。そして、怪人の急増に呼応して突如として現れた悪食人人間を、魂食い蟹人間フォームの覚醒で撃破する。

シーズン4

 魂食い蟹人間フォームの覚醒で典子の死因を思い出した興太郎だったが、自我が強固になった今、その事実を受け入れつつも立ち止まることはなかった。

 興太郎らはDr.ピープルの裏切り者であるシックスセンス八木を仲間に入れ、Dr.ピープルとの戦いを激化させていく。パーソン因子の正体、象人間の陰謀、自我、様々な謎が明かされ、戦いは最終局面へ向かっていく。

用語

怪人、食人怪人

 怪人も食人怪人も同じ意味で使用される。超常能力と食人衝動を持つ人間のこと。なお、象人間は食人衝動が無いため怪人に含まれない。

人造怪人

 改造手術や修行によって“不純物”を取り込み怪人となった人間。“不純物”には動物や植物が使用されることが多い。不純物とは、人らしくない要素のことである。不純物を取り込み人から離れた存在となることで、揺り戻しとしてパーソン因子を活性化し、より人らしい人間、人人間に近付くのだ。修行によって不純物を取り込む者は人人間を目指していることが多い。改造手術を受けて不純物を取り込む者には様々な思惑があり、必ずしも人人間を目指しているとは限らない。Dr.パーソンは人人間に至る研究のために他者に改造手術を行っていた。
 ネーミングルールは、キャラクター名が「○○(能力に因んだ名前)+苗字」、怪人名が「人食い+○○(不純物の名前)+人間」である。

天然怪人(天然)

 自然発生した怪人である。生まれつき人人間の素質がある者は、パーソン因子が刺激されると天然怪人になる。人に限らず食べ物であればなんでも捕食衝動を抱くため、雑食人人間と呼ばれる。基本的に人造怪人より強い。他者の存在や認識に干渉する抽象的で破壊的な能力を持つ者が多い。抽象的な能力を行使できるのは、自他のギョモレン器官に区別がないことを本能的に知っているためである。
 ネーミングルールは、キャラクター名が「○○(能力に因んだ名前)+苗字」、怪人名が一律で「雑食人人間」である。

天然怪人(人造)

 人造怪人が人としてのアイデンティティを確立させることで天然怪人と同等の能力を得た形態。興太郎もシーズン2で天然怪人(人造)に至る。
 ネーミングルールは、キャラクター名が「○○(能力に因んだ名前)+苗字」、怪人名が「○○(不純物の名前)食い+人人間」である。

忍者

 人造怪人の中でも、不純物として「感情」を選択し、改造手術ではなく修行によって怪人に至った者たち。主に傭兵を生業としている。人造怪人だが、怪人としての超常能力だけでなく、過酷な修行で獲得した体術も駆使するため、天然怪人に引けを取らない実力を持つ。どの勢力にも属さないが、どちらかと言えば秩序に属する存在であるため、終盤は興太郎を支援した。劇中で明言されないが、松本はあからさまに忍者である。
 作中では頑なに「忍者」というワードが使用されないが、スタッフのブログやインタビューでは偶に「忍者」と呼ばれている。
 ネーミングルールは、キャラクター名が「○○(日本語の名詞)+苗字」。怪人名は無い。

悪食人人間

 地球が自らの危機を感じたとき、任意の怪人を改造して作り出す存在。人間が怪人なるなどして自立してより人らしい人間になると、オリジナルの人人間である地球と異なる存在になっていく。そうすると地球の質量が減少してしまうため、増えすぎた怪人を再び自らの一部にするため悪食人人間を生み出すのだ。

象人間

 地球に太古から住まう種族。オリジナルの人人間から完全に独立した存在であり、一人一人が異なる人人間である。現行人類の人人間化を支援する者、オリジナルの人人間への回帰を目指す者、静観する者などがおり、一枚岩ではない。
 ギョモレン器官を自在に操る。その様子は現行人類から見ると、長い鼻や蛇を操っているように見えるため、象人間や蛇人間と呼ばれる。
 ネーミングルールは、「苗字+さん」。これは象人間というより人人間のネーミングルールである。

半人人間

 怪人から人人間へ至る途中の形態。オリジナルの人人間に最も接近しているため、極めて自我が曖昧である。ここで自我を確立できれば人人間になれる。
 半人人間は自我を保つため、一人称を無理やり自分の名前とし、自分のひとつひとつの行動の主語にその一人称を使用する。このノウハウは象人間に伝わものであり、「わたし」や興太郎は赤羽さんから教わった。

パーソン因子

 人を人たらしめるもの。地球上の全ての物体に宿っているが、人間しかパーソン因子が活性化していない。活性化しているパーソン因子が多ければ多いほど人人間に近付くが、自我が希薄になり最終的には地球に吸収される。地球に吸収されずに自我を確立できれば人人間として自立できる。

ギョモレン器官

 人人間が持つ器官。地球上の全ての事象は地球のギョモレン器官の活動に過ぎない。怪人になるとギョモレン器官を地球の意思に逆らって操ることができるようになる。

後編に続く

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