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すべては、大学近くのインドカレー屋からはじまった②

大学近くにあった、メニューも価格も内装も何もかも同じの2つのインドカレー屋、「RAJAS(ラジャス)」と「SALZE(サルーゼ)」。

その距離歩いて約5秒。なぜこの2店舗は、こんな超至近距離にあるのだろうか。

ーー
大学に入って1ヶ月くらいたった後、僕は大学の授業後に友人とRAJASUへ行った。僕は「バターチキンカリー」を、友人は「シーフードカリー」をそれぞれ注文した。

インド人みたいな見た目をしたネパール人の店員さんは、独特な発音で「ショショオマチクダサーイ」と言い残し、さっさと厨房へ消えていく。

友人と「どんなサークル入る?」と全国の大学生が1回は口にするであろう話をしていると、さっきの店員さんから、僕の顔よりもひと回りもふた回りもでかいナンが運ばれてきた。

「カレーに付けなくてもうまいんだよな~」と言いながらナンを食べていると、次はカレーが運ばれてくる。
カレーは1辛から5辛まで辛さを調節でき、2辛が「日本人レベル」、3辛が「インド人レベル」、4辛が「激辛」、5辛が「地獄」というような名前だ。

最初は「インドカレー屋だから5辛は相当辛いんだろうな」と思っていたが、実際はそんなことはない。5辛でも「あー辛いなあ」くらいで、普通に食べられる。

僕はいつも通り、4辛のカレーをナンと一緒にほおばり、18歳の食欲を発揮してペロリと完食した。食後は店員さんが「サービスデス」とはにかみながらマンゴーラッシーをテーブルに置いてくれる。たまにアイスクリームの時もあるが、8割方ラッシーだ。

マンゴーラッシーを飲みほした僕らは、お会計を済ませて外へ出た。そしてすぐ、僕らは違和感に気づく。

確かに僕らは、RAJASに入ったはずだ。
しかし扉から出たいま、僕らはSALZEの前にいる。

最初は「あれ?さっきまでいたのってSALZEだっけ?」と友人と訝しげに話していたが、「メニューも内装も全く同じだし、RAJASとSALZEを間違えたのだろう」という結論にいたり、特にその後は話題にすることなく、その日は解散になった。

しかしこの現象は、後に何度も起きることになる。RAJASに入店したと思ったら、退店する時にはなぜかSALZEの前に立っているのだ。

そして僕はこれを繰り返すうち、あることに気づく。RAJASには何度も入店していたが、SALZEに入店したことは一度もなかったのだ。

それに気づいてすぐ、僕はSALZEに向かった。しかし、いつもSALZEがあるはずの場所には、なぜかRAJASが建っていた。ではRAJASUが建っていたはずの場所は?と思って向かおうとすると、僕の目の前にカタコトの店員さんが立っていた。

「セキアイテマスヨ」と声を掛けられてしまったため、なんとなくここで立ち去るのは悪い気がして、入店してしまった。そしてカレーを食べて退店すると、やっぱり僕はSALZEの前に立っている。

その後何度もSALZEへ入店しようとしても、様々な理由から入ることは出来ず、結局謎を解明することはできなかった。

大学を卒業してしまった今でも、インドカレー屋へ行くといつもRAJASとSALZEのことを思い出す。
「ここのインドカレー屋から出たら、どこへつながるのだろう」と思ってわくわくしながら、僕は今日も扉を開ける。

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