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自選50首


57577。
2013-2020年の短歌より。


何度でも言うよあなたが呆れても下手な鉄砲数撃ちゃ(当たれ、)

学生よ誇らかにあれ制服は初期装備かつ最強装備

絨毯も家具の一つもない新居 フローリングでミルクパズルを

持ち物は携帯ひとつ 行き先は無人島ではないから平気

降り注ぐ星の欠片を一身に浴びてこのまま溶けてもいいな

手を引いて煌めく夜の波を縫う 小柄な君とはぐれぬように

群青と星でつくった王冠を捧げに上る螺旋階段

新月の輪郭へ向け弾丸を放て合図のあと一斉に

洗い立てのシーツの皺を伸ばしつつ「夏来にけらし」呟けば風

弾丸はたった一つがあれば良くこの胸にあるのに意義がある


真夜中に「嫌い」を挙げて泣かぬよう指は全部で十なのだろう

本当は何だって良い/真夜中にガードレールを跨げずにいる

眠りたい眠れないって泣く夜に建ててゆく角砂糖の塔(タワー)

響く音/駆け込み乗車/目を瞑る/エンゼルフィッシュの淡い残像

恋に落ちないよう今日も「白線の内側までお下がりください」

等加速運動/眠る氷点下、人知れず研ぎ澄まされていく

燦然と輝く月に近づいて今12時を指す観覧車

何にでもなれるんだって息を吸うサービスエリアで仰ぐ星空

いま君に朝を渡そう狭すぎるワンルームにて眠るクジラよ

ハロー、朝。星を追いかけ続けててこんなとこまで来てしまってさ


夜にだけ声を聴きたい人がいて手すさびに巻くイヤホンコード 

何もかも爆破したくて人知れず台所にてレモンを割った

便箋の文字を持たない空白が波打ち際のようで愛しい

真夏日のアイスキューブとして僕ら前後不覚になって泣きたい

救うならいっそ全てを救ってよ快晴にただ白がはためく

手を繋ぐこともできない君といて宇宙遊泳みたいな恋だ

何もかもどうでも良いって冷めた瞳のワルツの裾に見惚れてしまう

音よ今すぐに私を包んでよ君の奔流しか触れたくない

散弾銃みたいに強い圧として疾く頭上から注げよ花火

あの夏があまりに遠く七月を四季で呼べないままでいるのだ


「次は《月》。お出口は右、終点です。お忘れ物にご注意ください」

君のいない夜にわたしは眠れたし北極星も見つけてしまった

やり過ごすためのカフェイン、ガムシロの数を考えあぐねる振りを

sleeping beauty:いつか解凍をされる時まで好きなままいる

眠れない夜にあなたを神さまのように思っていたの(秘密ね)

愛とかいうやつで全てを救ってよ/時計の針が十二を示す

晴れ渡る空に霹靂、階段を踏み外すように恋に落ちたい

まだそこに夏の残滓があるとしてその総量をgで示せ

たとえ今、流星全部見逃したとしても生きていけるよ僕ら

夏が去る/エンドロールの後にまだ何かある気がして動けない


「来世にはクラゲになりたいって言ったじゃん、(ほんとは何にもなりたくなくて)」

再上映ばかりしているただいつか何かが変わるような気がして

リフレインする音たちよなべて手をとって土星の環にしてあげる

「何か言った?ごめんね考え事してた」僕らのエンドロールの曲を 

君をかいた夏が手のひらすり抜けてさよならさえも言わせてくれない

あかねさす紫野行き標野行き向こうのホームにそっと手を振る

エンドロールばかり見ていたから流れ星の行きつく先を知らない

昨日付でクジラとなったから貴方みたいな些細はもう知らない

来世にはクラゲになりたい人たちで図録囲んで種を決めようか

君をうたうことに夜更けに降る雨のようなたしかな安寧を得る


花に嵐、疾き強風に取り巻かれもう何もかも忘れても良い

春、なにか大事なことを忘れているような気がして口を噤んだ

眠れずにひらいてとじているひとへ遍く降りそそげ星あかり

あの時が愛おしすぎて手放せずセーブデータを上書きできない

撃鉄を起こせ/快晴、喉元に張りつく声を剥がす代わりに

雲ひとつ無い空の青/深呼吸/ストリーミングで音楽を聴く

あのひとに会いに行かなきゃいけなくて毒を呑んでる暇とかないの

不可分な月の光を分かち合うために利き手を君へ差し出す

利き手ごと掬い上げられあの星を取り巻く些細になれたらどんなに、

まだ上手く眠れないって明かしたら君は笑ってくれるだろうか



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