十五夜とマム

十五夜であった。
先日は天候にも恵まれ、まんまるお月様がよく見えていた。

唐突だが、昨年の話をする。

一年前、自分は十五夜に向けて右に左に走り回っていた。
理由は思い出せずにわからない。
おそらく何かに触発されたのだと思う。

団子だのなんだの、家族をも巻き込んで十五夜グッズを集めていた。
なかでも強敵はススキであった。
あの十五夜のスタメンである植物が見つからずに苦労したのである。
夜も遅くなっており、何件かのスーパー内にある花屋を見て回ったが手に入ることはなかった。
ススキが手に入らないことに我慢ができず、半狂乱で中央分離帯に生えている野良ススキ(実際、あれはススキなんだろうか?)に手を出そうとしていたが危険であることとさすがにやめようという家族の制止が入ったのである。

無念であった。

目の前でススキ(?)は捕まえてごらんと言わんばかりに風に揺れていたのだ。
その後遺症か、今でも道端の草花をよく見ている。

このバカらしいが必死だった思い出が急に蘇ってきたが、今年といえば何もしていない。
団子すら食べなかった。
家族との会話の中で十五夜と思い出したレベルであり、感想は、ふーん。そうなん。である。
完全に興味が失せていた。

あの一年前の十五夜ハイはなんだったのだろうか?

今年は当日、スーパーに買い出しに行っていた。
出入り口付近の花屋で【お月見セット】と名を打って団子やススキがまとめて売られていた。
(あっ……去年これがあったら全て揃ったね……!!)というすけべな気持ちが僅かによぎったが、過去は過去である。
売れ残りつつある【お月見セット】に淡い痛みを感じながらも駐車場に出ると、月は相変わらず私を煌々と照らしている。いかにも月だな……と思いながら車に乗り込んだ。
前もって日にちを決めて動くことに疲れている。

昨日、月を見ながらお茶を頂いた。
今日、小さなお団子を食べた。
明日、お月見団子のおぜんざいを頂く予定である。

遅ればせながらの月見。
書いてて思い出したが、月見バーガーもあるではないか。楽しみだ。

去年と違い、食欲だらけ。
共通点は強欲なところか。

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