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ステフィン・カリー、頂点に立つ 3ポイントシュート通算成功数のNBA新記録を達成

12月15日、アンダーアーマーの契約選手でゴールデンステート・ウォリアーズに所属するステフィン・カリー選手は、ニューヨーク・ニックスとの一戦で5本の3ポイントシュートを決めて通算2,977本とし、これまでのNBA記録であった2,973本を超えて、レギュラーシーズンにおける3ポイントの通算成功数で歴代1位となりました。

カリーは今シーズンだけでも、1試合平均で約5本の3ポイントを決めており、達成までの期間はこれまで記録を保持していたレイ・アレンの1,300試合に対し、わずか786試合。500試合以上少ない試合数での記録達成となりました。

史上最高のシューター

“リーグ史上最高のシューター” “バスケットボールの常識を覆した男”
カリーを形容するさまざまな言葉は、彼のプレーがいかに規格外であるかを表しています。スリーポイントラインより遠く離れたエリアからでも、次々にシュートを沈めるプレースタイルは、バスケットボールの攻撃の概念を完全に変えてしまいました。

今回の記録達成のみならず、カリーはこれまでに多くの記録を打ち立てています。代表的なものを紹介すると、2015-16シーズンに達成した402本という1シーズンの3ポイント成功数です。これは今季と同様、1試合平均にして約5本のペースで3ポイントを決めた計算になります。また、2014年から16年にかけて、157試合連続の3ポイント成功という記録も持っています。

これらの驚異的な活躍により、カリーはこれまでにウォリアーズを3度のNBAチャンピオンへと導くとともに、自身も2度のシーズンMVPに選出されています。さらに、2度の得点王、7度のオールスター選出と華々しい経歴は数えきれないほど。しかし、カリーはバスケットボール選手として決して順風満帆な道を歩んできたわけではありません。偉業達成に至るまでのストーリーと彼の信念をご紹介します。

カリー

泣きながら改造したシュートフォーム

NBA選手だった父の背中に憧れ、バスケットボールを始めたカリー少年。子どものころから非凡な才能を見せていましたが、その身体はプロを目指すにはあまりにも小さいものでした。高校に入学したころのカリーは、身長170センチ、体重60キロにも満たない小柄な体格で、あまりに非力のため腕を上げてシュートを打つことができませんでした。大学でプレーするには、シュートフォームを変えなければならない。カリーは父とともに、猛特訓を始めました。毎日、腕の力がなくなるまで泣きながらシュートを打ち続ける日々が続きました。

高校を卒業するころには身長が180センチを超えて、カリーはチームを勝利へと導く活躍を続けていましたが、世間の彼を見る目はとても厳しいものでした。5段階の評価で、後にプロ入りする多くの選手が5つ星を獲得する中、カリーの星は3つ。進学を希望していた強豪大学からのオファーを一つも受けることができず、地元の大学へと進みます。

度重なるけがとの闘い

それでも、良い指導者との出会いもあって順調にキャリアを積み上げたカリーは、大学で目覚ましい活躍を見せます。2009年のドラフト会議でウォリアーズから全体7位で指名され、念願のNBA入りを果たしました。しかし、この時点でも彼がプロの舞台でプレーすることに対して、懐疑的な声は消えていませんでした。「身体が小さすぎる」、「身体能力が足りない」。そんな評価を覆そうとカリーは奮闘しますが、何度も足首のけがに悩まされることになります。プロ入りから3年間は、シーズンを通してプレーすることはできませんでした。

4年目、懸命なリハビリによって一回り大きくなった身体とともに、カリーは遂に開花します。スリーポイントのリーグ記録を樹立すると、翌シーズンにはオールスターに初選出。その後の栄光は前述の通りです。カリーは自身の道のりについて、こう振り返ります。

「僕は身体が小さかったおかげで多くのことを学んだ。バスケットボールIQ、ボールハンドリング、クイックシュート。何かを成し遂げるために、誰かのまねをする必要はない。絶え間ない情熱と強い意志をもって努力し続けること。大切なことはそれだけなんだ」

大切なのはあきらめないこと

2018年のオフシーズン、2度目の来日を果たしたカリーの姿が、都内にある小学校の体育館にありました。日本の子どもたちと交流し、バスケットボールを教えるイベントの中でこんな場面が生まれます。

チームを代表して、フリースローに挑戦した一人の少女。しかし、2本、3本とシュートを放ってもゴールを決められません。少女がその場を離れようとした時、カリーが彼女を呼び止めてこんな言葉をかけました。

「僕も30年バスケットボールをプレーしているけど、すべてのシュートが入るわけじゃない。シュートが外れてしまうことは問題ない。大切なのは、シュートが入るまであきらめずに打ち続けることだよ」
カリーの言葉に勇気づけられた少女が放ったシュートは、ネットに吸い込まれます。会場から自然にわき上がる歓声と拍手。自分自身も多くの困難を乗り越えてきたからこそ、カリーはどうしてもそれを少女に伝えたかったのです。この時の様子は、以下の動画に収録されています。


アンダーアーマー「STEPHEN CURRY ASIA TOUR - SCHOOL VISIT」

記録達成の瞬間は、第1クオーターに訪れました。この日、2本目の3ポイントシュートを決めたカリーは、両手を広げて大歓声に応え、偉業をかみしめるように拳を握りしめました。その後、試合は一時中断されて、前記録保持者のレイ・アレンさんが登場。カリーと抱擁して互いに言葉を交わしました。

あらゆる困難を乗り越えて、今回の記録達成により名実ともに史上最高の3ポイントシューターとなったカリー。そのパフォーマンスは、34歳になった現在も進化を続けています。彼が挑戦を続ける限り、これから先もバスケットボールの歴史は何度でも塗り替えられていくことでしょう。