ドルネシア・サイクル

丘の向こうには風力発電の風車群が広がる。僕は、はっきりとは異郷にやってきたことを実感した。人工の風は強く吹いている。ハンドベルト端末でスケジュールを確認するとアリエス9の市街地に向かうため自動運転車を探しに向かうため、契約したモータープールに向かうことにした。
 巨大軌道コロニー『アリエス』企業連が共同で建造した宇宙コロニーである。住民は企業連関係者が多いと言われているが知ったことではない。僕がなぜわざわざ軌道エレベーターに乗ってアリエスにやって来たかというと、簡単に言うとビジネス目的だからだ。
 欧州の雄、CP社からの依頼が数日前にメールに送られてきた。依頼の内容はこうだ。奇妙なフッテージをロンドンの戦略宣伝基地に送る。ロンドン送りに渋るクリエイターとの交渉を手伝ってくれ。報酬は100万クレジットだという。割に合うかどうかはわからないが、僕は受けることにしたのだ。フッテージの名前はドルネシア・サイクル。仰々しい名前のフッテージだ。僕は退屈しのぎになるだろうと踏んだ。今回の仕事は楽しい仕事になりそうだ。

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