「ハァーッ！ ハァーッ！」
 息を切らして必死に路地裏を縫うように逃走するソウカイ・ニンジャがいた。そのニンジャの名前はロックオイスター。テリトリー近くのヤクザの事務所へミカジメ・フィーの取り立てのビズを行っていたところ、折り悪くも赤黒の殺戮者に襲撃されたのだ。
　既にIRC通信で救援連絡をしなんとか足止めをしてもらっているがいつまで持つのかはわからなかった。
　まずは生き延びなければ、ロックオイスターはそう思った。
　必死に赤黒の殺戮者から逃げるロックオイスターの視界の隅に自動販売機が見えた。
「ここは陽動作戦と行くか」
　ロックオイスターのニューロンは自動販売機を見て瞬時に一つの作戦を思いついた。自動販売機を破壊したあと一つ前の分岐に戻り違う方向に戻ることにしたのである。
「自動販売機に恨みはないがこれも生きるためだ……許してくれ」
　ロックオイスターは誰ともなく詫びの言葉を入れると自動販売機にカラテを構えた。
「イヤーッ！」
　カラテシャウトが響き渡ると自動販売機を破壊、自動販売機の筐体はバチバチと電流が走った。
　これ以上の長居は無用。ロックオイスターはそう判断し路地裏を引き返そうとした、その時！
「フシュルー！」
「グワーッ！」
　突然、壊れた自動販売機のコイン穴から荒縄めいた糸がロックオイスターを襲撃！ その突然のアンブッシュに反応が遅れたロックオイスターは糸をまともに食らってしまったのだ！
　ロックオイスターのニューロンは混乱した。風の噂でベンダーミミックという存在を聞いたことがあるがまさかコイツが本物なのか！？
　だがロックオイスターの疑問はすぐ氷解した。壊れた自動販売機からもぞもぞと大蜘蛛めいた下半身をした屈強なバイオニンジャが這い出てきたからだ。
「ドーモ、ブルオーガです。貴様か、我が領域に押し入ろうとした痴れ者は」
　ブルオーガと名乗ったそのバイオニンジャは威圧的にアイサツをした。その瞳には邪悪かつ傲慢な知性の光が見えた。
「ドーモ、ロックオイスターです。俺はここにお前がいることを知らなかったんだ。本当だ」
　ロックオイスターはエクスキューズをしながら心のなかで舌打ちをした。ヨロシサンめ、またバイオニンジャが逃げ出したな？
「知らぬとは言わせん……おおかたヨロシサンから派遣されたニンジャだろう。俺は知性が高いから貴様のことなどお見通しだ」
　ブルオーガはロックオイスターの釈明に聞く耳を持たなかった。ロックオイスターは覚悟を決めるしかなかった。
「イヤーッ！」
「グワーッ！」
ロックオイスターは先制攻撃と言わんばかりに鉄拳をブルオーガに叩き込んだ！しかしブルオーガにはイマイチ効いてないようだ！
「イヤーッ！イヤーッ！ イヤーッ！」
「グワーッ！」
 ロックオイスターは連続パンチをブルオーガに叩き込む。ニンジャにしかなせない超高速の連続パンチだ。普通のモータルが食らったらたちまちのうちに死に至るほどの威力だ！しかしブルオーガは嗜虐的な笑みを見せた。
「ほう……貴様のカラテは所詮この程度か。では我が領域に無断に押し入った報いを受けるがいい」
　ブルオーガはロックオイスターを見下した視線を向けて鉄パイプ槍を構える！ブルオーガから不気味なカラテの高まりがカゲロウめいて立ち昇ってきた！
「イヤーッ！」
「グワーッ！」
　鉄パイプ槍が一閃！ ロックオイスターは壁に叩きつけられる！
「イヤーッ！」
「グワーッ！」
　地に倒れ伏せたロックオイスターにブルオーガは追い打ちの蜘蛛足ストンプ！ じわじわとなぶり殺すようにブルオーガはストンプした！
「グワーッ！」
　ロックオイスターはブルオーガのストンプに悲鳴を上げる！ブルオーガは歪んだ笑みを見せた！
「ククク……そろそろ終わりにするか」
　ブルオーガはボロボロになったロックオイスターのニンジャ装束を蛮族めいて破り捨てる！ロックオイスターの背中のバイオニシキゴイの入れ墨が露になる！
「フシュルー！」
　ブルオーガの下半身の蜘蛛口から糸を放つとロックオイスターはあっという間に糸まみれになる！
「フッ……他愛もないな」
　糸まみれのロックオイスターを見下ろすと、無抵抗ロックオイスターを一気に蜘蛛口に引き寄せた！ これは捕食だ！
「アババババーッ！」
　ロックオイスターの悲鳴が路地裏に断続的にひびきわたったがやがて聞こえなくなった！

「これがヨロシサンの派遣したニンジャか……ククク、弱すぎる！」
　ブルオーガは邪悪な哄笑をした！ その時！

「wasshoi!」

ブルオーガの目の前に赤黒の殺戮者、そうニンジャスレイヤーが路地裏にエントリーしたのだ！

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」
　ニンジャスレイヤーは殺意を隠さずブルオーガをにらみ付けた！

fin