相鉄の3月12日のダイヤ見直しを俯瞰する。

まず

 相鉄のダイヤについての見直しが発表された。果たして、どんなものか。順を追って見ると共に、予想も見ていこう。
 なお、ダイヤ改正にて公開されている情報は下記のページに記載されている。
https://www.sotetsu.co.jp/pressrelease/train/r22-18/

①改正日について。

 ダイヤ改正日は休日は3月12日、平日は3月14日になった。これは昨年のダイヤ改正同様、JRグループのダイヤ改正日に合わせたものとなった。

②ホームドアの存在がダイヤを見直させる?

 相鉄の次回のダイヤ改正の主な目的として「ホームドアの設置駅増加による定時運行の確保」が掲げられている。しかし、ホームドアが原因で所要時間が増えるとはどういうことか。
 相鉄では、横浜駅での設置を皮切りに、ホームドアの設置を進めているが、連動装置は車内では駅の設備で対応している。詳しく言うと、車両の到着から発車までの車両側の一連の動きに対し、ホームドアは全て駅の設備で対応しているのだ。
 これほどまで車両側に頼らないホームドアの設備を用意しているのは、相鉄の旧車への対応も考えられるが、最大の要因としては既存の東京メトロ仕様とJR東日本仕様のハード,ソフトウェアの違いが原因にあるとされる。
 日本のホームドアに対して、2010年代以降に様々な開閉機構が実用化されている。この内、メトロ,東急などでは営団時代から一般的だった床下の専用のトランスポンダを用いて連動しているが、JRではこれとは別に、車内に設置された機械を用いて連動している。[1],[2]
 ATS関連では今まで独自のATSを使用からJR仕様のATS-Pを採用した相鉄だが、ホームドア関連では他の事業者に迷惑をかけないよう配慮した形となっている。

③日中上り(横浜,羽沢横浜国大方面)のパターンはそのままながら、下りのJR線始発列車はまさかの特急で統一。西谷接続列車は快速海老名行に。

 今回の所要時間の見直しに伴い、日中時間帯では全便が各停となっていたJR直通の内、下り列車が特急となった。これについては現行の相鉄のダイヤの仕様上、2021年改正で直通列車の折り返しが僅か2分しかなかった(それ以前の2019年の改正時ではこの事態を回避するために特急と各停で1時間のパターンを組んでいた)ことが原因のようだ。
 なお、この改変に伴い、西谷にて接続する列車が快速海老名行きとなり、横浜口を発車する海老名行きは全車快速になるようだ。なお、いずみ野線については変更はされていない。

④夕ラッシュ時の無待避急行廃止。各停は急行の到着直後の発車に変更へ。

 2021年改正から夕ラッシュが日中同様毎時6本で走っていた相鉄だったが、これが原因で二俣川での人口滞留が起きていた。今回は既存の無待避の急行海老名行きを廃止する代わりに各停湘南台行きが急行海老名行きを2本待避する形になった。
 この場合、二俣川の人口滞留と言う問題は無くなる一方で、毎時3本はこの長めの待避が発生してしまうと言う課題がある。本当はいずみ野線の通特を活かしたいところだが、現状の毎時6本体制では設定が困難であることは明らかである。

⑤8連の運用が12本?その真意とは?

・新しい時刻表は右のページの「時刻表ダウンロード」を参照→ https://www.sotetsu.co.jp/train/stations/#diagram
 2021年段階では従来の10000系の編成数による11~16運行(相鉄では原則十の位でサイクルする。この十の位の数字の組み合わせを "1群" と呼ぶ)と、昨年までに増備された21000系の編成数で編成された21~24運行(2群)の計10運行がある。
 しかし、次回の改正では1群の運行数は据え置かれたものの、2群については6運行に増加した。さらに、4群に関しては前回までの9本から3本に激減されると言う報告が上がっている。実際に公開済みの平日ダイヤのpdfを確認しても、4群は3本に削減されたように見える。
 正直、この運用設定には謎が多い。私の中でも仮説を立てたので一応話しておこう。
・21000系について更に増備する計画がある。
 東急目黒線系統に相鉄車を追加導入すると言うもの。「技術的及び人員的に可能な埼玉高速鉄道への直通を見越している」などの考えが思い浮かぶが、そうした発想は乗り入れに対する費用の精算面にて不利であり、実現性は低い。21000系の再増備について検索を行ったが情報の発掘には至らなかった。情報源を記憶している人がいたらTwitterやコメントまで連絡して欲しい。
・直通予定の事業者の編成を営業に当てたい。
 東京メトロ及び東急電鉄が相互直通運転直前に行った手法がこれだ。東横線の5050系と5000系が東京メトロ及び直通先の各線で、副都心線の8連の車両が東横線で運転された。この手法を利用すれば、各社の車庫を圧迫することは無いが、直通前の放送などのソフトウェアを追加する必要があるため、直通前の段階からの準備コストが増加する。
 仮に相鉄が保有している20000系,21000系を他社に貸し出した場合、全て運用数の増減を加味しても最大4編成が限度である。JR線との直通をする直前に行われた大規模な試運転の実施を想定しているのだろうか?
・やっぱり東横線には8連じゃないと入れなくなった。
 流石にないと思いたい。こんなことを東急がやらかしたら費用は全て東急持ちになりそうだし、そもそも勿体ない。ダイヤの都合で20000系の2両分が休車→廃車なんてことは流石の東急でもやらないとは思うが…。

総括

 今回のダイヤ改正について「ダイヤ見直し」と言う言い回しが使われているように、この改正はここ数年の中ではかなりネガティブかつ地味な内容であったように思う。
 本線,直通線については接続法の変更以外でも地味なもので、強いて言えば二俣川での待避がスムーズになることくらいだろうか。当然、こうした不利益はいずみ野線に与えられる。期待の通急の運転拡大は話題無し、通特に関しては線内の待避も上手く使われずに放置されていると言う現状が残る。ただ快速が走れば良いと言うわけでもない。ましてやノンストップの本線急行と接続することが至便など全くあり得ないし無礼な考えそのものである。
 しかし、コロナ禍と東急直通の板挟みになる今であると、既存のダイヤパターンの組み換えは非効率なのだろう。来年の新線開業とダイヤ改正に期待したい。

参考文献

[1] https://ycs3120.com/platform-doors/3339/
[2] https://ycs3120.com/platform-doors/4523/

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