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相鉄グループ、ポイント事業の難航【後編】~相鉄経済圏の変化と将来性~

この記事を読む前に「前編」を読んでおくことをお勧めします。


新しく登場した「相鉄ポイント」の衝撃

前編でも解説しましたが、1990年代以降の相鉄のポイント事業は「ウェルカムカードポイント」から始まり、「ジョイナスポイント」と「FRESA CLUB (廃止済み)」の」三本柱でした。これを令和になって6年となる2024年にて統合するのがこの「相鉄ポイント」です。では、このポイントにはどんな機能があるのでしょう。

相鉄ポイントの機能とは

  1. これまで通りのアプリからポイントを貯められる
    相鉄ショッピングセンターアプリ、そうてつローゼンアプリ、相鉄Styleアプリの会員情報より自動的にポイント残高、会員情報が移行されるそう。これは地味にうれしい機能。

  2. 1ポイント1円に換算して支払い充当が可
    この機能はウェルカムカードポイントにて2022年8月より実装された機能であり、今まで500ポイント単位のみでの支払い充当しか用いれなかったジョイナスポイントに関しては大きな発展的解消となる。もとより、ウェルカムカードポイントの場合は以前なら「500ポイントごとに強制的に商品券発行」と言う超絶仕様だったのだが……。本当に2020年代か、これ?

  3. 相鉄ポイントマイルは家族でポイントがシェアできる
    地味ですが、これも相鉄としては初の機能です。「親が貯めたポイントで子供が直接弁当の購入費に充てる」なんてこともできますね。

  4. 乗車マイル (相鉄ポイントマイル) がたまる
    さらっと言っていますがこれがかなりの内容です。「モバイルPASMO所持者」、「定期券を使わずにバス、電車の両方に乗る人」、「回数券ユーザー」、「子連れ」にはかなりうれしい内容です。後述します。

  5. 相鉄ポイントマイルからの換算にはインテンシブ付き
    現行では相鉄ポイントマイルから相鉄ポイントへの換算のみ可能となっている。この換算によって相鉄ポイントは1.1倍に。やったね。

「まあまあ攻めてきた」と言うのが感想でしょうか。特に還元率を店舗ごとに設定できる機能を活かしてポイントカードを一体化できたことは大きいと言えます。じゃあもっとはやくやれよ。

乗車マイル(相鉄ポイントマイル)が攻めてる

この乗車マイルの制度がかなり面白くなっています。と言うか、運輸関係のマイル制度がまとまった故の制度改定なのかもしれません。とにかくまとめました。

  • 乗車マイルの還元は10回~で10回ずつ。3%より最大8%還元

  • モバイルPASMO、Apple PayのPASMO利用では毎乗車ごとに3%還元

  • 小児利用では運賃の50%還元

  • 電車・バスの定期区間外の同日利用で大人小児ともに10マイル進呈

乗車マイルの機能や還元率については「京王トレインポイント」を参照し、一部機能には「トブポマイル」の「おでかけマイル」や「リピートマイル」を参照してブラッシュアップしたものと考えられます。

と言っても詳細が少ない

まじで情報が薄すぎて何も話せないよーーーー!!!!ってことで、考察です。

相鉄ポイントで今後対応、改善する物事は何か

「ポイントX倍」は今後も存続か

ウェルカムカードの廃止が近い一方で、以前よりそうてつローゼンで実施している「ポイント10倍デー」などのキャンペーンは2024年2月26日現在継続して実施しています。この雰囲気では相鉄ポイントに移行後もポイント10倍として運用されそうですね。

ホテルのキャッシュバックも組み込まれるか

現在も対応の案内がされていない大型のサービスと言えば「相鉄ホテルズクラブ」があります。相鉄ホテルズクラブ自体は現金のキャッシュバックやクーポンの配布にとどまっています。

将来的に相鉄ポイントへの組み込みは考えられますが、どのような対応となるのでしょう。実際、相鉄ポイントととして運用を入れることが出来れば、他の都道府県でフレッサインに宿泊して地元で買い物に使うや、その逆も出来ると考えられます。

マイル制度が意外と厳しい

相鉄ポイントマイルの制度でかなり厳しいのが「鉄道利用への入金がかなり厳しい」と言う点です。現在の相鉄ポイントマイルを支払いに用いる場合は「相鉄ポイントへの換算」か「セブン銀行ATMへの入金」の2つのみが可能です。このうち直接鉄道に使う場合は後者のみ可能で、その際には88円の手数料が発生します。これは「京王トレインポイント」のモデルを完全に使用しています。ただ、このモデルは必ずしも主流ではなく、例えば「トブポ」ならモバイルPASMOのアプリでは無手数料で残高への入金が可能であったり、東急であればセブン銀行ATM以外に券売機への入金が可能です (いずれも無手数料)。

フリーパス、定期券ではポイントすら貯まらない

これも結構痛い要素です。現状、相鉄ではフリーパスのクレカ購入を封じているので「これらの商品購入の際にどうやってポイントを稼ぐのか」と言う状況ではあります。もちろん、現在の相鉄の券売機では2次元コードの読み込みそのものには対応しているので、これらをうまくやれば対応できそうですが……。

ところで未だに「登場」していないあのカードはどうなるのか?

さて、ここまで沢山相鉄ポイントの話題を出しておきながらいまだに登場していないサービスがあります。そう、相鉄カードです。今や「大手私鉄で唯一自社ポイントが貯まらないし優遇もない」と言う特別なクレジットカードとなった相鉄カード。持株会社で発行、管理をするほどの肝いり事業でしたが、今や殆ど広告もされないまま「相鉄経済圏」より外れてしまいました。この相鉄カード、三井住友カードが発行することからVポイントを貯めることが出来ますが、「提携カード」の扱いのため「どんなに決済してもVポイントの基本還元率 (0.5%) しか貯まらない」と言う有様です。

この相鉄カードの制度改定が相鉄ポイントの制度再編の大きなカギになると考えられます。

相鉄カードをもし再編するとしたら

それ以前に、相鉄のクレジットカードを持つと言う行為には、顧客は何を期待しているのでしょうか。それには、相鉄の企業研究が必要そうです。

相鉄の企業研究

現在の相鉄とはどのようなものを持つのでしょうか。

  1. 神奈川県を中心基盤として運輸業を商い、大きな流通網と不動産を所持して活用するスケールメリット

  2. 横浜市の中心部にて一大商圏とオフィスビルを所有、開発するリーダーシップ

  3. 宅地開発とそこに付随して高収益の鉄道路線と広いバス路線を運営することによる責任

  4. 南関東を筆頭に全国各地に展開するホテルチェーンを持つと言う旅行、観光資源

  5. 鉄道事業より派生したキャラクターとその人気によって生まれるキャラクターIPビジネス

こんな感じですかね。やはり横浜駅西口一帯を核として持ち、神奈川県に流通網と路線網を面として持ち、その外である全国でホテルを点状に持つと言う順で、相鉄ブランドの「商品」は広がっていきます。

相鉄カードに求められる、装備できるサービスとは

では、これを踏まえた場合、相鉄カードにはどんなサービスが求められ、装備できるのでしょうか。

  1. 神奈川県内で総合的なサービスを受けることでポイントを獲得、使用できる場面を多く得られること。また、クレジットカードを所有することでその獲得量を優遇すること。
    これは、現在の相鉄ポイントの基本還元率を元のポイントカードより多めにする、と言うこと。同業異業問わず他社ではよく用いられるサービスです。

  2. 鉄道事業者としてその沿線に在住または重用することに対する優待を得られること
    現状はSF乗車に限られる現在の相鉄ポイントマイルについて、今後は定期券やフリーパスの購入でも獲得できるよう調整すること。フリーパスに関しては他社もあまり導入がされておらず、先行して導入することが望まれます。

  3. 全国規模のビジネスホテル事業者であるからこそ発生する同ブランドのリピート、そこから得られる優待
    やはり、同じ相鉄のサービスを受ける以上は全国のホテルチェーンであることを活かした柔軟なホテルの優待制度が欲しいところであります。ただ、相鉄のホテルは横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ以外は基本的なビジネスホテルであり、そんな他社のビジネスホテルのサービスを見てもポイントの大きな上振れなどは設定されていません。折角ですから、ここで他社と大きな差をつけてくれるとリピートしやすいものですが……。

  4. そうにゃんデザインのクレジットカードの発行
    自分が欲しい。エポスカードの原理と同じ。はよ。

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おわりに

ジョイナスポイントの登場から7年以上が経過した2024年、いよいよ相鉄はグループ全体で大規模なポイント事業が展開されることになりました。この記事では全体の半分ほどを考察に割く構成でしたが、そうした構成にできるほどには「相鉄ポイントは拡充する箇所が多い」と言えるのではないでしょうか。中国のコード決済ブームから東京2020対応、コロナ禍を経て全国的に広まったキャッシュレスブームと「経済圏」の大衆化。相鉄グループはこの波に乗れるのでしょうか。いや、乗った気で溺れていたか。

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