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美智の「来てね」のひと言雪国へ


何かを訴えているような、限りなく鋭い眼差し。
少女の片目から、2筋涙がこぼれている。
或いは絆創膏で塞ぎ、見えなくしている。

悲しい。
見たくない。

NO WAR
NO  NUKES

自分の立ち位置を見極め、しっかりと主張することの大切さを訴えているようだ。

現代美術家の奈良美智が好きだ。
数年前の愛知トリエンナーレの段ボール作品で、親しみを感じた。

彼は青森県弘前市で生まれ育ち、愛知県立芸大・大学院で学んだ。
2017年に豊田市美術館で、大規模展を催した(もちろん観に行った)。

愛知県民は、何かと彼の作品に触れる機会に恵まれている。


さて、今回は、青森市にある青森県立美術館での200点超の大規模展だ。
10月下旬〜2月末までで、巡回なし。

タイトルは「始まりの場所」。
それは彼の故郷青森であり、来た人が彼の作品と出会う場所である。

寒い季節に開催したのは、北国を体感して欲しいから。
わざわざ厳しい時期に、北の個展に足を運ぶ人は、きっと何かを感じたいと思っているはず。
何かを掴んで帰って下さい、と。

あるメデイアで上記のような彼のメッセージを読み、美智ファンの長女と2人で出かけた。

2泊3日。
マイレージで青森空港へ。
猛吹雪のため、花巻空港になるかも?

無事青森に着き、タクシーで県美へ直行。
青木淳の設計は、隣地にある縄文遺跡・三内丸山遺跡をモチーフにした、洞窟風のユニークな
もの。
ワクワクさせるエントランスだ。


発掘現場の壕をイメージした中庭の、8・5メートルもある奈良作品の巨大オブジェ「あおもり犬」に、雪が降りかかり、雪帽子状態である。

雪が良く似合う美術館だ。

奈良作品はオール写真撮影OK。
多くの人により親しんでもらいたい、という。
戦争反対や反原発の絵は、バナーとしての使用を許可している。


5つの部屋に章立てされているが、どの部屋にも「家」=小屋が設けられている。
はじまりの場所は家、というコンセプトのようだ。

つまり家は故郷であり、居場所である。
そこには自由があり、成長する場でもある。
家があれば、人は自分らしく生きられる。
だから、最も大切な空間なのだ。

会場に建てられた家は、奈良の記憶だったり、アトリエだったり、スタジオだったり、
旅の思い出だったり、高校時代に入り浸っていたロック喫茶だったり…。

自由に入れて、数多のおもちゃや人形などのコレクションに触れて楽しめる。


NO WARの部屋には、零戦や軍艦、ベトナム戦争時の米軍戦闘機などの絵が展示されている。
ちぎれた首や手足も不気味に転がっている。

それらを睨むように見つめる少女。
何も語らずとも、言わんとすることは分かる。
絵画の力だ。

作品を満喫してから、併設レストランでパスタランチとアップルパイのデザート。
さすが本場。リンゴが飛び切りだ。


企画展の青森県出身版画作家・棟方志功をじっくり鑑賞した。
奈良との共通点を抽出した展示は面白い。
あるある、あるのだ。

青森市にある棟方志功記念館は、もうすぐ閉鎖される。25年前にゆっくり観たが、強烈な印象が未だに残っている。

まだ美智を観ていたいが、ひと通り観て宿へ。
市内唯一の源泉掛け流し、青森まちなか温泉へ。


今夜は津軽三味線ライブに浸ろう。
タクシーのドライバーに聞いた店に向かう。

ホヤ、ホタテ、ナマコ、生牡蠣、本マグロ、
せんべい汁、ゴボウ天、トウモロコシ天などを堪能する。
お伴は銘酒「田酒」。

隣席の女子会さんの会話は方言がきつくて、意味不明。
ライブが始まると、皆さん歌うは〜、踊るは〜。
沖縄のカチャーシーのよう。
2回の演奏を楽しんだ。

宿の温泉は24時まで。
一寝入りしてから入浴。
よく温まるいい湯だ。

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