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オリックス・バファローズ シーズン総括~投手編~

日本シリーズも終わり、2020年のNPB公式戦がひと段落しました。残念ながらリーグ6位に沈み、球団史上初めての2年連続最下位と低迷してしまったオリックス・バファローズ。今年は1年間、シーズンを30試合ずつに分けその戦いぶりを書いてきたので、シーズンの総括を書いていこうと思います。

個別の選手まで触れていきますので、長くてめんどくさい!!(一万字越え)という方はぜひこちらをご覧ください。

少し違いますが、120試合を四つに分けて4半期とみなして以下書いていきますね(例えば、60試合→90試合の直近記事内容・データだったら「第3Q記事」「第3Qデータ」と記載します)。

今シーズンのパリーグの最終順位は次のようになりました。

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借金23、5位に7ゲーム差とダントツの最下位になりオリックス・バファローズとしては初の2年連続最下位という屈辱を味わいました。ちなみに3Q→4Qで借金は5つ増えてしまいました。得失点差も前回記事では-40でしたが終わってみれば-60と悪化。全体の大まかな数値としてはチーム防御率は3.97でリーグ3位、チーム打率は.247でリーグ4位。ここにきてこの二つの数字は上げてきましたが、どちらの数字もオリックスより悪く得失点差でも-64だった西武は3位でフィニッシュしました。この差は何でしょうか?

大きな数字を見ても分かることは少ないので、以下に先発ーリリーフと総括をしていき、来年に向けた課題や期待することを選手毎に書いていきます

1. 先発投手

まずは先発投手から。第3Qとの比較で各チームの成績を見てみましょう。

チーム別先発成績

K%、BB%、HR/9の3項目すべて良化させたのは王者ソフトバンク。優勝争い終盤で一気に他を突き放した強さは先発投手のこんな指標にも如実に表れています。第3Q時点で3位、終了時に4位と順位を落とした楽天も実はこれら3項目すべて良化させており、同チームの終盤戦失速の要因は先発投手以外に求められそうです。オリックスに関してはK%・BB%はほぼ変わらずですが、HR/9は1.11→0.92と先発投手に関しては被弾を防ぐことができました。ちなみに第2Q時点では18.2K%、11.9BB%でしたので、どちらの数字も前半戦終了時点と比べれば2ポイント近く改善ができています。

今年はシーズンが短いということもあったのかもしれませんが、シーズン後半に入ってから先発投手陣の数字が良くなったというのは一つの収穫で、規定到達投手は年間通じて安定した投球をできたということ、そしてローテの入れ替わりの投手が好成績を収めたことを意味しています

さて、今年10イニング以上先発で投げた投手は以下の10名です。

先発成績

規定投球回(120イニング)到達者は山本投手と田嶋選手の二名。パリーグでは規定到達者は8名だったため、この2人はイニングを多く稼いだという点で最大限の評価をされるべきでしょう。高卒ルーキーの宮城投手がこの表の中に入り、3試合で16イニングを投げて1勝をあげているのは驚きです。

以下、各投手を個別にみていきましょう。

1-1.山本由伸投手

まずは大エース山本由伸投手です。

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18試合で126イニング、平均すると1試合当たり7.0イニングを投げているということがまず素晴らしい。防御率2.20はリーグで千賀投手に次ぐ2位、30.2K%は両リーグの規定到達者の中でトップの数字。149個の三振を奪い、千賀投手と並んで奪三振王のタイトルも獲得しました。FIP2.61は圧巻の一言です。

10月20日の楽天戦後は疲労と上半身のコンディション不良で登録抹消され、そのままシーズンを終えてしまいましたが、2年続けて先発投手として素晴らしい活躍を見せました。日本トップクラスの先発投手として完全に地位を確立したと言えます。

投球の軸となるのは全体の37%を占めるフォーシームで、平均151.3km。入団後の4年間で147.8km→149.5km→150.9km→151.3kmと毎年球速がUPしており、今のオリックスの育成環境と完全にハマっているのでしょう。序盤こそフォーシームを狙い打たれていましたが、終わってみればwFAもプラス指標、フォーシームの球威で打者を制圧することに成功しました。平均143.8kmのスプリット、平均146.6kmのカットボールと速い変化球も高い優位性を持っています。オフスピードボールとしてスライダーとカーブも有効で、コマンドの高さも素晴らしかったと言えます。

どれだけ言葉を尽くすよりもこちらの動画を見るだけで十分ですね笑。

9月10月の疲れが出てくる後半戦が特に良く、この二ヶ月間で60イニングを投げて自責点はわずか6点。シーズン半分経過時点では被弾が例年に比べて多く、ゴロ率の低下(46.2%)を懸念として書かせていただきましたが、後半戦で許した被弾は1本でゴロ率も52.7%と完全に持ち直しました

昨年の契約更改時には「もっとレベルアップして、チームを勝たせられるように。一番勝てるように。一番抑えられるように。どの数字でも一番を取れるようにしたい」(2019年12月1日付サンスポ)と語っていた山本投手。各球団の研究以上の進化を年々遂げ、投手としてのスペックは年齢的にもまだ伸びる可能性を残しています。

最後の最後に離脱してしまいましたが、来年もさらに進化を遂げてくれるでしょう!目指せ沢村賞です!

1-2.田嶋大樹投手

初の規定到達とシーズン完走を果たした3年目の田嶋大樹投手は、先発としてチームトップの20登板。シーズン120試合であることを考えると、6試合に1回必ず登板しており、まさにローテーション投手となりました。

第2Q終了時点では防御率3.02でチームトップでしたが、後半戦では多少調子を落とし4点台でフィニッシュしたものの、今年の経験は本人のこれからの長いプロ生活を考えるうえでとても大きく、チームとしても左腕育成に見通しが立ったことは重要なポイントです。昨年までは故障に悩み、1年目は新人王の期待もかけられましたが12試合68イニング、2年目は10試合49イニングと離脱してしまいましたが、オフのフォーム固めと下半身トレーニングに伴う1年間投げ切るスタミナの造成が功を奏しましたね。

とはいえ、スタッツ的には更に来年以降良くなる余地を残しています。17.4K%はここ3年で最も低く、8.2BB%も1年目と同じ数値です。FIP4.56もイニングが違うとはいえ、3年間で最も悪い数値です。一方で、被打率.226は自己最高の数字でした。次の投球マップがその理由をよく示してくれています。

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左右関係なくアウトコース低めに綺麗に投げ分けられていることがよくわかりますね。逆に、なぜこれだけの制球力がありながら指標が良くないのでしょうか?

打球を分析すると、ゴロ率が42.2%で過去最多(昨年は39.7%)で、田嶋投手の成績は守備の貢献も大きかったのではないかと考えられます。ちなみにフライボール率は46.9%でリーグ規定到達者の中では2番目に高く、基本的には田嶋投手はフライボールピッチャーと言えます。そうした観点から見てみると、広いドーム球場は必然的に相性が良くなるわけで、実際に京セラドームでの登板では8試合に投げ防御率3.62、札幌ドームでは3試合で防御率3.50と力を発揮できていることに気が付きます。勿論ローテーションがありますし左のエースとしてどの球場でもベストピッチを尽くしているのですが、来季も今あげた2球場とZOZOマリンでの登板を増やすと良い結果が付いてきそうです。

なお、先日行われた契約更改ではわずか10百万UPの提示だったため保留となりました。

先に書いたように規定到達者はリーグでわずか8人、チーム最多の先発登板数で現在1800万ならもっとあげて然るべきでしょうね。指標的には良くないものの、イニングを消化した上に、他の投手がそのイニングを投げたときに田嶋投手以上に抑えられるとはあまり思えません。

→その後、再交渉の結果4200万で更改しました!凄い!笑

規定到達への評価の声がしっかりフロントから出たので一安心です。

1-3.A.アルバース投手

外国人左腕のアルバース投手は昨年の不甲斐ないピッチングからは脱却できましたが、物足りなさも感じさせました。チーム3位のイニングは消化していますが、1試合平均で5.6イニング、QS率も50%を切り安定感という面では必ずしも信頼を置けない内容でした。

一年目に比べてゴロ率は3%程度下がり、Hard%は調子の悪かった昨年並。右打者へのクロスファイヤーのフォーシームは有効である一方、変化球を痛打される場面が目立ちました。ゾーンの出し入れが投球の基盤となるため球審との相性が悪い日は苛立ちを見せてしまう欠点があり、35歳という年齢と2億を超える年俸から、先日来季の契約を結ばないことが発表されました。

左投手で担った89イニングの消化は来季そこそこ骨が折れると思います。田嶋投手と後述する山﨑投手の台頭という要素はあれど、彼らが結果を残したのはこの一年です。田嶋投手に関しては今よりさらにイニングを稼ぐのは難しい中で、違う投手でイニングを埋めて勝利を増やすには、アルバース投手よりクオリティの高いピッチングが必要となります。その役割は外国人投手に期待するのが筋ですので、誰を獲ってくるのか楽しみにしましょう。左にこだわる必要はないので、とにかくイニングを稼げる選手が欲しいですね。

1-4.山﨑福也投手

田嶋投手・アルバース投手と共に先発左腕として81イニングを消化したのが山﨑福也投手です。

ドラ1で指名されたもののこれまで思ったようなピッチングが出来ず、先発/中継で確固たる立ち位置が決まらないまま27歳となりましたが、今年は開幕2カード目から先発ローテーションに入ることができました。自身最多の5勝をマーク、契約更改でも600万のUPを勝ち取りました。もうちょっと上げてもいい気がしますが本人が納得してるならいいでしょう笑。

先の表の通りスタッツ的には良くなく、FIP5.34は昨年よりも悪い数値となっています。1試合で3本のホームランを打たれた試合が2試合あり、調子の悪い時のゲームメイク力は来季に向けての課題の一つでしょう。奪三振は13.4K%と少ないですがゴロ率は50%を超え、先にあげた先発投手の中で最も高いゴロ割合となっています。マネーピッチであるカーブボールの割合が投球の30%を占め、これは入団してから最多の割合となっています。フォーシームの平均は139.2kmですが、中継起用などもあった過去の登板に比べて入団後で最も速くなっています。80イニング以上を投げて貯金こそ作れませんでしたが、借金なしに終えたのは自信になったでしょう。

2019年の頭の記事ですが、山﨑投手のフォーシームが速くなった理由をデイリーが記事にしている文章を見つけたのでここで紹介します。

「去年の6月からウエートトレとか、食事とか徹底的に取り組んで来たんです。体重は7キロ増えました。あとは中嶋2軍監督から投球フォームを見てもらったのもありますね」投球の際に背中が反る格好となっていたのを修正。効率よく力を伝えられるようになったという。

現一軍監督の中嶋監督のフォームチェックを要因として挙げており、山﨑選手本人にとっても特に後半戦の一軍環境はプラスになっていたのかもしれませんね。

田嶋投手とともに日本人左腕が一年で2人台頭しローテーションをしっかり回したことは、今後の左腕育成を考えてもチームにとってプラスだと考えられます。田嶋投手はカットやツーシームなど小さな変化で、山﨑投手は大きなカーブを軸に緩急で、それぞれタイプの違う左腕が出てきたのですから。後述する宮城投手が投手のトッププロスペクトとなっていますし、育成契約でも佐藤一磨投手や辻垣投手も控えておりここの厚みが増すと投手力を強みにできるでしょう。

1-5.山岡泰輔投手

昨年3年目にして一億円プレイヤーとなった山岡投手ですが、今年は開幕2試合目に脇腹痛で緊急降板。開幕早々に離脱してしまい先発ローテに穴を開けてしまいました。その後もストレス性胃腸炎で体重-8kgとの記事も。

まさに受難の一年となってしまい、投球フォームの変更も余儀なくされてしまいました。それでも復帰後に4勝をあげ防御率2.60と好成績でフィニッシュしたのは流石。自身の最終戦では完投勝ちを収め気概を見せました。

防御率こそ2点台でしたが、ゴロ率は過去最も低く46.6%(昨年は52.7%)、hard%は40.8%(昨年は29.2%)と薄氷を渡ってきたと言えます。球種で見てもフォーシームを始めとして軒並み2km程度球速が落ちています。一方、上の動画でもクローズアップされているマネーピッチのスライダーは昨年より指標が良くなっており、フォーシームとほぼ同じ投球の35%を占めています。空振りの取れる絶対的なボールですので、フォーシームの質がさらに上がれば今以上に手がつけられなくなるのは間違いありません。

故障の影響で「元のフォームに戻すのは無理」とし、「もっと良いフォームを探しました」と負担軽減に励む。年内は投球練習を行わず、キャッチボールなどで新フォームの感覚を確かめる。NEW山岡が来季巻き返しを期す。

先の記事の通り、今年の残りはフォーム固めに専念し来年復活を期する山岡投手。怪我なくシーズンを過ごし、山本・山岡の2人で20勝を目指してほしいと思います。

1-6.張奕投手

昨年後半に先発経験を積み今年はローテーションに入ってくると思われた張奕投手。しかしキャンプ中に右肘痛で離脱してしまい今シーズン初登板は8月13日。登板数は昨年より5試合多く、イニングでは20イニング多く投げることはできました。契約更改では300万UP。

先発としてのスタッツは、三振奪取能力が大幅に上昇。昨年14.8K%から21.5K%になり、HR/9は昨年2点台から1点台前半へと良化を見せました。フォーシームの平均は145kmあり昨年は投げていなかったカットボールを投げるようになりました。なお、シーズン終盤には4試合で中継ぎ登板しましたが3イニング超を投げて3失点と結果は残せませんでした。

来年の起用法は適性を見て決めていく形になると思います。個人的にはこのような伸びのあるフォーシームを持った26歳なので、スタッツが軒並み良化していることを鑑みてスターターとして見たい投手です。

1-7.榊原翼投手

こちらも昨年約80イニング投げ先発ローテとして期待されましたが不調でチャンスを掴みきれなかった榊原投手

43イニングの登板に終わり、防御率は5点台。中でも制球に苦しみ、K%を超えるBB%を記録してしまいました。ピッチングの左右別マップはこちら。

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左打者への制球がバラついているのが分かります。案の定、対左打者の方が被打率・奪三振率・与四球率全て右打者に比べて悪い数値となっています。昨年に比べてスライダーの割合が10%近く減り、フォーシームとスプリットの割合が増え、この2球種で78%を占めています。スライダーの制球に悩み、スプリットとフォーシームのツーピッチになってしまったことで先発投手としては厳しい一年になってしまったと言えますね。

契約更改では400万の減俸。

これまでもメンタル面の脆さは囁かれていましたが、本人も多いに自覚しているようですね。巻き返しを図って欲しいです。

1-8.その他

ここまでの7名が先発として40イニング超を投げた投手でした。山本投手という大黒柱はいるものの、それ以外の投手陣は細かくみていくとまだ改善の余地を残している選手が多く感じられます。山岡・張投手は一年戦える身体の強さが求められますし、田嶋・山﨑の左腕2人は球速をもう少し上げられるのであれば一層緩急も小さな変化も生きてくると考えられます。

個別の項目は設けませんでしたが、先発投手編の最後に増井投手と宮城投手には軽く触れておきましょう。

増井投手はシーズン開始時リリーフでしたが、9月3日に2016年以来となる先発転向。リリーフとしては球速が衰えフォークとのツーピッチでは三振が取れなくなった今、先発転向し昨年や一昨年ほとんど投げていないカーブやスライダーを織り交ぜ、その二球種の割合は16%。フォーシームの平均球速は昨年148.3kmから144.6kmに落ちていますが、奪三振率は21.7%あり被打率は.182。5登板とはいえ2勝1敗と貯金を作り、新たな増井投手の姿を見せてくれました。今年はリリーフと合わせて35イニングの登板と期待に応えられなかったのですが、来年は

宮城投手高卒一年目ながらファームで13試合約60イニングを投げて防御率2.72、6勝をあげて最多勝のタイトルを獲得。一軍初登板は10月4日。間違いなく緊張したとは思いますが5回2失点と試合を作り、11月6日のファイターズ戦で高卒1年目としては一番乗りで初勝利を挙げました

平均143kmのフォーシームとスライダー、カーブ、チェンジアップなど多彩な変化球を持ち球に、一軍でも早々に16イニングを投げ防御率3.94と結果を残しました。とはいえ、過度の期待は禁物だと思っています。ただですらコロナ禍で調整が難しい中ファームで最も多くのイニングを投げており、一軍でも登板をした疲労は大きいと思います。2年目も中10日を中心に、一軍の谷間として登板を重ね、同い年が大卒として入ってくる22歳までに主戦投手の1人となっていればベストだと考えます。

2.リリーフ投手

続いてはリリーフ投手陣についてみていきましょう。チーム別のリリーフ投手の成績はこちらです。

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第3Qに比べてK%とBB%の項目は良化してシーズンを終えました。リーグではソフトバンクが奪三振能力では頭一つ抜けており、オリックスはリーグ中位の成績です。昨年のリリーフ陣は、21.4k%/10.4BB%/0.92HR/9と今年とほぼ一緒でした。投手有利の京セラドームを本拠地としていながら、HR/9が2年続けてリーグ下位に沈んでいる点は痛手でしょう。

個別の選手(10イニング以上の登板)はこちら。

リリーフ成績

以下、個別に今シーズンを総括していきましょう。

2−1.B.ディクソン投手

まずはクローザーを一年間務めたディクソン投手です。

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今年は0勝4敗16セーブで防御率3.28。16セーブをあげたものの抑えとしては4つの負けが込んでしまった点が反省点でしょう。昨年25%あった奪三振率が21%台に下がり、被打率は.228→.260と悪化。ディクソン投手の代名詞はなんといってもナックルカーブですが、今年はその割合を昨年の58%から43%に減らしています。昨年に比べてピッチバリューも悪くなり、フォーシームとナックルカーブとのツーピッチが今年は厳しくなってきたと考えられます。

過去の記事でも書いたように、今年はチェンジアップを3.4%投げておりツーピッチからの脱却を目指そうとして試行錯誤しているように見えます。フォーシームの平均は149.4kmと未だに速く36歳という年齢を感じさせないだけに、再度の奮起を願いたいところです。

年内に契約を妥結し、今年1.65億から半減の8,000万での単年契約となりました。来年は二軍でクローザーを担った漆原投手をはじめとした若手投手とクローザーの座を争う形になりそうです。オリックス在籍9年目のシーズン、あと1年で日本人選手扱いとなるので本当に頑張ってほしいですね。

2−2.T.ヒギンス投手

昨年は固定できていなかった8回を投げるセットアッパーにハマったのがヒギンス投手です。

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3勝3敗19ホールドで防御率2.40。今年の新外国人としては最多のホールドをマークし、WAR1.0も立派です。チームのリリーバーとして最多の41イニングを投げており、内容も伴ったいいシーズンを送れたと言えます。

投球スタイルとしては平均151kmのフォーシームとチェンジアップで投球割合の90%を占めています。

共にピッチバリューは大きくプラス指標となっており、まさに「爆速ストレート」と「魔球チェンジアップ」となっています。特にチェンジアップはストライクゾーンで勝負ができており、タイミングが全く取れていない空振りが多く見られます。強い腕の振りから想像以上に来ないチェンジアップは極めて有効なボールとなっています。

これまで書いてきた記事の中でもヒギンス投手の成績は追っており、シーズン1/4時点ではK%<BB%でその後の投球を不安視していたのですが、予想を覆して終わってみればK%が大幅にBB%を上回る形となりました。こちらの記事のように日本での生活にも慣れたようで来年もセットアッパーとしてフル回転してくれることを期待しています(今年以上にリードして迎えられる展開を増やしたいですね)。

2-3.山田修義投手

チーム最多の48登板でイニング跨ぎにワンポイントにと、大事な場面でフル回転したのが山田投手です。防御率こそ3.89ですが、25.9K%、11.2BB%、HR/9は0.23と指標上は素晴らしい成績となっています。実際、FIPに関しては2.79で昨年の4.28に比べても大きく改善しています。

フォーシームの平均球速は140kmを切るものの、スライダー・チェンジアップの変化球も含めて極めて精度の高いボールを投げています。特に対角線に投げるボールが強みで、右打者に対しても積極的にインコースを使える点は緊迫した場面を任されるリリーバーとして必要不可欠なものです。

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左右別の投球マップですが、まさに対角線の低めへのボールの集まり具合が素晴らしい。昨年は左打者よりも右打者を得意としていましたが、今年は右打者の被打率が.273と打たれている点は少し気になります。

7月に月間15試合登板をしたのが疲労を蓄積させてしまったのか、8月・9月は二ヶ月連続で防御率6点台と調子を落としてしまいました。シーズン終盤の10月は12試合で自責点わずか1と復活を果たしただけに、きちんとした登板管理の下で投げさせたい投手です。

2-4.荒西祐大投手

昨年末に私がキーマンに挙げ先発での活躍を期待していた荒西投手ですが、プレシーズンの結果で先発ローテ争いから脱落。

1年間中継ぎ一本でシーズンを終えました。防御率は4.88、HR/9は1.72と被弾の多さが目立ち数字としては良くないですが、それでも今年のオフの契約更改では220万のUPを勝ち得ました。

今季の登板を見てみると、29試合中14試合で1/3や2/3といったイニング途中からの登板で、こういってはなんですが“雑“な場面でのスクランブル登板が多い一年でした。私としては彼はワンポイント全力で抑えるタイプではないのでこうした使い方は向いていないのではないかと思いますし、中田翔選手の被弾など負けに直結する試合もあっただけに心象は正直良くないのですが、荒西投手の今年一年の最多自責点は3点。それも1回だけで、自責点2も僅か2回。荒西投手の魅力として大きな破綻なく制球ができ、無用なランナーは出さない投球スタイルのおかげで最低限の失点で踏みとどまっているとも言えます。

このように中田翔選手にリベンジを果たしたアウトコースへの制球は流石のものがあります。

年間の投球内容としては腕をやや下げてサイドスローになったことで全体の球速が低下し、フォーシームは昨年143.8km→141.2km、シンカーも136.7km→133.2kmとなっています。それでもPitch Valueはフォーシームもシンカーも共に昨年より良化しており、中継ぎとしてのやりがいも本人が感じ始めている言葉も契約更改では聞こえました。

「自分はどこでも投げるつもり。(中継ぎなら)50試合は投げたい」

来年もリリーフとしての登板がメインになるかもしれませんね。20代前半の投手陣に苦しい役回りをさせずに投げてくれる便利屋として長く活躍できる道は開かれたと考えています。

2-5.台頭した20代前半のリリーバー達

今年の明るい材料として、20代前半の若手投手リリーフ陣が躍動した一年となりました。その筆頭は吉田凌投手。35試合を投げ2勝2敗防御率2.17と充実のシーズンを送りました。これまで一軍登板も少なく、二軍でも燻ってきましたが、今年は投球割合の57%を占める2種のスライダーを武器に7月前半から一軍登板を重ねました。

奪三振能力を示すK%は28%とリーグのリリーバーの平均を超えており、Hard%は25%台今年はほとんど捉えられた当たりをされることなくシーズンを過ごすことができました被弾1はまさにそれを表しているでしょう。契約更改では3倍増を勝ちとり、先にあげた荒西投手と今年もオフを過ごすそうです。

契約更改は茶髪で望むところも一皮剥けた象徴かもしれませんね笑。山岡投手もオフはシルバーグレイに染めていましたし笑。

右の筆頭株が吉田投手であるならば、左は齋藤綱記投手でしょう。

こちらも投球の57%はスライダーで組み立ての大部分を担っています。田嶋投手の入団によって強い危機感を持ってサイドスローに変えてから3年、ついに華開いた一年でした。

32試合もの登板を重ね、7月末から8月頭にかけては5試合連続登板も経験するなどかなりハードな一年ではあったと思いますが、お陰で今年は年俸倍増。結婚していたことも明かすなど公私ともに充実しましたね。このオフに加入した能見投手から早速刺激を受けているとの記事も。

クイック投法やけん制を身ぶり手ぶりで解説。斎藤は「走者がいる場面で足を上げて投げられないんですと言ったら“こんな風にやってるよ”と話してくれました」と感激した。

実際データで見ると、今年齋藤投手は走者なしの場面では被打率.218に対し、走者ありの場面では被打率.300。リリーフとしてランナーが出た場面でのピッチングは試合の趨勢を左右するだけに、ベテラン能見投手の指導の下さらなる改善が期待できますね。

将来のクローザー候補としてファームの抑えを昨年担い、今年は育成契約から支配下へ昇格した漆原大晟投手。今年は一軍昇格試合で3点差の9回に登板。失点は喫したものの、自身初登板で初勝利を挙げました。奪三振率を表すK%は驚異の29.4%被打率も.230台と低く、平均146kmのフォーシームと切れ味鋭いスプリットのコンビネーションを主体に攻めるピッチングを繰り広げました。

こちらの真柴さんの記事の通りクローザーへの強い意識を感じさせ、これからますます存在感を増して行きそうですね。

来年は開幕前からディクソン投手とクローザーの座を争うぐらいになってくれるとチーム内競争が活性化し、全体の底上げにつながると考えられます。

漆原投手と同時に一軍昇格した左の富山投手も注目株です。

トヨタ自動車から高卒3年目で入団。昨年は1試合2イニングのみの登板でフォーシームの平均は140kmを割っていましたが、今年は18試合に登板し平均144kmとビルドアップ。スプリットも130km中盤で切れ味鋭く、投球割合は少ないもののスライダー・カーブも持っているので、まだ23歳という年齢を考えても来年は先発でも面白いと考えています。

2-6.リリーフ投手まとめ

ここまで見てきましたが、2-5で触れたように若い投手が台頭の兆しを見せています。昨年はリリーフ陣の脆さが指摘されていましたが、結局は先発が整えばリリーフも整うというね。山本投手田嶋投手と2人の規定投球回越えがいて、リリーフの負担が少なければ運用も楽になるというものです。

クローザーにディクソン投手、セットアッパーにヒギンス投手と後ろ2枚とも外国人投手なのでここに日本人投手が入ってくるとより強固になっていくでしょう。来季は黒木投手もTJから帰ってきますので、今年結果を残した吉田凌・漆原と怪我明けの黒木・澤田といった球が速いorマネーピッチのある選手で競争をすることになりそうです。

今年のヒギンスーディクソン体制の各投球内容を見ても、ディクソン投手が4敗しているとはいえここまで回せば勝ち筋がほぼ見えています。7回を託せる投手は多いので、いかにリードした状態で6回を終えるか。次の記事で書く打線が低迷の原因であることは明らかなんですよね。THE  DIGESTさんに寄せた記事の通り、投手陣は軒並み頑張ったと思っています。今回は取り上げませんでしたが、ベテランリリーバーズもいつか書きたいと思います。

お読みいただきありがとうございました🙇‍♂️

■出典





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