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「推しを書き写す」の、はなし。#30

『三行で撃つ』(近藤康太郎さん)を読んで、
新たな日課を背負うことにしました。それは、本の書き写しです。

好きな作家の作品を読書体験で終わらせるのではなく、
一言一句を紙に書き写すことで、
その文体や日本語づかいを、余すことなく堪能していきます。

『三行で撃つ』では、

もの書きに必要な感性について、以下のように語られていました。

”だれでもいい、好きな作家が現れる。その作家の作品は、全部読む。繰り返し読む。まるで、自分がその作家になったように、読む本や、食べもの、酒の種類に銘柄、聴く音楽、観る映画、散歩の道筋やらなにやら、とにかくまねしたくなる。そこまで惚れ込む、憑依される。”

『三行で撃つ』より抜粋

「書く」側の人生を歩みたいと願う人間として、
これまでの私の生活態度はいかがなものだったか?
この本を読んで、覚悟の甘さをグサグサと刺されたような心地がしました。

私は自分が読書好きだと思っていて、
好きな作家の作品も懸命に追いかけているつもりでした。

しかし正直なところ、多くの本は1回読んだら満足して綺麗に本棚に飾っていて、
もっと正直にいえば、本棚の容量を気にして、電子書籍で“読み片付けてしまう”こともありました。

これで本当に、「好きな作家を追いかけている」と言えたのでしょうか?

文芸エンタメの良いところは、一度購入すれば何度でも味わえること。
味わう時期・自分の心向き次第で、あたらしい解釈ができること。
自分から湧き出る言葉をアップデートできること。
当たり前のようで見落としてしまっていたこの力に、今さらながら気付かされました。

これだけ魅力あるコンテンツを安価に手に入れられるというのに、
本棚に飾ってインテリアにしてしまうなんて。
言葉との向き合い方を、これを機に変えていきたい。
ひとつずつでも、自分なりにやれることをやっていこうと思い、
まずは大好きな作家、川上未映子さんの作品を書き写すことからはじめてみました。

短編集『愛の夢とか』より

まだ1週間ほどですが、
日本語の選び方・改行の使い方・漢字とひらがなのバランスなど、読んだだけではわからなかった文章の顔つきが、ほんの少しずつ見えるようになってきた気がします。

そして何より、日頃手書きで文字を書くこととは無縁になっていましたが、
日に日に埋まっていくルーズリーフを見ながら、
スクリーン上では得難い、たしかな達成感を感じられるようになりました。
心を整える日課としても、これから真摯に向き合っていきたいと思います。

“最初からオリジナルな語彙、オリジナルなスタイルを持っている作家など、いない。”

『三行で撃つ』より抜粋

「読書好きの推しはコレ!」と胸を張って語れるまで作品を味わい尽くして、いつかは、わたしらしい語彙・わたしらしいスタイルを見つけにいきたいと思います。


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