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「ある日。カップルたちの、カフェでの過ごし方」の、はなし。#23

先日、少し変わった体験をした。

時々執筆の作業をさせてもらうお気に入りのレトロな雰囲気のカフェで、
お店手前の禁煙席に座っていると、隣の席・正面の席にそれぞれカップルがやってきた。

2組はほぼ同じタイミングでやってきたのだが、
不思議なことに、この2組は生写しのように何もかもがソックリだった。

女の子は、上は白のニット・下は黒のタイトスカートを履き、
ロングブーツと合わせたコーディネートで、最適範囲の絶対領域から綺麗な生足を見せている。
一方男性の方は、上下黒のスウェットで、いかにもご近所からやってきました風。

それぞれがドリンクを頼むと、
男性2人は徐にMacを取り出して、何やら難しい顔をして作業を始める。
(しかも2人して、モニターの高さを調整するための簡易スタンドをMacに取り付けるスタイル)

一方の女の子たちは、「私のことは構わず頑張って」と言わんばかりに、
大人しく静かにしてスマホと向き合っている。

そして私は、この4人を目の前にして、
一人ナポリタンを食しながらPCにテキストを打ち込んでいた。

え、待って?
最近のデートってこんな感じなの??女の子たち、優しすぎない?なんで?
自分との大事な時間、目の前でPC作業に充てられるのイヤじゃないの?
せっかくそんな可愛いカッコして一緒にいるのに、黙ってスマホ見てるだけでいいの?
・・・・

と、ひたすら疑問符が止まらなくなってしまったのだが、
同じスタイルで過ごすカップルが目の前に2組も現れるというとことは、
きっとこの空間にも彼女たちなりの意義があって、
意思を持ってそこに来ている、ということなのだろうか。。

否、私なら耐えられぬと、こちらも黙々と麺をすする。

4人はそのまま、会話もなく各の時間を過ごしていたのだが、
あるタイミングでどちらからともなく店員さんを呼び、
隣カップルはチーズケーキを、少し時間差で正面カップルはパフェを頼んだ。

目の前にスイーツが置かれると、彼女たちは嬉しそうにそれを食し、
一口ちょーだい、という彼にお裾分けをしている。

たった1分にも満たないやりとりだったが、
そんな光景は、なんだか見ていてとても微笑ましかった。

なるほど、彼女たちは「自分との時間をPC作業に充てられた」ということではなく、
「忙しい彼の限られた時間の中で、少しでも一緒にいられる時間を得られた」ということに絶対的な価値を置いて、
今日この時を過ごしているのかもしれない。

やがて両カップルはこれまた少しの時間差で、カフェを後にした。
最後まで見事なシンクロを見せてくれた。

そしてあとには、
ひとりナポリタンを平らげた空皿と、
まったく進んでいないPC画面を見て佇む私が残された。

彼らのデートに知りもしないで解釈を入れてみたりしたが、
彼らからしたら、「あの人せっかくこんなおしゃれなカフェにいるのに、女ひとりでナポリタンか」と思われたか。
いや、そもそも間にいる私は眼中になかったか。

まぁ間違いなく、後者であろう。

そんなこんなで、ひっそりと日曜日は終わりを迎えた。
どちらのカップルにも、(私にも、)幸あれ。

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