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つまらない男



つまらない男

はっきり言って旅慣れてきてしまっていた。これは非常に残念なことである。何が残念かって? それは、初心を忘れてしまっていることだ。いつ間にか昔自分が見ていた、つまらないバックパッカーになってしまっている気がする……。話しかけられても無視、人と目が合わせられない――。そんなような奴だ。

――Open your mind.
11年前、インドのマハーバリプラムで出会った男が繰り返し言っていた。そこからわたしの旅が劇的に変わっていったことをよく憶えている。

慣れすぎて何が起こるかをある程度予想できるようになってしまっていた。昔はそうでなかった。話しかけられれば詐欺であろうが何であろうが、必ず足を止めていた。心を開いて旅をしていた。最近はダメだ、話す前からたかり、詐欺、大麻、売春の類は分かってしまう。だからわざわざ足を止めたりしなくなった。一見いいことのようにも見えるが、旅をしていてこれではつまらない。致命的なのは、これでは人物写真が全然撮れないということ。人を撮るのに、こっちがこんな態度じゃ、いい写真は撮れないだろう。

ダージリンの北にぺリンという街がある。特になにがあるわけでもなさそうだったが、このダージリンの人の多さに辟易してきていたので移動しようと考えた。ところが、あっちこっち訊き歩いてもぺリンに行く車は見つけられない。こうなるとぺリンに行くには、プライベートタクシーを使うことになりそうだった。それは値段が高すぎて無理だ。
ぺリンへ行ってそこからガントクを目指そうと考えたが、仮にぺリンへ行けてもこの調子ではガントクへ行ける保証もない。いや、行けはするのだ、金さえ出せば。
代わりにガントク行のシェアジープ乗り場は見つけた。料金を訊くと400ルピー……。ガントクへ行くか。

ダージリンの鉄道 通称トイ・トレイン

10月24日はホリデーということで、昨日より人も車も少なかった。開いている飲食店などもぐっと数を減らしていた。


宿探しに苦労する男

翌25日、7時にシェアジープの乗り場へ行った。なんとなくそんな予感もしてはいたが、ホリデーの翌日でガントク行のジープが出なかった。正確には1台だけあったのだが、3列シートの最後部の真ん中しか空いておらず、断念した。閉所恐怖症はこういうとき辛い。9時過ぎまで2時間、次の車が来るだろうかと待ってみたが、とうとう来なかった。
この日は散々だった。ここから2時間以上宿探しのために歩き回ることになる。

インドの物価はこんなにも高かっただろうか……。ここに来て宿代の出費が嵩んでいた。ダージリンには腐るほど宿がある。しかし、今やかなりが埋まっていた。個室もドミも。空いていても予算オーバーだったりWiFiがなかったり、Booking.comに空きを見つけてもその宿自体が見つけられなかったり……。ダージリンの道は迷路だ。道とは思えないところに道がある。おまけに鬼のような坂……。そこを前後20キロあるバックパックを背負って、2時間以上歩き回った。

応援ありがとうございます! なんだかいろんなことやていますけど、今後も写真家として活動し続けられるように頑張ります!!!