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2.「学校統廃合」って、本当はどうなん?―遠くにある大きな学校、子どもたちにとっていいの?

(書きかけの項目です。ご意見などありましたらunitekyoto2020@gmail.comまでお寄せください。)

♧学校統廃合の目的

 学校統廃合・学校再編計画の背景には、政府の義務教育予算削減(学校経費の効率化)方針があります。「小規模校は、経費が割高になって非効率だから、統廃合して学校経費を合理化する」ことが本当のねらいです。(*注1 大阪市「学校統廃合の必要性やめざす方向性について」2022年12月)
 しかしながら、各地の統廃合を進める理由として、小規模校のメリットではなく、デメリットばかりが強調されて住民を誘導しているのも事実です。
 これらの方針は、様々な研究から世界の流れになっている「小さな学校」「小さなクラス」における教育効果を考慮しないものです。WHO(世界保健機構)は、「生徒数100人を上回らない学校規模」を各国に勧告しています。

 「小さな学校」「小さなクラス」が教育効果が高いという研究は、コールマン報告グラス・スミス曲線などが知られています。そこで実証されているのは、小さな集団のほうが学習意欲や態度が積極的になり、子どもたちの人格形成・人間的成長にとっても効果的であること、学級の生徒数が少ないほど学力が向上することなどです。
 京都市は統廃合を進める際に、御所南小学校の例をもって、統廃合=学力が向上し、地域の人口が増えると説明しますが、特別な教育をおこなっている御所南小学校のそれらの効果は、必ずしも統廃合の結果とは言えないでしょう。特に初等教育(小学校)は、通学だけでなく、緊急災害時の安全面においても、歩いて行けるということが重要な条件です。

♧そもそも学区とは?

 京都市ではかつて番組小学校というのがありました。これは、住民自治組織の「番組」に作られた小学校で、ほとんどの旧市街地で、約500m四方の小さな地域に各1校ずつの学校が建てられました。そのため、学区の生徒や家族はみんな顔見知りで、地域の会所や防災拠点、交番や保健所の役目さえも備えている、地域コミュニティの拠点にもなったのです。ですから、今でも京都市では、避難情報も学区名で出されるほか、広域避難所に指定されており、消防分団も併設されているところがほとんどです。
 学区は、校区(通学圏)とは違う、地域自治の単位なのです。

♧統廃合後の学校跡地活用の問題

 これら、地域で教育のみならず、公共の場所として大切な役割を担ってきた小学校の統廃合後の跡地活用について、その役割を代わって担う設備が求められるのは当然のことです。また、人口が増加した場合の再開校も見据えなければなりません。学校統廃合だけでなく跡地活用についても、目先の経費削減や財源の問題ではなく、長期的な視野で考えるべきものです。学校や学校跡地は経営的な資源ではなく社会的資源であるからです。
 京都市で市の事業として検討され進められていた跡地活用が一変し、様々な問題が出だしたのは、門川市長が2011年に、学校跡地を民間へ提供する方針(「学校跡地活用の今後の進め方の方針」「京都市で広い土地を探していませんか?学校跡地活用の推進事業」)を策定してからです。
 これにより民間に丸投げ・切り売りされた跡地活用に対して、貞教、清水、植柳などの学区では、住民から強い怒りや不満の声が上がっています。
〈元貞教小学校〉跡地活用する京都美術工芸大学が、今まで通りの指定避難場所として残すことを約束した体育館を改装して、避難場所を体育館半地下に設置することになった問題。鴨川横のこの地域は低地であり、地価の避難所は水害の危険がある。反対する自治連に対して大学側は、工事遅延による損害賠償の可能性に言及。
〈元清水小学校〉市の誘致でホテルとなったが、市長は「自治会活動拠点としての機能に最大限配慮する」と説明。しかし、いまやグラウンドはホテルが占拠し、学区の運動会や夏祭りなどのコミュニティの行事は別の場所に追いやられている。
〈元植柳小学校〉市が住民の意見を聴いてホテル計画を採用するに至ったという「選定委員会」(有識者や地元住民の計6人)はすべてが非公開。ホテル計画に反対している「植柳港跡地問題を考える会」が公文書の開示請求を行ったが、ほとんどが黒塗りの文書だった。

♧行政の役割

 地方自治体や教育委員会の主張は、「少子化がさらに進行し、生徒数が減ることで教育上問題が生じる。」と言い、それが統合して「適正規模」にしなければならない理由とします。
 しかし、この「適正規模」は、実は教育上の基準ではなく、経費など行政効率の基準にすぎません。
 そして、少子化対策を講じることなく地域の小学校を廃校にすれば、少子化は加速し地域の消滅にもつながります。
 若者の働く場所を確保し、住環境を整え、子育て支援を強化することで、若者や子育て世代を呼び寄せることは可能です。そのように地域を守り育てることが地方行政の役割でもあります。行政効率を最優先にして、教育や学校、地域を切り捨てる国や地方自治体の未来はどうなるのでしょう。
 学校統廃合の問題は、子どもたちの教育の問題というだけではなく、地域やまちづくりの問題です。
 私たちがどのような地域に住みたいか、そこが安心して暮らせる地域か、子どもたちが健やかに育つかどうかは、お金を生み出すという視点だけでとらえてはならない、私たちの大切な「公共」の問題でもあります。

〔参考リンク――もっとよく知るために〕

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