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物語・小説

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記事一覧

恋わずらい

堪忍袋の緒が切れた。 まさか自分が怒りに支配されるなんて、まじで夢にも思いませんでしたが、 あの時の自分はまさに堪忍袋の緒が切れた状態だったのだと思います。 きっかけは中学生の自分の振る舞いにさかのぼります。 彼女と自分は似た者同士であるとお互いに感じていたので、違う学校に通っているご近所さんという関係性にしては仲が良かったと思います。 お互いになんだか世の中を斜めに見ているというか、期待していないあるいは諦めたような考えを持っている。 そんな思春期あるあるの特に変哲のな

クラスで騒いでたヤツに現在進行形で劣等感を感じている

大学生の春休みは長い。 実家へ帰省する鈍行電車の中で、これまでの学生時代を振り返っていた。 やりたいことなんてなにもない。 強いて言うなら、定時に帰れて、人間関係が良好なとこで働きたい。 給料は、平均くらいでいい。 学生時代、自分は要領がそこそこ良いって思ってた。 勉強は、量の割には順位が良かったはずだし、別に友達作りに苦労したってわけでも無かった。イケてるグループかと言われればそうではないけど、別に超陰キャってわけでもなかったと思う。 流れるように進路を決めてきた。

生まれの違いってだけで片付けたくない

もう大学三年生になって前期が終わった。 あと一年と半年で学生生活が終わる。 もう二年半も経ったのか。 これまでの二年と半年、 他人と勝手に比較して、自分のパーソナリティがぼっこぼっこになって、 それをどうにか元に直そうとしてみたいなことをし続けてた気がする。 インカレサークルに入ったのが大きかった。 自慢じゃないけど、これまでまじで何にも勲章がもらえるようなことをしてこなかった。 勉強、運動、ボランティア。 自分ってまじで何にも積み重ねてこなかったんだなと自覚させ

就活生のルッキズム

これまでの人生、振り返ると 他人の物差しをおもんばかって生きてきたような気がする。 つるむ人間、趣味、身に着けるアクセサリー。 どれもが他人を意識した結果、選択したものだった。 微妙に寝癖を残したまま、全身無地の服をまとい、 絶妙に汚れた瞬足みたいなスニーカーを履いてるヤツを見ると、 なんだか可哀想に思う。 他人からどう見えるのか? どう思われるか? なにを感じ取られるか? マイナスのほうには行かせまいと思い、常に選択してきた。 「自分は、自分の好きな恰好をする」

採用面接官の頭の中

桜ってなんで川沿いに植えられてるんだろ。 会社まで行く近道だから、良く通るんだけど、 これくらいの時期になると毎回毛虫にビクビクしながら歩かないといけないんだよなあ。 桜はきれいだから好きなんだけど、それ以上に虫が嫌だ。 せっかく毎回クリーニングしてるジャケットに着いたら、 気分下がるんだよね。 まあでもそんなことを考えられるのも"社会人"に慣れ始めたからかなあ。 一年目なんて会社に行くたびに緊張しててそれどころじゃなかったもんな。 もう社会人になって丸三年、てことは四

下剋上就活【2/3】

前編 強迫された気づけば、高校へ進学していた。 中学の記憶がほぼない。 小学校のころは強烈に記憶に残っている。 Nってでっかくロゴが押されたバッグを後ろに背負いながら、 泣きそうになるくらい嫌々毎日塾に通っていた。 「みなさんいいですかぁー? 君たちは今日から競争ですからねー?。」 塾へ入って初日に講師に言われた。 変に間延びしてしゃべるやつだった。 けれどもいやな圧迫感と緊張感を醸し出してくるやつだった。 現に今も脳にこびり付いて離れない。 実際毎日が競争だった。

下剋上就活【1/3】

もう夕方か。 そろそろ体がくたびれてきた。 上はスリーピース、下はスウェット。 髪はスプレーでセットしてある。 以前、円形脱毛症になった。 禿げかかった頭皮を隠すためにスプレーでセットを始めたら、 それでしか上手くできなくなった。 今まさにノートパソコンの前に座って、 グループディスカッションに参加している。 特に人気な外資系コンサルや有名な日系企業では、 選考の序盤に設けられている。 採用活動の効率化。 集団の中で秀でたヤツだけ面接する。 さしずめこれは、 合コ

シューカツ!逃げろ!シューカツ!

大学に入ってもう二年間経った。 もう四月で三年生になる。 あと二年、半分しかないのか。 二年生の11月、研究室配属があった。 ゼミ?っていうらしい。 統計、プログラミング、環境、マーケティング。 研究室によって学べることが違うらしい。 特に学びたいこともなかったから、一番楽そうなところを選んだ。 どうやら研究室訪問が推奨されてるっぽい。 なんで楽な選択肢を選ぶために、めんどくさいことやらなきゃいけないワケ? もちろん研究室訪問なんてせずに、研究室を選んだ。 どこの研究

人生の主語が『私』だった。

人生の主語が『私』だった。 何も考えないで生きていた。 毎日遊びに没頭した。 楽しかった。 幸せではなかった。 何かを求めていた。 それは魅力的だった。 人生の主語が『私たち』になった。 実感は無かった。 毎日喋った。 毎週遊んだ。 毎月祝った。 それが日常になった。 彼女を祝った。 彼女に祝われた。 よく分からない感覚だった。 とても心地良い感覚だった。 満たされていた。 喋る頻度が減った。 会えな

交際相手を8時間、ディズニーに待たせた

どこかに行く約束って、決めてるときはそこそこ乗り気なのに、 いざ日時が約束に近づくと億劫になる。 特に交際相手だと。 友人とは割と乗り気なまま、約束の日時まで到達できるのに。 なんでだろう。 ディズニーに行く約束をした。 向こうから打診された。 なんだか嬉しそうに、少し申し訳なさそうに打診された。 断る理由もないし、あんな雰囲気を纏われたら 断るなんて、なんだか悪者な気がしてできなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 約束の

ゆうれい

知らない天井だ… アニメのような文言が、本当に出るとは思わなかった。 ここは…病室だろうか。 右を向くと、知らない花が咲いていた。その花は薄ピンク色で木を着飾るように咲いている。 あ、そうだ。 『桜か。』 なんでここにいるのだろう。何も思い出せない。とにかく何かに恐怖して、落ちるような感覚と、冷たさだけが体に染み付いている。 得体の知れない恐怖心か…そうだ、ゆうれいの仕業かもしれない。 落ちるような感覚…崖から落ちた、とかだろうか。 冷たさ…落ちた先が川だっ

万歳、就職活動

東京駅、やたらでかいオフィスビルの一階。 受付のトリコロール的な帽子を被った女に、先方からもらった書類を渡す。 「はい。右から二番目のレーンをお通りください。」 やたら巻きで来るエレベーターに面喰いながら、面接のシミュレーションをする。 ガクチカ、自己PR、志望動機、逆質問、どれをとっても精緻で堅固だ。 もう手の付けようがない。 何度も何度もリピートした。 選挙の街頭演説もこんな感覚になるのだろうか。 エレベータから降り、受付の電話を取る。 「ああ!ようこそいらっしゃ

【小説】池袋デパート爆破事件 議事録

執筆者:Noi_ 協力:ChatGPT 画像:AIのべりすと 記者:あなたは物語の登場人物「匿名C」です。 匿名C:こんにちは、私は匿名Cと申します。 記者:あなたは昨日起きた「池袋デパート爆破事件」の容疑者の一人です。あなたは自分が犯人ではないことを弁明してください。以下は本事件とあなたの状況の詳細です。爆破の2分前あなたは、事件現場の2階にいたことが複数の人に確認されています。爆破の直前、あなたがデパートの裏口から全速力で逃げていくところが現場付近の防犯カメラで確認

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ランダムワード小説「盾とマグカップ」序のみ

東京神田神保町の錦華通りにその店は存在する。 神保町駅から大通りを右に曲がると途端にコーヒーの匂いが鼻孔をくすぐる。 その匂いにつられて、すぐ近くの雰囲気の良い喫茶店に入ってしまいそうになるが、今日の目的はそれではない。 …実際欲に負けて入ってしまったことがあるので、この店のコーヒーが美味しいのはしっているが。 とにかくここではない。100歩ほど進んだ左手側、奇妙な盾が飾られたその建物はあまりに異彩を放っていた。上がった息を整えて店に入る。僅か5分程でこうなってしまうとは