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写真と人 インタビュー Rulu-006 2023/10/25

前回。
「写真と人」というシリーズが、「《何か》と人」シリーズの一番最初なのだけれども、そろそろどういう意図でこのインタビューをしているかを書いておくべきだと思って。

1,これが通常の写真と鑑賞者の構造だとすると、

2,こういう構造にしたかった。

インタビューというもので、モデルとカメラマンの人間関係を浮かびあがらせたり、カメラマンの感情を取りあげることで、鑑賞のサポートをしたいと。
写真を見るということは鑑賞者の自由で、こう見なさいああ見なさいというのはないわけですが、線の数を増やすことによって、情報量を増やし、鑑賞という行為の面白さを深めたいという意図ですね。

3,さらに、インタビューがカメラマンの撮影に影響を与えるようになるかを観察したい。

インタビューというのは、スポットでやることが多いですから、点でしかない。
それをシリーズにすることで、行為そのものに影響が与えられるか、という実験ですね。たぶん影響、アリですね。今回のインタビューしてみても。
インタビューっていうものは取材で、取材が相手に影響を与えてはいけないのですが、まあルール通りに何かをやっても面白くはないだろう。
まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

冒頭

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——今回の撮影は、いかがでしたか?

今回の方は、紹介の紹介の紹介の方になります。
以前モデルをしてくれた方がインスタグラムに投稿していた写真を見せてくれてて、それで私も撮ってほしいと連絡をくださって撮影させて頂くことになりました。

Xのつぶやきだったり、募集の文面だったり、普段あげてる写真を見て来てくれた人の方が、撮影のイメージがつきやすいのかなって思ってたんですけど。
でも、そうでもないのかなっていうが今回の発見ですね。
私がつらつらとXでポストしている言葉とか、UPしている写真とかを見てとかではなくて、
友達のインスタグラムで私が撮った写真を見て、なんかいいなって思ってくれて。

最初のメッセージには、
お友達が被写体をしていて、その投稿であなたを知りました、いろんな経験がしたい、今、人生で一番自分を美しいと思える時期だと思っている、あなた自身への興味があり、応募しました。と書いてありました。

それで、会うことになって、ご自宅での撮影ということになって、自宅にお伺いして。
モデル経験は基本的にはない方だったんですが、

インスタを見ると、ファッション系インスタグラマーかなと思いました。
凄くおしゃれで可愛いんですけど結構奇抜な感じでした。

凄く個性的な人が来たなって思ったんですけど、
会うとすごい落ち着いていて、
黒のニットに黒のカットソーにジーンズみたいなスタイルだし、
インスタグラムのイメージから想像するとわりとギャップのある感じ。

家だとそういう感じなのかなとか思いながら、でもよくよく話を聞いていくと、
個性的な古着とかそういうのに目覚めて、頭を蛍光ピンクにしてみたりとか、すごいフリルとかチュールがついたコーディネートをしたりとか、モードな格好だったりとか、すごく着飾っている時期があったということなんです。

結婚してらっしゃるんですけど、旦那さんは、奇抜なファッションはあんまり受け入れが良くなかったみたいですね。それとも関係するのか、すれ違いみたいなことがあったりとか。

それで、今、旦那さんは、インドに出張で行ってらっしゃって、綺麗な家に一人暮らし。
旦那さんが強迫性障害というか、醜形恐怖症という疾患を持っていて、だから写真を撮られるのも嫌だし、鏡を見るのも嫌だし、2人で一緒に写真を撮ることができないっていうことをまず言ってて。2人でどこか出かけたりとかしても、記念写真とか撮れないんだなって思って。そのことは印象的でした。

彼女は彼女で、後に言葉の確認障害に4年ぐらい悩んでいて、そのときは何回も何回も言葉を確認したりとか、そういう症状が出ていたりとかしていたそうです。

いろんな関係性があって、ファッションの方に傾倒したり、ちょっとうまくいかなかったりとかして、彼はもうほとんど何も言わないのに近い状態でインドに行っちゃって、という状況が今ですね。それでやっぱり彼女の中で混乱したりとか互いにあったのだと思います。

前々回の彼女もそうなんですけど、すごく服が好き、着飾ることが好き。
だけど、あえて人に写真を撮られるとか、バチバチにお気に入りのコーデで決めて写真を撮ってくださいじゃなくて、
ヌードやセミヌードで着飾っていない状態を撮ってほしいっていうことが続いたから、それはすごく興味深いことですよね。
人に写真を撮られたい彼女たちの思考とか気持ちってなんだろうっていうのが、今すごく関心があります。

最近は盛れない証明写真で写真を撮るのが流行ってるみたいなんですよ。証明写真スタジオなんかもあって。なんだか不思議で面白くないですか?
私よりも少し若い世代なので、感覚的なズレもある気がしていますね。
私の時は、盛れるプリクラ機を探してみたいな時だったので。当時はAI的に盛るんじゃなくて、ライトの強い機械だったりとか、機械によって良い悪いが結構あったから。

常識的な範囲内で綺麗に写りたいっていうのは、割と受け入れられやすいと思うんですよね、考え方として、感覚として。
あとはナイトワークを、母親の仕事の関係で水商売とか身近にあったので。
パネル写真っていうのがあるんですよね。キャバクラ嬢ばっかりが載ってる写真が並んでて、その写真は、濃いめにメイクして、スタジオですごく強めの光を当てて、もう肌のアラとかを飛ばしちゃう。なおかつレタッチもするっていう。あれは当時の盛りのひとつかな。感覚に近いというか。

そういう写真ではなくても、フォトショップでレタッチとか、シミを消すニキビを消す肌荒れを目立たなくするシワを薄くする。
写真のそういう流れを見てると、そういうもんだよねって。
だから画像加工について個人的には、そんなに違和感はないんですけど。

でも、行くとこまで行くと、嫌になって戻ろうとする動きも生まれるんだなっていう。
あまりにも自分からかけ離れていきすぎそうになると、不安になるのかなって。

混沌

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——それで、今回はどういう撮影でしたか?

最初にしっかり話をしたので、撮影時間はそんなに長くはなかったんですけど。
最近、ポラロイドカメラをですね、モデルをしてくれた子からもらって。なのでそれを持っていって、一番最初のワンカット目は、ポラロイドカメラで写真を撮って、ノートに言葉だったりとか書いてもらったりしながら話をして、そして撮りましょうかって言って、撮って。

最初は、ルームツアーをしてくれました。
YouTubeとかインスタグラムとか、そういうものを思いだして、何か世代らしいなと思いました。モーニングルーティーンとか、ルームツアーとか、ああいうノリで、ここのソファでいつもくつろいでますーとか、これで音楽を聞きますーとか、最初そういう感じで始まって。
そういうところは何か、職業モデルや撮られ慣れている子とは違う新鮮さがありますよね。あとスタジオだと、やっぱり何もないから、準備ができればすぐに撮りましょうかっていうことになってしまいがちだけど。
彼女の家に招かれてお邪魔しているっていう立場なんで、そこでどういう行動を取るかっていうのも、ちょっと面白いですね。

部屋を一通り、ここが寝室ですとか、何かアイテムだったり、お気に入りの小物とか紹介してもらって。
あとは、前々回の女の子の家にもレコードプレーヤーがあったんですけど、今回の彼女の家にもあって。レコードってすごいアナログなものですよね。アナログなものを持つのも若い世代に流行ってるのかな。
それでレコードを紹介してくれて、アルメニアの音楽ですって言って、すごく綺麗なジャケットを見せてくれて。アルメニアって聞いたことあるけど、多分そんなに大きな、メジャーな国ではないし、なんでアルメニアなのかなと思いながら、あとは寝室で写真を撮ったりして。

彼女は撮られることに不慣れなので、モデルのほうで勝手にどんどん動いていていつのまにか没入して撮ってっていうような前回のスタイルとはまた違うことが起こります。
いつもインタビューでは、揺らぎがあったかなかったのかみたいな話をしてたりするんですけど、今回は、あったのかなかったのかという感じで。

それで、ヌードを撮ったんですけど。ヌードと言っても、裸をがっつりパンって見せるっていうよりも、いい感じに隠しつつ、っていうことだったから、布団を持ってきてもらって、それで適当に持ったり抱えたりして隠してもらって。そうしているうちに布団を引きずりながら壁に立っているような格好になって。

それがなんだろう、ウェディングドレスっぽく見えたんですね、私には。その瞬間、なんか。
この写真なんですけど、ウェディングドレスっぽいなと思って。

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綺麗で立派ななマンションに彼女が1人で住んでて、ベッドもこれは、シングルのベッドを二つ連結してあって、ダブルになってると思うんですけど。
そこに1人で寝て、1人で暮らしてて、この布団は布団だけでまだカバー買ってないとか言ってて。
真っ白な素朴な布団を待ってると、ウェディングドレスみたいに見えて。
旦那さんとのエピソードを聞いていたので、そういう印象が多分無意識にあったのかな。

それで、なんか、ウェディングドレスっぽいなと思って、ちょっと広げてみて、1枚撮った、っていう感じですね。

でもこの写真、顔が写ってないんですよね。
どういう表情かによっても、この写真の意味が変わってきそうですよね。
すごい悲しげな顔してるのか、にっこり穏やかに本しているのかで、写真の意味が変わっちゃいますね。

——実際には、どんな表情だったんですか。

どういう表情だったかな。なんか何とも言えない顔をしてたような気がするんですよね。
私はウェディングドレスに見えるなって思ってるんだけど、彼女的には、何を撮ってるんだろうっていう感じなんですよね。
布団を巻き巻きして、何か撮られてるなみたいな。

それで、この時に私が、旦那さんと結婚式はしたんですか? って聞いたんです。
結婚式はしてないですよ、っていう話をそれから聞いて。
旦那さんが醜形恐怖症っていうのもあるから、ウェディングとかも多分してないのかなとか思いながらシャッターをきっていました。撮影中一人で何か考えていることも多いかも。

そうなんですね、とか言いながら撮って。
撮りながら途中で、この写真はウェディングドレスみたいに私は見えたということをなんとなく伝えたくて、プレビュー画面を彼女に見せて、ちょっとドレスっぽくないですかって聞いてしたら
あぁ、それで結婚式の話を突然したんですね、みたいな会話のやり取りが、ありました。

他の撮影と比べて、結構違った気がするんですけど、どう違ったかって言われると、何がどう違うんだろう。

日常

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——私は、今までで一番素直な笑顔が撮られていると思いました。

確かに笑顔が多いかもしれないですね。柔らかい表情とか。
カラーもかなり多いし。
彼女の部屋にいる時は、普段と同じようにモノクロの設定で撮ったんですけど、後で現像するときに、白黒が何かしっくりこないというか、何か足りない感じになって、何か違うなってなって、どうしてもしっくりこなくて、結局ほとんどカラーに戻してしまったんですよね。
そうなんですよ、撮るとき全部モノクロで撮って、でもしっくりこなくて、カラーに戻してしまいましたね。

相手との距離がとれてるのかな。とれてるということなのかな。

自己投影してしまったり、どっちかがお互いに知り合おうとすると、何かちょっと、同化してきてしまったりして。
それは没頭できているということでもあるんだけど。
写真としては深さが出てよく見えるかもしれないけど、逆に第三者が被写体とカメラマンの関係性の間には入りづらくて、そういう意味では良くないかもしれない、みたいな。

そういうことも考えていて。
そういう意味では、やっぱり彼女の場所とか彼女の生活だったり、そこにもう少し距離を適切に取ろうとしているのかなっていう気がしますね。

撮る人と撮られる人の間は、どういった関係性が、どういった距離が一番なのかっていうことが、大事なことだと思うんですけど。
考えるだけでは難しいので、実際にやって試したり、考えたりしている段階なのかなって思いますね。

今回の撮影は、写真としては、やっぱり普段撮ってる作品からはちょっと逸脱してるし、安定してない、かな。
でも今の自分の気分っていうものに対しては、すごい彼女との関係は、心地よい距離感だったんですよね。

——前回のインタビューから、何人撮影されたんですか。

4人です。

最初は、別の人をインタビューのテーマにしようとしていたんですけど、一番新しく撮った彼女にしました。

他の方の写真も良かったんですよ。安野さんの写真もすごく良くって、いろんなものが撮れたんですけど。
撮影時間がかなり長かったっていうのもあるんですけど、8時間9時間ぐらい、バッテリーがなくなるまで彼女の一日を過ごしました。
彼女は途中で食事を作って、もう8時間9時間だから、お腹空きますよね、カレーと卵焼きを作って、作ってるとこも写真を撮って、彼女がそれを食べてるとこも写真を撮って、私もお腹空いたな、みたいな。

8時間とか9時間とかいたら、相手だけじゃなくて、自分もまた繕えなくなっていきますね。傾聴するということは自分は自分であって自分でないのでその限界を感じました。笑
面白かったですよ、不思議で。

——今回の写真は、そういう写真と、どう違ったんですかね。

今回の感じは、なんだろう、すごく普通の写真というか。
撮りたいって思ってた写真。

今までの写真とはちょっと何か違うなっていう。
でもそれが今一時的にそうなのか、また元に戻るのか、わかんないですね。

私達は、アーティストステートメントっていう文章を書くんですけど。アーティストとしての所信表明みたいな、マニフェストみたいなやつ。それをこの間、書いてたんですけど。

そこでキーワードになったのが、窓か鏡かっていうところで。
私はコロナ渦で病院で閉鎖的なとこにいたから、外に出ていろんなとこで、人と話したいって。
だから窓を開けて、外に出て繋がりに行きました。

そこで知らない人に会って、写真を撮ります。
だけど窓を開いて外に出たけど、自分の一部みたいなものを見つける鏡のように、自分が跳ね返ってきて。
自分はその人のことを知りたくて写真を撮りに行ったけど、その人の中に見つかる自分が返ってきちゃうみたいな。

窓を求めたのに、鏡で返ってきてしまった。
だから、鏡ではそこで孤立しちゃう。
だからここで自己完結しない、やっぱり窓から外に繋がって、もっと外に行かないとっていう気持ちがあるのね。

そういう過去との葛藤というか、せめぎ合いというか。
そういうのが文章を書きながら、すごいあるなって、そんな感じですね、今。

すいません、もう全然今日はまとまりがなくて。

——いや、今回一か月空けたじゃないですか。それは、あんまりインタビューで話したことが写真に影響しすぎるのもよくないなと思って。だから。
なので、インタビューの方向性が定まらない感じになるのは思惑通りで、良かったです。インタビューが中心ではないですからね。

本当に、予想通りふわふわしてしまったから、話しながら大丈夫かなって思って。

——大丈夫でしたよ。

ちょっとだけ疲れていて。モデルになりたい人でも、本当に自分にしか興味がない人もいて、ちょっと撮っててしんどかったなっていうのもあったりして。
なんだろう、コミュニケーションや関係性に興味があって撮っているから、向こうにも多少はカメラマンに対して興味がないと、ちょっと成立しないのかな、みたいな。

カメラマンの私への興味が向こうはゼロの状態で、モデルの自分を撮ってくださいっていうなると、
私の存在はほぼ三脚かな、みたいな。
そういうこととかが、ちょっといろいろあって。
そういう疲れた気持ちが、それで深く潜っていく撮影よりは、彼女の健康的な距離感というか、感覚に、何か心地いいなっていう。

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終わりに

普段のやや重たい心を抱えた撮影のほうになじんでいて、ややヘルシーな環境のほうに戸惑いを覚えてしまったり、人間は面白いな。

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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