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写真と人 Rulu-009 2024/01/24

今回は、ダミー本のお話と、Zoom撮影のお話。

まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

これまでの写真と人

1回目は2023/8/2に行われた。
 実際に行われたプロジェクトの撮影の様子を聞きつつ、撮影者と被写体の間に「ゆらぎ」があることを発見した。
 ゆらぎとは、撮影者が撮影に没頭し、それまで意識していた被写体である他人という存在を忘れ、ただシャッターを押し続ける状態のことを意味した。
2回目は2023/8/16に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞きつつ、引き続き、撮影者と被写体の間の「ゆらぎ」について聞いた。
 プロジェクトの始まったきっかけも聞いた。 
3回目は2023/8/30に行われた。
 実際に行われた新宿歌舞伎町の激しい撮影の様子を聞きつつ、Ruluさんの過去についてすこしふれた。
4回目は2023/9/13に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞いた。部屋での撮影だった。「ゆらぎ」が発生したかどうかについて聞いた。
 Ruluさんが過去に精神科に通院し、自由連想法のように言葉を紡いだ経験があることを聞いた。“単語がバラバラになって、文字がバラバラになって、洗濯機みたいになって、頭の中でぐるぐる回ってるみたいな感覚”
5回目は2023/9/26に行われた。
 実際に行われたプロジェクトの撮影の様子を聞いた。1回目の被写体と同じ被写体だった。撮影者と被写体について、詳しく聞いた。
6回目は2023/10/25に行われた。
 実際に行われた撮影の様子を聞いた。今回も部屋での撮影だった。
 Ruluさんが、「顔が写ってないんですよね」と言った。その他、窓や鏡といったモチーフの写真についても考察した。
7回目は2023/11/29に行われた。ダミーブック制作と、参加しているワークショップのお話を(ようやく)聞いた。
8回目は2023/12/20に行われた。一人の人を継続して追いかけるフォトプロジェクトを開始したことについて聞いた。

今回は、9回目で、2024/1/24に行われた。

まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)


存在の記録

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qbc:近況、どうですか?

Rulu:ダミーブックを引き続き製本したりしていました。
一応本にしてみたけど、テストの段階で。こうしようああしよう修正しようとか、ページを増やそうとかって、まだいろいろやってる所なんですけど。

イメージとしては、手帳のような感じ。親密感のあるサイズ感で。
ゴムバンドで、モレスキンみたいに留めるみたいなのを試しにやってみて。中身は貼り込みをしたりギミックを入れてます。

あとは最近、手紙を何人かの方に書いてもらえないかお願いをして、その手紙も含まれています。参加者の方が書いてくださった手書きの手紙なので、1冊しか作れません。スキャンして複製したものを新たに作ってみることになると思います。

4人の人をピックアップして載せた本になったんですけど、いざ製本してみると、ちょっと少ない気がしたので、もう1人2人ぐらい増やそうとしてますね。

qbc:手紙を入れるんですか。

Rulu:そうですね。一応、公開してもいいような形で、許可をもらった上で書いてもらって。手紙のコピーをして、一番最後にちょっと封筒みたいなのを貼り付けて、その中に入れて。本を読み終わった後に、そこから出すと、誰かの手紙が入ってるとか。

今現在では、2人の方の手紙が手元にある状態なので。
これをどう活用していこうかなって考えてるところですね。

qbc:どれくらい部数をお作りになる予定ですか?

Rulu:今は、そうですね。自分で製本して、例えば10冊とか20冊とか販売できる形で。はっきりした部数はまだちょっと何冊作れるかわかんないので。
1個1個手作りで作っていくので。例えば2000円で販売するっていうのはちょっと難しいので、値段が高くなってしまうから、オンデマンド印刷とかの、手に取りやすい価格帯の本も作るかとかも検討することになると思います。

qbc:本に手紙を入れるって、どういう感じになるんですかね。

Rulu:手紙を書いてくださいって、わざと、すごく曖昧にお願いをしたんですよね。
例えば私に手紙を書いてくださいとか、1年後の自分に手紙を書いてくださいとか、撮影後の感想を書いてくださいとか、何がいいかなと思ったんですけど。決めきれなかったから、公開してもいいっていう手紙を書いてくださいとだけ伝えたんですよ。

そしたらなんだろう、最初に撮影したときの変化を書いてくれた人もいるし、未来の自分に宛てた手紙を私に渡してくれた人もいるし。それはそれで、いろんな人の解釈がちょっと面白くて。そうなんですよ。

正直に手紙の中にも、「手紙を書いてくださいと言っても、誰に宛てた手紙なのかわからないけど、書いてみます」とかいうのもあって。いやそうだよねって思いながら。

あとはみんな、ちゃんと便箋に書いてくれるんだと思って、文字で。
今って何だろう、LINEとかテキストとかで書くから、便箋を持ってたのかなとか思いながら。

qbc:あ、みなさん手書きなんですね。

Rulu:そうですね、今のところみんな便箋に手書きで、2枚とか3枚とかびっしり書いてくれて。やっぱ手書きっていいなって思ってました。

手紙の渡され方も、撮影で会った人もいるし、私の家に切手を貼って送ってくれた人もいて。ポストに届くと、本当に手紙なと思ったりとか。そうですね。横書きのかわいい風もあれば、縦書きも。安野ゆり子さんとかは、縦書きですごい達筆で書いてくださいました。

でも読み返すと、そうだな。
やっぱり作品撮るだけ撮って、データをモデルさんに渡して、っていうとこだけで終わってるので。それがじゃあ一体自分にとってとか、彼女たちにとって何か意味があるのかなじゃないけど、何かになるのかなって。
やってることはすごいささやかなことを細々やってるみたいな感覚、でもそれが、やっぱり自分を振り返ることになったり。撮影してよかったって言ってくれる人もいるし。

最初は、なんかこう、割としんどいタイミングで連絡をくれて、写真を撮ってくださいって言ってくる人が多くて。そのときの話とか聞いてて、でも1年後に会って写真を撮ったら、すごく顔つきが違って、いい意味ですごく変わったなって思って。帰って手紙を読んだら、そうそう、そうなんだ、よかったねみたいな状況だったりとか。

写真を撮ったからっていうわけではないんですけど、そういう時を一瞬だけど自分が知れて、撮影の間の短い時間だけど一緒に過ごして、画像でも、その人の人生はずっとこう線で繋がって続いてるから、ちょっと感慨深いものがありますね。うん。

手紙って、なんか、その人の痕跡みたいなものがあるから。
今AIとかすごく何でもあって、いろんな、行ってない場所に行ったことにもできたりとか、写真とか加工もできるし。あとは逆に、死体の写真を生きてるみたいに撮ってる作家の人とかもいたりして、実在してるとか生きてるとか死んでる証明にならないよね、みたいな話を、撮影のときに、あるモデルさんとしてたことがあって。
それで30秒ずつぐらい動画を撮影中に撮るっていうことも時々やったりとか。

あとは、私が持っている取材のノートに、その人に何かを書いてもらう。
好きなこと書いてくださいとか、そこにキャラクターの落書きをする人とか、自分のプロフィールを書く人とかいろいろで、そのノートもすごく面白いんですけど。
そういうものがあると、インタビューも、AIにこういう人がいたとして、インタビューっぽい文章を書いてくださいとか言ったら、今って捏造で書けちゃいそうじゃないですか。

だからインタビューと静止画って、第三者の人が見たときに、まだどこか他人ごとというか、架空の小説の中の人物とか、アニメの中の第三者感がもしかしたら強いかもしれない。
だけど、そういう下手な落書きとか、綺麗な字の人ももちろんいるんですけど、そういう筆跡があったりとか、そのとき一緒にお茶をしたときの、例えばレシートが貼ってあったりとか。そういうのがあると、これは友達の中の誰かかもしれないし、自分のことかもしれないとか。自分と同じように実在してる人の中の1人なんだみたいな、実際に今存在してる感が強くなるんじゃないかなみたいな感じで。
そういう、その人の痕跡の素材みたいなのを集めたい、みたいな気持ちがあると思います。

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qbc:どうして、そんなに存在を記録することにこだわるんでしょう?

Rulu:うん。どうでしょう。
自分を振り返ると、なんで自分は写真に執着してるんだろうそもそも、みたいなことを考えてみたことがあって。
私、父親が結構ちっちゃいときに出ていってしまって、それで家族の写真がほとんどない。
お母さんと写っているとか、おばあちゃんと写っているとか、そういう写真なんですけど、父親が写ってる写真がほとんどなくて。でも、小さいときのアルバムにはあったんですよね。あったけど、母親が今度再婚しますってなったときに、父親が含まれる家族写真は外されるわけですよ。それで、無くなっていって。

父の記憶って、すごく、何だろう、そんなにはっきりはしてないので。
ほとんど、もうどんどん思い出せなくなっちゃうし。自分がいるから、母親だけからは生まれないので、父親がいるけど、その人の記憶の写真とか、うっすらした記憶の断片みたいなのもないから、その人が存在してるリアリティっていうのが全然なくって。

それで、それからまたさらにお父さんが変わって、みたいなことが何度かあって。その度にやっぱり、撮るけど無くなるみたいな。そう。
だから、家族アルバムとか、そういう写真に対する憧れとか執着みたいみたいなのがあって。

捨てちゃったら、もう取り返しつかないじゃないですか。
そこに戻って取り返すとか、やり直すっていうことができないから。やっぱりその時に行って、写真を撮っておくっていうことと、その写真を何らかの方法で残しておかないと、特に、その個人的な、ただの家族の写真なんて残っていかないので。
そういった意味で、今私達生きてるよねみたいな、存在してるよね、あったよねみたいな記録を残したいっていう執着心は、そういうとこから来てるのかもしれないと感じますね。

Zoom撮影

qbc:今回の撮影は、Zoomで撮られた? ってことでしたね。

Rulu:はい。そうですね。
Zoomで撮影をしました。普段は対面で会って、自分のデジタルカメラなり、フィルムカメラなりを持って、写真を撮るんですけど。今回はZoomで。
今もこうやってZoomでインタビューしてますけど、Zoomのビデオ画面を私がスクリーンショットを撮る、キャプチャーするっていう形で撮影をするっていうのをやってみて。

なんでそんなことしようと思ったのかっていうと、コロナ禍で、人と会うことができなかったときに、カメラマンの人とかモデルの人とかもやっぱり、直接撮影も最低限しかできなかったので、結構影響があったらしいんですね。
その頃、私は看護師をしてたので、そのことは全く知らなかったんですけど。そして撮影ができないから、Zoomで撮影をしてたっていう話を聞いたんですよ。

コロナ禍でみんな仕事もなくなって、家にいて暇だけど、時間あるから今こそ写真を撮りたいけど、会うわけにはいかない。でも写真を撮りたいって言って、Zoom撮影っていうのをやってたよっていう話を聞いて。何それ変なのと思って、ちょっと詳しく聞いて。

最初話を聞いたときは、そこまでして撮りたいかなみたいなっていう気持ちもあり、だって画面越しでしょみたいな感じだったんですけど。
でも、よくわかんないけど、人がそうやって会えないときに、Zoom使ってでも写真を撮影してたっていうのは面白いと思ったし。私は病院で働いてて、全く知らない間に、一部でそういうことが起こっていて。でも今はすっかり消えてるわけですけど、直接会えるようになったので。でも、1回ちょっと経験としてやってみたいなって思って。

その話をしていたら、私は福岡出身なんですけど、福岡に行ったときに写真を何回か撮らせてもらったことがある女の子が、私でよかったら、お試しとか実験みたいな感覚でいいから撮ってみる? って言われて。じゃあちょっとやってみていい? っていうことで、撮ることになりました。きっかけとしてはそんな感じですね。

qbc:なるほど。

Rulu:それで撮ったのが11月5日なんですけど。写真でいうと、男性と女性が写っているやつになります。この女性の方が、福岡のときに何回か写真を撮らせてくれた女の子で。なのでこの2人は、このときも福岡にいて。私は東京にいて、遠隔地なので、会うのはちょっと大変なんだけど、Zoomだからすぐというか、時間さえ合えばできるんで。時間合わせて、写真を撮ってっていう感じで。

特に1枚目とかは、この方のパートナーの彼氏さん、男性の方は、Zoom自体初めてだったみたいで。こっから見えてんの映ってんのみたいな質問で、向こうには私のビデオの方も見えてるような感じで。

qbc:これは、PCのカメラを使ってるんですよね?

Rulu:そうですね。私はPCの内蔵カメラで、彼女たちはスマートフォンですね。
スマートフォンを、どこか部屋の立てかけられるようなところに置いて、その前に2人座って。最初は、初めましてとかこんにちはとか、普通に通話みたいな感じでやって。その状態だと、本当にZoomで喋っている画面、よくある普通のカメラに向かって喋ってる普通の写真になっちゃうので。2人いるので、自撮りするみたいな感じで持ったりとか、お互いにお互いを撮りあうっていうのをやってみて、って言って、撮ってもらったのがその後の写真。

qbc:あーなるほど。

Rulu:ちょっと背景がいろいろ映って気になるから、後ろにあるその辺のものをちょっとどかせる? って言って、わかったって言って、ガサゴソガサゴソどかしてもらって。そうやって最初喋って。そのまま並んでてもいいけど、もうちょっと動きとかあった方がいいからって言って。そしたら、1人がスマホ持って、普通に相手を写真撮るみたいな感じで、構えて、ちょっといろんな角度から動かして見てもらえる? って言って。

あと、そこだとちょっと光が入らなくて暗いから、部屋の電気は消してもらって、光が入るのはどこですかって聞いて。ベランダ側の窓のところから自然光が入るって言ったら、そこにちょっと寄ってもらって。
でも光を背景にしちゃうと逆光になって真っ黒になっちゃうから、光を顔に浴びるような感じで、ちょっと立ってもらって。あとはちょっとお互い好きな感じにしてとか。休憩挟んで、でもしばらくするとちょっと慣れてきて、お互い好きなようにやって。

2人並んでるときとかだったら、こっちから見たら結構離れて見えるからもうちょっと近寄ってとか。休憩して戻ってきたら2人ゴロンとしてたので、それ面白いからちょっとそのままで、続けて撮ってくださいみたいな、という感じです。

Zoom撮影っていうのを体験として、1回目やったって感じだったので。こんな感じかとか、下からじゃなくても、もうちょっと気持ち上からとか、結構、自分で対面して撮ってるときは、何にも考えず気にせず構えずパパパパパッてスナップ的に撮ってるつもりだったんですけど。

こうして見ると、左上の余白がすごい気になるとか、結構意識してないような、数秒の間にも結構いろんなことを考えて撮ってるんだなと思いました。
自分で対面で撮るのとはやっぱり違う難しさがあるので。これでやっぱりイメージ通りに撮るとか、心の動いた瞬間を、またぐっとその瞬間も反射的に寄っていってバババッて撮るとか、こういったことは難しい。やっぱりその画面を隔てた距離っていうのが、絶対的にあるので、難しいですね。

人の記録

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Rulu:もう1人は、前回登場してもらった夕希さんという方で、この方も福岡時代からの友人だけど、東京に引っ越してきていて。今年は1年間彼女を撮ろうと思ってるので、2024年の1回目の撮影で会って。私がやっているプロジェクトが好きなんだったら、好きなところに連れて行ってくださいっていうことなので、彼女の好きな場所からスタートしようかなって思ったんですけど、場所に思い入れがないから好きな場所って言われても思いつかないって言われて、そっかってなって。

で、彼女も、私が最近Zoomにそうやって興味を持って撮ったことを知っていたので、じゃあZoomしてみる? って言って、Zoomすることになって。1番目はお互いの部屋から撮影にしましょうって言って。

Zoom撮影が2回目なので、前回よりは、少しは慣れたというか。結構やっぱり細かく言うとか、なんだろう。自分の自撮りだと、自分の顔のドアップとかなかなか撮らないので、もっと寄って寄ってっていうことを言ってた気がする。ダイナミックにグワッて寄るみたいなことを、自撮りではあんまりそうしないので。そういう部分を、自撮りしてる感覚でいつつ、もうちょっと寄ってって言って。彼女もちょっとイメージを予習してくれたみたいで。そうですね、それでなんとかかんとか撮って、っていう感じですね。

qbc:このお写真は、Ruluさんが白黒にしているんですよね?

Rulu:そうですそうです、私が白黒にしてますね。
ただやっぱり解像度が足りないので。そんなに細かい階調っていうのは出ないんですけど。だから逆に、その画質の粗さを生かすのをちょっと面白がって、2階調まではいかないけど、結構コントラスト飛ばして、階調はもう関係ないような感じにしてみたらどうかっていう形で。

編集はまだ試行錯誤しているところですね。細かい質感とか、やっぱ難しいですね。ビデオでRECしてるときは、そんなに画質が気になったことはなかったけど、こうして撮って、こうして見ると、やっぱりすぐ画像が破綻しちゃうというか、そういう部分の難しさもありますね。

qbc:あー確かに。のっぺりしてますね。私は言われないと気づかなかったですけども。

Rulu:あとは切り取ってない普通のカラーの、自分も写ってて本当にZoomのミーティング画面みたいなやつを残してるんですけど、これはこれで何か面白いなと思って。
いたって普通と言えば普通なんですけど。ただなんか逆に言えば、お互いに例えばカメラを持って撮りあってもらうとか自撮りで構えてもらうのって、なんだろう、私撮ったことないみたいな、何回かこの彼女たちを撮影したことあるけど、こういう表情とかこういう角度の顔を見たことないなとか、こんなにすごいよく笑うんだとか、写真撮ってるときはお互いすごく真剣になって、バチバチに睨み合ってたりとかするので。Zoomだと結構和やかな、すごく日常に近いのかもしれないですね。

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qbc:ゆらぎはありましたか? 没入感は。

Rulu:没入感でいうとやっぱり、距離とか空気感とかそのときの、何だろう、風がバーッて吹いてるとか光がバーッて射してとか、そういうものとかも一切ないので。そういった意味でやっぱ撮影の没入感っていうのはなかなか得られないんだけど。

ただその、ゆらぎではなくて記録、彼女たちの個人の記録とか個人のパーソナリティっていう面では、撮影っていう決められた空間の中では記録できないものが残せるんだなっていう感じはありましたね。

自分の家にいて、リラックスした状態で、あとは向こうからの視線っていうのも、無機質なレンズに向かってたりとかするというよりは、画面の向こうの友人に向けられる眼差しであったりとか。だから、どっちが正しいとかはないんですけど、彼女たちにとってのあり方により近いのは、こっちなんだろうなみたいな。そのあり方の違いに対して、なんかこう、モヤモヤしてますね。

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qbc:あー確かに。和やかな空気はありますね。

Rulu:和やか、そうですね。自然体。
あと、実はその男性と女性の撮影を、大体2ヶ月ちょっと前ぐらいに撮影をしたんですけど。実はその1ヶ月後ぐらいに、彼女のパートナーの、この男性の方が亡くなったんですよ。

そう言ったこともあったので、手段を問わずにじゃないけど、直接福岡にいるとかだったら福岡で撮ればいいんですけど、次福岡行ったときねとかって先延ばしにしてたら、彼の写真を残せなかったんだなって思ったりとか。そのことがあったから、多分余計に、作品としてどうこうしていくのはやっぱり難しいかもしれないけど、記録した、残したっていうことに対する何かが、自分の中にあるんですよね。

qbc:急ですね。事故死です?

Rulu:事故じゃなくて、元々がんを患っていて。がんももうステージ4で、リンパ節転移もあって、ちょっと場所的に手術も難しいような状態になってるから、抗がん剤治療をしたり。でも何でしょう、手術ができないからいずれはみたいな、元々そういう状態で。彼は彼女の婚約者でっていう状態で。

そういう話を聞いてて、パートナーもよかったら一緒にって言って、ぜひって言って撮らせて、その後急に、抗がん剤のおかげか何かわかんないんですけど、ちょっと状態が良くなったから、もしかしたら手術ができるかもっていう状態になって。12月の上旬に入院して、手術をしたんですけど、やっぱり出血もすごい多かったし、手術ももう14時間ぐらいかかった大手術で、その後、自発呼吸もすぐにはできなくて、人工呼吸器でICUに5日間ぐらい入ってて。彼女は全然、相方いつまで寝てるんだみたいな、いないんだけど、みたいなことを言っていて、でも5日目6日目ぐらいに亡くなったっていう話を聞いて。

でも写真見る限りはすごく元気そうで。
すごい痩せてるわけでもないし、この日も撮影終わった後ランニングに行ったぐらい、すごく元気で。でも、遺族の方にカラーで、スクリーンを切り取っただけのものを彼女に渡してたので、彼女から遺族の方に渡してくれて、喜んでもらえたって話を聞いて。作品になるならないとかじゃなくても、タイミングで、この彼がこの時にこんなに元気で、ガンつけあったりとか、ふざけながら写真撮ってる元気な姿を残せて良かったのかな、やっぱり写真全然ないと寂しいかなって思うんですよね、っていうことがあり。ちょっとしんみりしちゃうんですけど。はい、そういう感じでした。

なので、今思うと、逆にコロナからしばらく経って、急にそんなことを思いついて、彼女が撮っていいよって言ってくれて、彼と一緒に撮って、何てタイミングだったんだろうっていう、なんでそんな急に思いついてそんなことしたのかって、そういう不思議な感じがしますね。

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終わりに

このインタビューをしていて、8回目ともなり、10時間近く話したな、と思っていると、あぜんぜんまだまだ相手のことを知らんよな、と思い違いに気づく、くらいの領域にやってきました。
そもそも、「写真と人」の関係性について聞いていくので、個人名で表される人についてはあまりふれないようにしてインタビューしているのですが、結局、撮影という行為の意味を、その人個人そのものに求めていってしまうものですね。
人間はほら、物語としてしか出来事を理解できないからね。

編集:なずなはな(ライター)

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

過去の写真と人はこちらから読めます!

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