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元メンズエステセラピストの人

最近ずっと私qbcの頭の中を支配しているのは、人間の性格って変わらないということで。
そりゃまあね、怠惰だった人が急にキビキビしだしたりすることもありますよ。でも、外側から見てガラっと変わったように見えていても、本人の性格は実は変わってないとか。それくらい、性格、遺伝子の力ってほんとに強力なんだろうなと思って。
なんか、個性って言って、人々は自分の趣味とか価値観をつけようようとしてるけど、なんかそれもほとんど性格で決まっちゃうから、個性はつけるもの、作るものというか、発見するものだよね。
って視点で考えると、環境ってやっぱめちゃくちゃ大事だなって。
仮に性格として、静かな空間が好きってことがあるとするじゃない。でも、生まれた時から騒々しい環境にいたら、その性格特性に気づかないんですよね。知らないから。
っって視点で考えると、つまり自分の性格を満足させる環境にぶちあたるまで、さまようのがいいのかもしれないね。さまよえるかぎりね。きっと、そうしている間に、人生は終わってしまうのだろうし。
と思う2024年4月7日10時49分に書く無名人インタビュー723回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】

今回ご参加いただいたのは 物書きセラピスト りな さんです!

年齢:30代前半
性別:女性
職業:元メンズエステセラピスト


現在:メンズエステを最近辞めて、次の仕事を探している人です。

くじらぐも:今、何をしている人ですか。

りな:メンズエステを最近辞めて、次の仕事を探している人です。

くじらぐも:今は、何をして過ごすことが多いですか?

りな:犬の散歩とか、家の片付けとか。あと本を読んだりもしてますね。

くじらぐも:趣味は?

りな:謎解き、パズル、読書です。あとは英語の勉強ですね。

くじらぐも:メンズエステは長く勤められたんですか。

りな:2年ぐらいですかね。

くじらぐも:辞めたきっかけは?

りな:メンズエステって、夜の仕事なんです。時間帯は普通にお昼だったりするんですけど、ジャンル的には夜職というか、水商売に近いところがあるんですよね。男性しか来ないマッサージのお店なので、人間関係で独特のしんどさみたいなのがありました。
そもそも長く続けるかどうか悩んでたんですけど、お店のオーナー兼店長とうまくいかなくなって辞めました。

くじらぐも:なるほど。私があまりメンズエステのお仕事に詳しくないので……。

りな:そうですよね(笑)女性は特に縁がないですよね。
基本的には密室で、男性と一対一でオイルマッサージをするんですけど。

くじらぐも:はい。

りな:うちの店もだし、どこでも基本は変わらないと思うんですが、薄暗い照明の中で行うオイルマッサージなんです。リラクゼーションのサービスではありつつ、業界的にちょっとグレーゾーンな感じで。性的な興奮を煽るのは基本的にNGなんですけど、やっぱりそういうところを期待して来るお客様は多いですね。

くじらぐも:なるほど。

りな:お客様には紙パンツ1枚になってもらって、指圧やオイルを使ったマッサージをするんですけど、女性と一対一なので……。
お客様が風俗ではなくメンズエステに来るっていうのは、「本当は駄目だけど、マッサージのその先で何かサービスをしてもらえる」みたいなのを付加価値に感じてる心理もあるのかなと思っていて。
料金も風俗に比べて安かったり、”他の人にはしていないサービスを、自分だけが受ける特別感”みたいなものを味わえたり……そういうことを期待して来る人が多いのかなと思っています。

くじらぐも:うんうん。

りな:もちろん良いお客さんもいるんですけど、お店側で提供していないサービスを求めてくる人も一定数います。
お店やセラピストの女の子といったサービス提供側があまり明確にラインを引き切れていないので、何でもあり!みたいになっちゃってて。なので結構難しいといいますか。

くじらぐも:たしかに。

りな:例えばわかりやすく言うと、お寿司屋さんならお寿司を提供する、パスタ屋さんならパスタを提供する、って感じで明確なんですけど、メンズエステはそこまではっきり分け切れていない部分があるので。
お店側としては、「うちはお寿司屋さんです、それ以外は提供しません」って言っていても、業界的に他のお寿司屋さんが普通にパスタを提供してたりすると、「看板なんて建前でしょ?暗黙の了解で何でもアリなんでしょ?」って思ってお寿司以外を目当てにくるお客さんが増えてくる…みたいな。そもそもお寿司って何だっけ?お寿司の定義は?どこからどこまでがお寿司?みたいな。
掲げている看板と実際の内容が違うっていうことがよくあるので、ぐちゃぐちゃになってる業界ではありますね。
だから、お客様側の求めてるものをこちらが把握しにくいというか、誰が悪いかっていうのも正直難しいんです。
私は元々、何も知らずにこの業界に入ったタイプなんですけど。

くじらぐも:そうなんですね。

りな:はい。私は夜の世界の経験がなかったのですが、知り合いを通してメンズエステの
オーナーと出会い、誘われたのがきっかけです。仕事を探しているタイミングもあったので、ちょっとやってみようかなって軽い気持ちで始めました。
メンズエステが何かよくわからないまま飛び込んで、初めての世界で半ば茫然としながらスタートしたので、いろいろと体験しながら、本来のメンズエステのサービスと、業界の「本音と建前」みたいなものを少しずつ知っていった感じです。

くじらぐも:なるほど。

りな:そこから続けてみたものの、本当に何も知らずに入ったので、最初はお店の言うことが良くも悪くも全てというか。何を言われても、そういうものなんだ、って。
それで、最初は現状を疑ったり客観的に見たりはできなかったんですが、ある時から、この独特な世界の裏側や実態みたいなことを発信するようになったんです。

くじらぐも:具体的には、どんなことを?

りな:noteXを使って、メンズエステのセラピストとして何を考えて仕事をしているか、などを匿名で発信し始めました。
そうすると、色々なセラピストさんやお客様の声も聞けるようになって。改めて自分の仕事を客観的に見るようになりましたね。
メンズエステを続けるべきかどうかを考えるようになったのは、この発信がきっかけかなと思います。

くじらぐも:発信をしている内容は、どんなことが多いんですか?

りな:お客様とのやり取りとか、こんなお客様がいる、みたいなことも書きますが、私がメインに発信してるテーマは「男性と女性の考え方の違い」です。
女性は男性と比べて愛想良くするのが得意で、相手のことが好きとか嫌いとか関係なくニコニコできてしまう生き物なのかな、と私は思っていて。それで得することもあれば損することもあって。
実際社会に出てもそういう愛嬌を求められる部分も少なからずあるし、普通の職場でもそうじゃないですか?会社員だったとして、上司や同僚の男性にそんなに冷たくできないですよね。

くじらぐも:たしかに。

りな:同僚として仲良くする分には仕事もやりやすくなるし、わざわざ嫌われる必要もないし、普通に人として誠意を持って接しているだけだったりして。でも、その愛想の良さや好意的なコミュニケーションって、男性からすると「性的にOK」みたいに受け取られやすくて(笑)これ、ワンチャンいけるのかな?って思われてしまったりするんですよね。極端なケースだと、女性側としては相手を嫌っている場合ですら。
好きじゃないなら優しくするなよ、って女性側に言うのは酷です。愛想の良さを求められてるのに、愛想良くすると勘違いされるっていうのは、よく聞くトラブルで、そのはざまで苦しんでる女性は多いような気がします。もちろん、ちゃんと分かってくれてる男性もいるし、あまりにも人との距離が近い女性もいるので、必ずしも男性が悪いって言いたいわけじゃないです。ただその線引きって難しいなと思うし、そもそも男女で捉え方ってかなり違うんだな、と感じています。

くじらぐも:なるほど。

りな:逆に言うと男性自身は、自分が「この女の子と恋愛してもいいな」と思っていない場合、相手の異性に対してそこまで愛想良くしない人が多い。営業職の男性は別として、一般的に女性と比べて分かりやすい人が多いですよね。夜の世界を体験して、その事実をより強く感じました。まぁ、恋愛といっても体の関係だけを求めるケースも含むので難しいんですけど……。
一対一でお客様と接する中であえて勘違いさせるような営業の仕方をするセラピストももちろんいますし、やっぱり自分を売り込む営業みたいな側面のある仕事ではあるので「好きじゃないけど好きなフリをする」とかはよくあることなんですが。

くじらぐも:うんうん。

りな:指名してくれるお客様も、ただ癒されたいとか、単純にマッサージが気に入っているだけの方もいて、必ずしも女の子に恋愛を求めているとは限らないんです。
なので付き合いたいと思って私を指名している人ばかりではないのは分かってました。私の営業スタイルは本気で恋してもらう方向性ではなかったので、勘違いさせよう、っていうやり方は私はしてなくて。

くじらぐも:はい。

りな:でも、夜の世界をあまり経験してない男性は、それでもちょっとしたことで期待してしまったりもしますし……。まぁ薄暗い密室で女性と密着しているというシチュエーションが、そもそもかなり特殊で、勘違いさせようとしてるとも言えますよね(笑)
そんな一喜一憂もドキドキも全部含めて楽しめる精神的に大人な人はいいんですが、そうじゃなくて「騙された」とかってなってしまうと、こちらとしても申し訳ないしトラブルになってしまうので、難しいところですよね。

くじらぐも:なるほど。

りな:少し話がそれてしまいましたが、質問に戻ると「何を発信してるか」ですよね。

くじらぐも:はい。

りな:そういう体験を通じて感じた「男女の心理の違い」とか、「男性はこういうときにこう思うけど、女性はこう思ってこういう行動をしている」みたいなことを書いています。
私の発信してるアカウントのフォロワーさんは、多分男性が多いんですよね。
直接会ったことはないですが、メンズエステに通っている方とか、メンズエステの女の子に恋をしてしまった方とか、そういう方々の恋愛相談を受けることも多いです。
セラピストの立場から、「おそらくその女の子はこう思ってるんじゃないか?」というアドバイスをしたり、セラピストさんに恋をするのはもちろん良いけど、難しいところもあるっていう話をしたり。
とはいえお客様とセラピストさんの恋愛も絶対ないわけではないので、本気ならこういう方法で相手の気持ちを確かめてみては?という内容を発信することもあります。

くじらぐも:一番反響があった記事はどんな内容ですか?

りな:「女性がどういうときに体を許すのか」という記事が、今までで一番アクセスが多いですね。

くじらぐも:メンズエステのお仕事をしていて、つらかったことは?

りな:家族や友達に理解してもらうのは難しいかなと思い、周りに言えていなかったことです。どうしても理解されにくい仕事ではあるので……。
そうなると、つらいことがあっても相談できる人がいないので、それはシンプルにつらいですね。
とはいえ、ネガティブに思われるのをわかった上で赤裸々に話そうと思うかというと、そこまででもない。その結果、孤独でした。
お店の同僚の女の子とも、ライバル的な側面があるからかトラブルになりやすいらしく、変に仲良くしないように言われていたので一定の距離を保っていたし、オーナーは男性だったので、どうしても心に寄り添ってはくれないし……。仕事として必要な連絡はお互い取っていたけど、気持ちのフォローをしてくれる人ではなかったので。
悩みがあっても言える人がいない状況がつらかったですね。

くじらぐも:なるほど。

りな:あとはやはり、後ろめたさも多少はあって。たしかに夜の仕事に需要はあると思いますが、これまで関わることがない世界だったので。
現場に入ってやっと、特別な世界じゃなくて普通の男性が普通に利用するものなんだなって感じました。男性にとってはほんと日常の一部というか。お客様には既婚者もいますし、独身で彼女がいる人もいますし、それとこれとは別、みたいな感じで利用する人も結構多かったので。
需要はあるし必要とされてはいるけど、やっぱり日が当たらない仕事だなっていうのは感じていました。自分自身の孤独や後ろめたさ、罪悪感みたいなものも背負いながら、なかなか認められにくい仕事であるという事実を考えると、やはりしんどかったですね。

くじらぐも:なるほど。

りな:さすがにここでは口にできない、もっと生々しいこともいっぱいあるんですけど(笑)
お客様はお金を払ってサービスを受けに来ているわけですけど、対等に接してくれるお客様もいれば、どこかこちらを見下しているような態度の方もいるので。
だから、”人間扱いされない”っていうのは大袈裟かもしれませんが、セラピストの気持ちを考えない行動をする人はいます。そういうお客様からしたらプライベートの関係ではない私に嫌われたとしても困りはしない、そういう切り捨てられる人間関係って感じなのかな、と。
心の繋がりを求めてくれている人は私に興味を持って話してくれますが、そうじゃない人は返事もしない、とかザラにあります。色々なお客様がいましたね。
新規のお客様はどうしても、”気になるお店にとりあえず行ってみて、指名せずセラピストと会ってマッサージを受ける”っていう形になりますよね、そうなると思ってた感じと違った、タイプじゃないってことも当然あり得ますし、お客様としても思うところがあるんでしょうけど(笑)
私が好みじゃなかったのか、人見知りなのか、機嫌が悪いのか分かりませんが、そういう不機嫌な様子を露骨に出す方がいるのは大変ですね。

くじらぐも:なるほど。

りな:普通にマッサージを受けて大人しく帰ってくれればいいんですけど、一対一で密室にいるので、露骨に不機嫌な感じを出されると私たちとしても気まずいし、しんどい。
極端な人で言うと、イメージと違ったのか偵察なのかわかりませんが、玄関で帰ってしまう人もいて(笑)
こういうお店はホームページに顔を出すことはできないので、うちのお店ではキャミソール姿で撮影した首から下の少しセクシーな写真を出していて。年齢などは載せていますが、会ってみたらイメージが違った、っていうのも勿論あるでしょうね。指名料を節約してフリーでとりあえず予約する、っていう人もいるので。
風俗では、ホテルなどにお邪魔してイメージと違ったら他の女の子に変更ができる『チェンジ』っていう有料のサービスがあるらしいんですけど、メンズエステにはそういうシステムがないんですよね。

くじらぐも:うんうん。

りな:でも、私たちセラピストにできることは一生懸命マッサージすることしかなくて。どうしようもないですよね。思ってたのと違った、って言われても。「外れを引くのが嫌なら事前に吟味して指名する」という世界だと思うんですが、どうしても新しい人は会ってみないとわからないので、指名すると言ってもお客様からしたらギャンブルのようになってしまうんです。
仕方のないことだと理解してはいますが、顔を見て帰られたらこちらもショックですし、予約していたのに帰られてしまったらもちろんお金も支払われず、その時間は穴が開いてしまいます。
お店の対応としてそういうお客様は出禁にするんですけど、やっぱりこちらは悲しい気持ちになりますよね。

くじらぐも:たしかに……。

りな:ただ、やりがいを感じているところもあったので、2年間は続けたんですよね。
お昼の仕事のように「朝出勤して夜帰る」みたいな決まったルーティンよりも、融通が利くスケジュールの方が私には合っていた、というのも大きかったです。
基本的にお店は昼から夜の営業だったので、だいたいお昼1時から夜12時ぐらいまでお店に出ていました。予約が入ってないときは、お給料が発生しない分、のんびりできる感じでしたね。

くじらぐも:なるほど。

りな:色々な理由はあれど、”自分を指名してくれる”っていうのは一つの自信になったので、それは仕事のやりがいに繋がっていました。
何度も会っていたら当然仲良くなりますし、マッサージ自体は完全未経験だったんですけど、どうせやるならと思って自分で勉強して、体に触れたら「この辺をほぐしてあげた方がいいな」というのがわかるようになりましたし。
そうすると、意外にも性的な要求よりも、「マッサージ自体が気持ちいいから」という理由で、疲れたときに利用してくれる人が増えてきたんです。
こういうお客様がいたことで、やりがいを感じていました。人として必要とされている感じがしたので。

くじらぐも:うんうん。

りな:仕事が忙しいけれど、出張の合間で時間が空いたら必ずマッサージを受けに来てくれるお客様もいて。男女ではあるけれど、それだけじゃない繋がりを感じましたね。本当に色々な人がいて、色々な人生があるんだなと。
年齢も様々だったので、若い人もいれば40〜50代、それ以上の人もいて。自分で会社をして稼いでる、みたいな人も多かったですし、色々な興味深い話を聞かせてもらいました。
この仕事をしていなかったら知らないような人生の一部分を体験できたというか、見聞きできた時間はとても面白く、考えさせられましたね。

過去:お金があるに越したことはないと思うし、どうせなら多い方が良いと思いつつも、やっぱりやりがいのある仕事というか、自分を嫌いにならない仕事がしたい。

くじらぐも:子供の頃は、どんなお子さんでしたか。

りな:自分が覚えていたり親から言われた範囲で言うと、元々引っ込み思案というか、おとなしいタイプで、自己主張するタイプではなかったみたいですね。
幼稚園や小学校ぐらいから一人で本を読んでいることが多く、自分から話しかけに行くのは苦手でしたし、人間関係は受け身な感じでした。
勉強とか読書とか、自分一人で完結することに関しては好奇心があったのかなと。

くじらぐも:勉強は得意なタイプでしたか?

りな:得意でした。宿題も苦ではなかったですし、英語も習っていました。英会話というよりは書いたり読んだりする塾だったんですけど。
算数もパズルみたいだなと思っていて、得意でした。

くじらぐも:なるほど。昔から本を読むのがお好きだったんですね。

りな:そうですね。母子手帳には、4歳ぐらいから文字を読めていたと書いてありました。父母も本が好きで、よく図書館に連れていってくれましたし、私にとっての娯楽はゲームより読書だったんだろうなと思います。

くじらぐも:ご両親はどんな方ですか?

りな:父は一人っ子ということもあり結構自由というか、大雑把というか。子供みたいなところがある人ですね。フットワークが軽いのかな。
母は真面目で、人付き合いはあまり得意じゃない人だったのかなという感じがしていて、友達とも狭く深く付き合う人なのかなと。私を産んで家庭に入り、仕事も辞めたので、専業主婦歴が長かったのかなと思います。
健康志向で、海外から輸入したお肉や着色料を使ってるものはできるだけ食べないとか、電子レンジも携帯電話も使わないとか、そういうこだわりがある人でした。昔は家にエアコンがなくて、扇風機とかストーブを使っていました。私を産んでから、子育てとか健康について調べてくれたんだろうなとは思うんですが。
なので私も、体にいいものを調べたり食べ物に気をつけるようになったので、影響を受けてるなと思います。

くじらぐも:なるほど。

りな:節約節約!という感じもあったので、子どもながらに「お金を使うのは良くないことなんだ」と思ってたりもして。
弟が2人いて長女だったということもあり、わがまま言っちゃ駄目だとか、親にお金を使わせすぎたら駄目だ、と小学校のときから感じていた記憶がありますね。

くじらぐも:ご両親と自分で、似てると思うところはありますか?

りな:母のせっかちで片付けが苦手なところは、私も似てるのかなと思っています。
大人になって、女性としての不安もわかるようになったからこそ、共感する部分もありますが。
性格としては、大人になってからの私は母よりも社交的になったかなと感じますが、元々はおとなしくて人見知りするタイプなので、そこは似ているのかなと。
父と似ているところで言うと、ちょっと大雑把で自由なところとか、行動力はあるけど何も考えずに動いちゃうところとか、衝動買いしてしまうところとか。その辺りは似ているのかなと思います。

くじらぐも:なるほど。学生時代に継続して頑張っていたことや、打ち込んでいたことはありますか?

りな:吹奏楽部でトランペットをしていたんですけど、中高の6年ほど続けました。あとは英語の勉強ですかね、半分趣味みたいな感じで継続していましたね。
その他だと、文字を書くのが好きだったので日記を書いたりとか、友達と文通したりとか。これは昔も今もやっていて、何かあればノートに書いて考えをまとめています。
あと継続していることで言うと、読書ですかね。

くじらぐも:子供の頃で一番印象に残っていることや、ターニングポイントだったなと思う出来事ってありますか?

りな:私が小学生の高学年ぐらいから、父と母の仲が良くなくて。結局離婚をしたんですけど、家庭内別居みたいな期間が長かったんです。
私が本当に小さい頃は仲が良かった気がするんですが、後の記憶の方が強くて、仲が良かったことはもうあまり覚えていないくらい。家の中にお互いを嫌っている二人がいるという記憶が強くあります、早く離婚すればいいのにと思っていましたね。
だから、「元々他人だった二人が一緒に住んで、家庭を作って、子供を作る」というのはすごく難しいんだなと、割と小さい頃から感じていました。異性の違いもありますしね。
ターニングポイントになったかはわからないですが、「幸せな結婚」というのは難易度が高いのかも、という感覚はうっすら持っていて。これは、私の恋愛感というか人生観に影響を与えている気がします。

くじらぐも:なるほど。

りな:あとは、父の仕事の関係で引っ越しが多かったです。新しい地域や家に住むのは新鮮で楽しさもあったのですが、友達との別れは寂しさもありました。どうしようもないことなので、割り切っていたんですが。
新しい環境に移る刺激を楽しむと同時に、人間関係がなかなか続かないというか、仲良くなった人と離れても仕方ない、みたいな感情が強くありましたね。なんだかある意味薄情というか、冷めてるというか。今もこういう、相手に期待しないみたいなちょっと冷めた性質が若干あるので、もしかしたらこういう経験が影響しているのかもしれないです。

くじらぐも:高校卒業後は、どのような進路を?

りな:受験をして大学に行き、卒業後は色々な仕事をしました。
転職を繰り返していたので、事務職で正社員をしていたときもあったし、パートや契約社員だったこともありました。英会話や学習塾の講師もやったし、翻訳などの英語に関わる仕事もしていました。

くじらぐも:りなさんにとって、仕事とはどんなものですか?

りな:生活するためには、お金が必要です。なので自分や家族が生きていくために仕事をしてお金を稼ぐ、っていうのはもちろん大切なんですけど、だからといってお金のために何でもしようとは思わなくて。
犯罪までいかなくても、グレーな仕事っていっぱいあるな……とニュースを見ていて感じます。

くじらぐも:はい。

りな:お金があるに越したことはないと思うし、どうせなら多い方が良いと思いつつも、やっぱりやりがいのある仕事というか、自分を嫌いにならない仕事がしたい。
その仕事で誰かに喜んでもらえたり、直接お客様と関わらなくても何かの役に立ったり、貢献できる仕事が良いなと思います。
あとは自分に向いてるというか、続けていて苦にならない環境でやっていけたらいいなと思うのが「仕事」ですかね。
特に女性は、結婚して家庭に入って専業主婦をする、みたいな選択肢もあるなとは思いますが、今の時代は何があるかもわからないし、自分でも仕事はしていたいなと思います。
でも、私の性格的に、がっちり縛られたスケジュールで正社員として雇用されるのはあまり
向いていない気もするので、ゆったりと自由度の高い形で仕事をしたいなと思っています。

くじらぐも:これから仕事を探すうえでは、そこが大事になりそうでしょうか?

りな:そうですね。コロナもあってリモートワークの形態も増えているので。
自由度が高い分、成果で評価される形になりやすいかもしれないですが、それでもいいかなと思っています。
時給というよりは成果を出した分だけ報酬がもらえる形で、時間や場所に縛られず、自分でスケジュールを立ててやるべきことをやっていける仕事がいいなと思っています。

くじらぐも:なるほど。りなさんの好きなことは何ですか?

りな:美味しいものを食べたり、興味のあることをとことん調べたり、謎解きパズルとかですかね。
同じ日常のルーティンが苦手で、刺激が欲しいと思うタイプなので、イベントやお祭り、パーティーみたいなことも好きですし、そういう非日常な特別感も好きですかね。

未来:黒歴史とか、消したい過去だと思ってるわけではなくて、それはそれで私の過去であり、体験なので。良くも悪くも自分の人生の一部だと認めて生きていこうと思っています。

くじらぐも:5年後10年後、あるいは死ぬときまで想像してみて、未来についてどんなイメージを持たれますか?

りな:自分の性格や根本的なところはあまり変わらずに年を取っていくのかな、とも思いますし、人生何が起きるかわからないなとも思うので、漠然としたイメージしか持ってないんですけど……。
でも、突然何かが起きて、全然違う毎日になるようなこともあるんじゃないかな、とは思います。
大人になっていくと、変に夢を見ることもなくなって、すごく良いことが突然起きるというよりは、病気とか事故とか災害とか、どっちかというとネガティブな大事件みたいなことがいつか起きてもおかしくないよな、と思ってしまって。

くじらぐも:はい。

りな:今は健康で平和な毎日を過ごせていても、いつ何があるかはわからないので。それなりに準備はしておかないといけないな、とは思っています。ネガティブというよりはポジティブな意味で!
今ある当たり前がなくなってしまってもそれが絶対に不幸とは限らないので、その環境で楽しみを見出しながら生きていけたらいいなとはっています。

くじらぐも:うんうん。

りな:母が3年前ぐらいに病気で亡くなったのもあり、余計にそう感じるのかもしれないですね。

くじらぐも:これから生きていく中で、「これをするまでは、死ねないな」と思うことはありますか?

りな:そこまで思うことは、特にないかもしれないです。

くじらぐも:ええ。

りな:うん、ない気がします。あまり大きいことを言っても無理かな、ってどこかで諦めているかもしれないんですが(笑)
小さなやりたいことがいっぱいあっても、無理ならいいかなぁと思ってしまうような気がします。

くじらぐも:無理になる障害が一切なかったとしたら、どんなことがやりたいですか?

りな:自分の本を出版するとか、日本にとらわれず、どこの国でも生活できるような状態でフラフラ旅行しながら生活するとか。

くじらぐも:もし本を出版するとしたら、内容はどんなものにしますか?

りな:どんなものにしようかな……。今はエッセイっぽい文章を書いているんですが、ジャンルが独特なので、今の感じで出版するのは難しいのかなと思うんですけど。
でも、色々な人から恋愛相談を受けてそれに応えたものは面白いなと思いますし、小説とかも書いてみたいなと思ったりもします。
とはいえストーリーを組み立て始めると矛盾が起きてきそうで、面白い小説をかける方ってすごいなと改めて感じます。
あとは英語も得意なので、外国語を勉強するコツみたいな感じでも書いてみたいかもしれないですね。これまで自分がどうやって英語を習得したかを振り返り、分析して、形にしたいなと思っています。

くじらぐも:ちなみに、今の転職活動は順調ですか?

りな:そうですね。元々家でやってた仕事もあったので。それを増やせればいいかなと思いつつ、オンラインで面接を受けたりしています。

くじらぐも:プライベート面だと、これからやりたいことなどはありますか?

りな:高齢の祖母の面倒を私がメインで見ているのですが、そろそろ施設に入ることが決まりそうで、少し身軽になるかなと思っているので。
仕事をしつつも自分の理想の生活スタイルに近づけたり、プライベートの時間が今までよりも自由になったりするかなと思うので、楽しみです。
自分が何をしたいのかというところも含めて具体的に考え、調整していけるかなと思っています。

くじらぐも:なるほど。

りな:これまで仕事を忙しくやっていたので、今は一旦のんびりしていますね。人生の中の休憩期間の感覚で、すぐに動き出すというよりはちょっと立ち止まって、今後の人生をどうしていこうかなと考えている時期な気がします。

メンズエステを辞めたのも、計画的というよりは、勢いで辞めた感じでもあったので。
お店側から明日から来るな、と突然言われたわけではないですが、状況的にはそれに近いのかも。ちょっとした衝突があって、私は一生懸命やってるのに信頼されてないのならもう良いや、って感じでショックを受けて辞めたんですよね。

くじらぐも:そうだったんですね。

りな:逆にそういう方法じゃないと辞められない感じもあったので。あまり理想的な辞め方ではなかったんですけど、辞めるならこのタイミングじゃないと無理だった。足を洗いにくい業界でもあって。足を洗うって言い方は、悪いことをしていたみたいで好きじゃないですけど、敢えてこういう言い方を。
辞めさせてくれないわけではないですが、セラピストとして順調にうまくいっていたら当然お店側も良い顔しないですし、私自身もお店に穴を空ける罪悪感があって自分で辞めるタイミングを決めきれなかった気がするので、ある意味良いきっかけだったかもしれないです。

くじらぐも:突発的な事情があったからこそ、踏み切れたんですね。

りな:はい。逆にいえば、辞める日を予定していれば並行して転職活動などができていたのですが……。そうではなかったので、これからどうしようかな?って今戸惑っているのかなと思います。

くじらぐも:メンズエステなど、いわゆる水商売のお仕事に戻ることはなさそうですか?

りな:そうですね。やりがいもあったけど、しんどいところもたくさん見てきたので、戻ることはないのかなと思います。
お客様もそうですし、働いてる女の子、オーナーさんなど、それなりの癖があって独特な世界なので。もちろん昼の世界にも変な人はたくさんいますし、ブラック企業もあると思うのですが、またちょっと種類が違うというか。

くじらぐも:はい。

りな:それこそ、法的なこともそうです。夜の世界はグレーな部分も多いので……。普通でないことがまかり通ってる環境に身を置いていると、自分も染まってしまいそうで怖いなって。実際に、警察の摘発によって潰れるお店もあるんですよね。
やはり後ろめたいところがあると、そういうことが起きて巻き込まれる可能性もあるんです。いくら自分がしっかりと税金を納めていても、お店が違法なことをしていると、無関係ではいられないので。
そういうリスクを背負ってまで頑張る理由や、夜の世界じゃないといけない理由が自分にあるかっていうとそうではなく、リスクの方が大きいと判断しましたね。

くじらぐも:なるほど。

りな:元々私は別の仕事をしている経験があって、夜の世界以外にも他の選択肢があることは知っているので。
ただ、人生何があるかわからないので、他の仕事の選択肢がなくなった時にふと頭をよぎることはあるかもしれないです。またやろうかな、って。一度経験している分、新しい業界に飛び込むよりは戻る方が心理的にハードルは低いですよね。前の店には絶対戻らないんですけど(笑)

くじらぐも:もしもメンズエステの業界に入っていなかったとしたら、今頃どんなふうに過ごしていたと思いますか?

りな:そもそもその仕事を始めたときの私は、恋愛がうまくいかなかったりして、どこか自暴自棄になっていたこともあったんです。
だから、当時大好きな人がいたら結婚や出産をしていたかもしれないし、自分の人生が順調だったら、この仕事を始めてなかったかもしれなくて。
逆に言うと、そんな風にさまよってたどり着いたメンズエステという仕事には、やりがいも感じてましたし、どこか救われたような部分もあって、どうせやるなら精一杯頑張ろうと思えた仕事だったんですよね。自分の居場所を見つけた感覚だった、というか。
だから、やらなければよかったと思ってるかというとそうではなく、この経験自体は後悔していない。
なので、メンズエステをやっていなかった人生とやった人生は比べられないです……。

くじらぐも:うんうん。

りな:ほんとにメンズエステをしてなかったとしたら、どうだったんだろう……?
それまでの恋愛や仕事で病んでいた部分もあったので、もしかしたらそれはそれで、もっと暗くて沈んでいたかもしれません。どこにも私の居場所はない…みたいな。
メンズエステに勤務したことがきっかけで発信活動を始めて、私の文章のファンになってくれる人ができて、フォロワーさんが応援してくれて、有料の記事を買ってくれて感想をくれる…みたいな嬉しいことも経験できて、kindle出版に挑戦したり、文学フリマにも出たりするようにもなったので。発信活動をしていなかったら、無名人インタビューさんにも参加してなかったと思いますし。

くじらぐも:たしかに!

りな:黒歴史とか、消したい過去だと思ってるわけではなくて、それはそれで私の過去であり、体験なので。良くも悪くも自分の人生の一部だと認めて生きていこうと思っています。
だから、メンズエステをやっていなかったらとしたら、もっと迷子になっていたかもしれないなとも思いますね。だから、後悔はしていません。

くじらぐも:ありがとうございます。何か言い残したことはないでしょうか?

りな:色々と質問していただいて、新たな視点から自分の体験を振り返ることができたので、新鮮でした。言い残したことは特にありません!

くじらぐも:ありがとうございます!

あとがき

夜のお仕事をされている方とお話するのは初めてでした。夜のお仕事にやりがいを感じる人がいる、という発想はこれまで考えたことがありませんでした。
地球上にいる全ての人が取る行動のもとにあるのは「心」だなと、感じます。ありがとうございました!

【インタビュー・あとがき:くじらぐも】

【編集:misato】

#無名人インタビュー #インタビュー #風俗 #メンズエステ

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