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【リテールテック2021雑記】既存店舗のロボットによる無人化について

コロナ禍で開催自体が危ぶまれていたリテールテック2021ですが、オンラインとの併用で無事開催にこぎつけていました。ただし、ブース数は少なく要員も少なかったため、以前のような活気はありませんでしたが、ここは来年以降に期待と言うところでしょうか。

実際にいろいろ廻ってみて思ったことは、結構みなさん手堅い展示が多いなと言う点です。実験的な色彩は薄れ、あくまでも商談ベースに求められるレベルのものを展示されていました。良く言えば手堅い、悪く言えば新鮮味がない、と言う感じでしょうか。

そういった中でも無人化と言うテーマに沿った展示を行っていた企業をご紹介します。

■無人化に対するロボットと言う選択肢

その企業と言うのは野村総合研究所(NRI)さん。こちらのブースでは『ロボット型無人店舗』の展示を行っていました。見た感じは工業用のエア・マニュピレータを搭載した自動移動車と言う感じです。これが店内をルート表示に従って移動、商品を取って搬出口に送り出すと言うものです。

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まだ試作段階(と言うか、個人的には軽工業用のものをほぼそのまま持ち出したものに見えます)だそうなので、商品の扱いが結構雑だったりする(柔らかいものは多分苦手)のですが、居抜きと言う意味では今後の発展によってアリなのかなと思ってみてました。

このような『居抜き』と呼ばれる店舗構造を全く変更せず無人化ができるサービスへの需要は昨今高まっています。コロナ禍と言うことではなく、純粋に人手不足によるコスト(収益はもちろん、人がいないことによる機会損失を含む)アップが収益を圧迫しており、Touch To Goさんもこうした路線を継承しているように見えますが、実際はカメラや重量センサーなど什器の入れ替えが必要でかなりコストがかかります。そこで、設備には全く手を付けず、ロボットと搬出口だけ追加すれば無人化できると言うコンセプトで登場したのがこのロボットを利用した無人化だと思います。

■ロボットなりの難しさ

要するに「店舗に人を配置できないのであれば店を自販機にしてしまえ」と言うコンセプトで作られた仕組みだと思うのですが、そこは自販機にはない難しさがあります。と言うことで、まずは実際の動作を見ていきましょう。

ご覧いただいた方はお気付きだと思うのですが、最も大きいのが『スピード』です。人が利用することを前提に作られているので、当然ロボットとしては難しいものがあります。通路もロボットを意識した広さはありませんし、ロボット自身も旋回移動を行うので結構に緩慢です。

販売している商品も様々…それをサポートするのがエアキャッチ型のマニュピレータになるわけですが、これが意外と難しい。落とすと回収できないため、かなりしっかりキャッチできてから動かすことになり、これもまた時間がかかる仕組みになっています。また、このマニュピレータでは扉が開けられないため、コンビニにおける飲料系の購入は絶望的とも言えます。

■次世代の方式と捉えると

それではこうしたロボットを使った仕組みは終わりなのかと言うとそうではないと思います。店舗の什器設置を設計しなおし、クローズショーケースではなくオープンショーケースを使うことで敷居を下げる…通常人が使う場合のケースを少し変更し、夜間店を閉じずにある程度活用できるように店舗設計を変えることは、Touch To GoやZippinなどのレジレスタイプのような既存店の居抜きが難しいものと比較したら格段に導入しやすいのではないかなと思います。

また、処理速度の遅さは「宅配ボックス方式」で解決できます。事前にスマホから商品を注文しておき、到着までの間にロボットが商品を集めるようにすれば待ち時間を大幅に低減できるようになるので、利便性との両立が図れると思います。

■課題は多いが…今後に期待

夜間だけお店を大きな自販機にする。こうしたアプローチはこれまでありませんでしたが、今後はこうしたアプローチを含め店舗の無人化プロセスはよりバラエティに富み、柔軟性の高いものが増えてくるのだと思われます。

もちろん、まだまだ課題は残されていて、例えば商品が落ちたらどうするのか、バッテリーチャージはどうするのかなど実用化には越えなければならない壁がたくさんあると思います。ただ、こうした技術が実用化して社会を変えていくのか、それとも時代の徒花として消えていくのかは興味深いところですね。


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