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【ビジネス俯瞰図】《思考実験》自販機で無人店舗を作ろう!

最近、中国における無人店舗の失敗の記事を見かけました。

中国においては実際その通りだと思います。日本進出を目指している中国企業の方とはいろいろとお話を聞かせていただいていますが、話を聞くたびに同じようにいろいろと思うところがあって、日本とは異なる事情がありつつも気を付けないと同じ轍を踏む可能性はあると思っています。

この記事のRTを見ていると「自販機にすれば良いじゃないか」と言う反応が多くみられます。そこで、「本当に自販機だけで店舗を作ったらどうなるのか?」について今回は思考実験をしたいと思います。素人でも手ごろな値段で購入でき、電源と商品さえあればその日から運営できる自販機。この仕組みがどこまで通用するのか?…少し考えていきましょう。

■そもそも…実はあった「自販機コンビニ」

私の記憶が正しければ、かなり昔(20年以上前かな…)に一度ミニストップさん(だったかな…)が錦糸町あたりで自販機を並べただけのお店を展開していた時期がありました。いわゆる物販機を本当に店内に並べただけのお店でキオスク的な利用を想定していたようですが、時代が早かったのかそのまま普通のコンビニになったと記憶しています。

また、規模こそ異なりますがセブン・イレブンジャパンさんが展開するコンビニ自動販売機(ASD)が自販機コンビニに近いと思います。冷蔵対応の物販自販機を使っておにぎりやサンドウィッチ(場所により不可)も売っており、これも疑似的な自販機コンビニと言えるかもしれません。

■商品管理は格段に楽に

今の自販機はオンラインに対応機材に変わっていて、自販機からどの商品がいくつ売れたのかをシステムが取得できるようにいなっています。そうしたサービスは10年ぐらい前からあって、現在でも自販機オペレータさんを中心に使われています。

中小企業でも使えるクラウドタイプのものだと以下の企業さんのサービスが有名ですね。

一般的な店舗だと商品棚に陳列された商品の状態は人の目で見て数を数える(棚卸)必要があります。コンビニチェーンになると入荷と販売を1つのシステムで管理することで棚卸業務の回数を抑える(万引きや汚損などがあるので棚卸は必須)ことは行っていますが、自販機は基本的に万引きや汚損がないので、単純に入荷数と販売数を見ていれば問題ありません。自販機に商品を入れる時に確認すれば良いだけなのもオペレーションコスト的には大きく寄与してくれます。

■販売できる商品の種類が激減…

一般的な物販機だと大きいもので 9コラム6段 搭載できます。ただ、この場合の1コラムは非常に狭い(500mlペットが入るぐらいの大きさ)ので、菓子パンなどの主力商品を置こうとするとその半分、5コラム6段の計30種類程度しか入りません。仮に5台置いたとしても150種類が上限…面積的には駅構内の極小コンビニのサイズでも商品種類的には小さいキオスクぐらいのサイズになります。

また、1コラム当たりの搭載数もおおむね6~8個程度と多くないため、売れる商品は必然的に複数コラム準備することになります。飲料は飲料自販機の方が搭載数も自販機自体の価格も安いのでそちらで対応するとしても、1商品あたり6~8しかないとちょっとした気候変動で即売り切れ発生状態になります。その変動を一般的な店舗ではバックヤード在庫でカバーするのですが、自販機は物流倉庫や近隣店舗から補充に行くしかないので運送コストがどうしても高くついてしまうのがネックです。

■コンビニの代替にはならないが特化型として開花するか?

以上のことから考えると、コンビニやキオスクの交換として成り立たせるのは少々難しいことが分かります。ただ、逆に「これまで店舗を置くのが難しかった場所」であればビジネスが成り立つとも考えられます。例えば無人コンビニ600さんのような「オフィス」、郊外の工業団地にある「工場」など、出入りが自由ではなく特定のニーズ(例:昼食や間食)に寄るのであれば、多くのSKUを維持できなくても商売的には成り立足せることは可能だと思います。

実際、自販機を使ったビジネスはインロケと呼ばれるオフィスや駅構内などのマイクロマーケットに主戦場をシフトしており今後もこの流れは大きく変わらないことが予想されるため、外のコンビニに行くのは面倒でも近くなら…と考える消費を抑えるスモールマーケットビジネスを目指すのであれば自販機は安い投資だと思われます。適材適所として自販機を使うビジネスに特化することは決して悪くないと思います。



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