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猿でも成れる社内ニートのつくりかた

やあやあ初めましての方は初めまして、俺は安眠計画(@unmi_n)。
高校生くらいまではまったく勉強せずともそこそこの進学校に行けて、高校から始まるラットレースのような努力競争に正面から向き合えず、当時流行していた合法ハーブや、この世の終わりみたいな心象画を描くこと、女装や奇蟲飼育、天体観測、インターネットなどに惑溺して、それでも現代文の成績だけは3年間全国模試で上位だったみたいな、Twitterによくいるゼロ年代のオタクです。

当時の俺にとって学校生活とスーパーマーケットでのバイトだけが〈現実〉で、〈現実〉が上手くいかないことを代償するように2chまとめサイトに影響を受けたような思考実験をし、リア友もいるmixiで意味不明な長文や女装自撮りを全世界に公開していた筋金入りのインターネット・ピエロだ(書いていて本当に苦しくなってきた)。

それでも、ネットの海で苦しみながらジタバタ溺れているうちに〈現実〉では絶対に出逢うことのなかった優しくて賢い大人たちに恵まれ(今思えばそんな大人たちも何か内面に欠けていたものを抱えていたような気もするけれど)、そうした世代や空間を越えた仲間との出逢いが俺を大学〜就職までのあいだ〈現実〉と戦う力を与えてくれたし、また「居場所」であってくれたような気がする。

願わくばこの『ニートマガジン』が、かつての俺にとってのmixiのような、令和になって陽の光が燦燦と降り注ぐようになってしまったこの愛すべき愚かなインターネットにおける、他の誰でもない、あなたのための休息地とならんことを!

さて、この共同マガジンのコンセプトは「みんなで作るニートなマガジン。ニートのノウハウ、低コストな娯楽、節約やサバイバル方法、活動記録、エッセイ、思想、書評など」だが、俺は週5日フルタイムの狂った賃労働に身を窶してしまっている。
週で区切ると7日しかない人生の、5日間である。その大切な、労働者階級にとって生命(いのち)そのものとも言える5日間を使って、比喩ではなく命を削って、資本家のお金を元手にして資本家のお金を増やさせていただき、そのうちから僅かなおこぼれをいただいている。

奴婢(ぬひ)
大学卒業後、新卒で入社した所感はその2文字に尽きた。今は少しだけ図太くなって、何も持たず、適切な努力を怠った俺にしてみれば資本家なんて単なる金蔓で、いかに社内で働かずにインカムを得るかに血道を上げている。社内ニートや窓際族って、俺たちのような人種が目指す峰のひとつじゃないですかね?

そこでこのマガジンに参加させていただいたわけだが、正直言って今の日本にはコネやキラキラ粉飾就活でなんとか安定した企業に潜り込んで、窓際族になれ!と言えるくらい体力のある企業が少ない。絶無とは言わないまでも、学歴や資格といった相応の説得力(=労働者としてのブランド力要は人間の値段←人間に値段を付けるな笑)を求められる場面が多い。
努力しないための努力をするなんてアホらしい。ならば俺たちのような人間でも金が欲しいと思った瞬間入れるような中小企業で、社内ニートのように振る舞うためのマインドセットをインストールした方がラクではないだろうか。以下、「芸術家タイプ」で「繊細さん」な自分が発狂しそうになりながらブルシットワークの沼の中でこれ大事だなぁと感じたこと、掴んだものを3点挙げる。そもそも賃労働なんてのは自分で汗をかかずに利鞘だけぶん取りたいヤクザ相手の稼業なのだ。逆にこちらが金蔓にしてやろうというたくましさを奮起してほしい。

①セルフイメージは小さく


中小企業は忙しい。
大企業のように分業化が進んでいないので、ひとりの人間がたくさんの領域の仕事をしなければならない。現に自分も、上場企業なら3〜4つの部署に分けるべき仕事をひとりで請け負っている。なのに貰えるお賃金はどんぐり3つだ。あまりにもブルシットだけれど、俺がブルシット人材なので仕方ない。

さてこのように↑ まずは自分のしょうもなさを適切に、客観的に見つめることは大切だ。頭でっかちになると、自分が大きく感じられるが、そんなことはない。俺たちはやたら脳ばかりデカくなった単なる猿なのだから、猿には猿なりの餌の獲り方がある。スマートじゃないけれど、多少醜くても、「生き汚い」大人になるのが窓際族に必須のマインドセットだ。
中小企業は自然と「できる」人間に仕事が集まってくる。無理だと思ったら仕事を断ればいいし、わたしは無能ですとそれとなく上司に伝えるのもひとつのテクニックだ。
まずセルフイメージは小さく、自分を美化することを辞めよう。

②知らん(笑) の精神を保ちつつオキテは守る


ブルシットワークをやっていると、いやそんなん知らん!と思うことが多々ある。
会ったこともない人間のミスでこの世の終わりくらい取引先に怒られたり、逆に教えられてないことで他部署の人間に迷惑をかけ、上司を伝って詰められたりは日常茶飯事だ。企業規模が小さくなればなるほどミスに対する怒られの迫真度は増す。他部署の人間や経営陣がセクションを越えて怒ってくるからだ。

そんなとき俺は思う。知らん!(笑) と。

そもそも俺はどんぐり3つしかいただいていない奴婢の身、そんな教えられてないことまでただちに遂行できるほど高級な人財さまじゃないヌヒねぇ、とヌヒヌヒ笑っている。
でも絶対にそれを面(おもて)に出してはいけない。中小企業というのはひとつのムラであり部族なので(このへんは借金玉氏のコラムに詳しい、借金玉 部族とかで検索すると出てくる)部族のオキテには従わなければならない。逆に言うと、部族のオキテにさえ従っていれば、どんなに仕事ができなかろうと、無愛想だろうと、コミュニケーションの「型」さえ守れば見放されることがないのが日系企業のいいところだ。外資やキラキラベンチャーだと能力主義が貫徹されているのでこうはいかないだろう。まあ外資に行った人が言うには、外資には外資のオキテがあるらしいが……(やっぱり賃労働って地獄?笑)。

とにかく平穏無事に窓際社員をやりたければ、部族のオキテには従い、ムラオサやクニオサの機嫌をうかがい続けること(仮にご機嫌取りに失敗したとしても、わたしはあなたの機嫌を気にしていますよとメッセージを発信すること)。
中小企業にいる人間なんてみんな論理(ロゴス)ではなく感情(パトス)の動物である。
一見どんなに理性的に見えても、何か大義や野望があって動いてる人はほぼいなくて、手元に安定した金が欲しいから、仕方なく目の前の具体的な業務に従事しているだけに過ぎない。ならば優先されるべきは業務遂行能力よりも「一緒にいて楽しいかどうか」みたいな享楽的な理由が大きくなる。
ただし日雇いや派遣労働ではない限り、それなりにロゴスも持っている可能性が高いわけだから、人によってはパトスに振れすぎても良くない場合があることに留意してほしい。

要は目の前の人間が何を求めているのだろうと想像力を巡らせることだ。
どんなにツブシの効かない雑魚業務に従事していたとしても、それだけはすべてのコミュニティにおいて求められる絶対的な価値のあるスキルツリーだ。伸ばしておいて損はない。

③まぁ辞めてもいいな、と思うこと


あなたが全生命を賭してまで成し遂げるべき大仕事なんてものは、〈現実〉には存在しない。
〈現実〉を俗世間と言い換えてもいいかもしれない。つまり、本当に成すべき聖なる仕事とは、あなたの内面にしかないのである。

それは人格の完成かもしれないし、過去のトラウマを赦してやることかもしれない。自分が世界一美味いと思えるカレーを作る!とかもある(その場合は聖なる仕事をマネタイズできるかもね)。
とにかく、あなたが人生を賭してやるべきことなんてものは外には無いのだ。部族のオキテを演じる茶番がどんなに巧くなったとしても、賃労働的価値観を内面化してはいけない。魂まで賃労働者になるな!(ルフィ)
他人から求められる業務は全部クソだ。ブルシットだ。ゴダールも「すべての労働は売春だ」と喝破している。すべての労働は、ただ馬鹿な賃労働者どもに気づかれないよう巧妙に薄められているだけで、資本家のペニスを気持ちよくすることに尽きている。

誰に頼まれなくても、無料でやりたいことだけが聖なる仕事たり得る。このマガジンの執筆活動なんてまさにそれだなぁと思う次第である。

よき社内ニート生活を!

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