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怒涛の大腸日記

2024.2.5
血が出ている。
1週間ほどずっと血が出ている。

ことの発端は腐った牛乳だった。
一月末に会社の冷蔵庫に置きっぱなしにしていた牛乳の消費期限は22日と確かに、しっかりと印字されていた。
その日は29日だったけれど、まあいいか、まだ飲めるか、と飲んだのが始まりだった。

夜にかけてひどくなる腹痛、数日前に生理は終わったはずなのにお股から流れ出る血。

たまらず母に息子を頼み、布団で丸まる。布団で丸まっていると、痛みは嘘みたいに和らいだ。

そもそも生理痛がひどい。
それはもう大昔からの話で、何か婦人科系に疾患があるかもしれないなーなんて呑気に思いつつ毎月ロキソニンを流し込み、息子を授かってさまざまな検査を受けても何にも引っかからなかったので、ああこの毎月の痛みは普通のことなのか、とまたロキソニンを流し込む日々が始まった。

遂にちゃんと検査をする時がきたんだ。
意を決して婦人科へ行くと、検査結果に何の異常もないから痛みが続くなら外科へ行くようにと言われた。

お股からだとばかり思っていた血は、お尻から出ていたのだ。(わたしがバカすぎる)

「どんな痛みですか?いつから?血は何色ですか?」

質問に答えるたびに、先生の顔色がどんどん悪くなっていく。

あんた、医者に向いてないよ!と思わず思ってしまう。

「明日来られますか?会社は休んでください」

やめてくれ。
緊迫感とか重病感を出すのをやめてくれ。
これでただの痔だったらどうしてれる?

頭の中には病名が浮かんでいた。

いや、まさか。
だって、昨年11月の健康診断でオールAだったのだ。バリウムだって飲んだ。

そのことを早口で先生に伝える。

「胃と腸は別ですから」

あの、深刻そうに眉をひそめたお顔でいうのはやめてもらえませんかね?
思わずそう口から出そうになる。

やめてくれ、やめてくれ。
やっとここまできたのに。
やっと安定を手に入れつつあるのに。
やめてくれ。
わたしが何をしたという?

頭に息子の顔が浮かぶ。

いやいやいやいや。
死なない死なない。
こんな元気な重病人見たことない。

保険見直しといてよかったー!
…よかった、のか?

というか、この間厄落としに行ったばっかりなんですけど?
前回の厄では散々だったから!
「今年かあかに鬼がきちゃうから!それをこないようにしてもらうから!」と必死に説得してついてきてもらった息子に、
「かあか、これでほんとにおに来なくなるの?」て訝しまれながらも五千円を払ったんですけど?

神様???
聞こえますかーーーーー?????

*****

2024.2.16
と、ここまで書いていたのが先週で、結局余命宣告もなく、腸炎、ということで終わり…と思いきや、
大腸カメラをすることになった…。

憂鬱だ。

憂鬱だけれども、「死」を身近に意識したことで、本当に色々なことが頭を駆け巡った。

息子を頼むとお願いする人の顔、5名。
5名もいる、5名しかいない、人によって変わるだろうけど、とにかくこの5人さえいてくれたら大丈夫だ、よかった、と思った。

そして、やっぱり何がなんでもわたしは最低あと15年は生きないとダメだよな、と考えた。

あと15年か〜。
20歳から今まであっという間だったような気かするから、もっとあっという間なんじゃないかな、と思う。

あと15年だ。
あと15年は何がなんでも生きなければならない。

明日検査なのだけど、今日の検査食が普通に美味しかったけど全然お腹いっぱいにならなくて、お腹が空きすぎて眠れない。

今日は久しぶりに息子が高熱を出して保育園に走ったりして、気の休まらない一月、二月だ。

とにかく健康!!
健康あっての、人生!!

*****

2024.2.17
大腸検査の日である今日は小学校の同窓会を予定していて、夜7時半から焼肉だったけれど当然行く気でいた。

にも関わらず、ポリープが見つかり、切除したという。

ポリープ切除の日は絶食、3日間はお腹に優しい食事、2週間は香辛料・コーヒー・紅茶NGと言われた。

2週間後に組織検査の結果が出ます、では。

では?

では?

では?

では、とは?結果?

ぽかーんとした頭のままとぼとぼと病院をあとにする。

車で来ないでください、自転車もダメです、絶対歩いてきてくださいの意味が今わかる。
麻酔のせいでふらついて、歩くのがやっとなのだ。
こんな状態で乗り物は運転できない。危険。

フラフラ家に辿り着き、もにょもにょと息子を見てくれていた母に伝える。

「でもさ、同窓会はいっていいよね?」

「何考えてるの!ダメでしょ!腸に穴があいたらどうするの!」

ものすごい剣幕で怒られてしまった。

「え、じゃあさ、焼肉を目の前に座っておくだけってこと?無理無理無理…」

同窓会幹事に連絡すると、当日キャンセルだから7000円の会費はもらうという(当たり前である)

朦朧とする意識の中でPayPay送金をした。
人生で一番悲しいPayPay送金かもしれない。辛い。焼肉食べたかった。

え、もう焼肉食べても食べなくても7,000円なら食べたほうがよくない?と一瞬思ったけれど、鈍い頭のまま行くのは無理そうだ。

お昼寝をしていない息子と共に20時には布団に潜り込み、泥のように眠る。

*****

2024.3.2

組織検査の結果、良性。
要するにガンではないということ。

よかったー!わーい!

30代でポリープが見つかるのも稀で、大腸癌になることは更に稀らしい。

でも今回のポリープがかなり大きかったので、毎年必ず便潜血検査をすること、45歳にはもう一度大腸検査を受けること、と言われた。

神妙な面持ちで聞いて病院をあとにする。

その病院には昔一度行って、先生のことがすごく嫌いで、紹介されてしぶしぶだったけれど今回もやっぱり感じが悪いな嫌だな嫌いだなと思ったけれど腕は確からしい。

あとは結果を話す時に少し嬉しそうにしていて、人間の心があったのか…と失礼なことを思いながら感謝した。

癌になるかもしれないヤツらを駆逐してくれたのはこの人なのだし。

今回腐った牛乳のせいで、と思っていたけれど、腐った牛乳のおかげでポリープが発見されて切除されたのだ。
よかった。
先生曰く、かなりラッキーらしい。

厄落としに行ったから!
厄落としのおかげだ!!

と無理矢理自分を納得させる。

*****

以上、大腸日記でした。

みんな、過信せず人間ドック受けましょう!

厄落としには行くべき!

解散!!!!!


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