海野やまめ

息子のこと、自分のことをゆるゆると

海野やまめ

息子のこと、自分のことをゆるゆると

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その階段を降りたら

わたしには大好きな洋食屋さんがある。 ご夫婦でやられている、こじんまりとした、素敵なお店だ。 味はもちろんのこと、マダムの接客が本当に素晴らしい。 23歳の時、一年だけカフェで接客業をしていた。 その時の常連さんが、ここは美味しいよと言って教えてくれたお店だ。 なんと、もう10年以上通っている。 途中、引っ越したりもして、なかなか行けない時期もあった。 でも半年に一回、多い時は1ヶ月に一回は通っていた。 一番好きなメニューは、デミグラスソースのかかったメンチカツだ。

    • 心の中でそっと中指を

      目の前で自転車に乗るおばあちゃんを見かけた。左足をペダルに乗せて、右足をクロスさせて地面を蹴る、その姿が亡き祖母に重なって、その日がお誕生日だったから、まるで「やまめちゃん、お誕生日おめでとう」と祖母に言われた気がして涙が出た。 わかっている、疲れているのだ。 いろんな責任、重圧、初めての後輩指導、そういうもの全てに押しつぶされて消え入りそうになっている、というのが真相だと思う。 誰に相談すればいいのかわからない。 相談、というか愚痴を聞いてほしい。 別に後輩が嫌いな

      • ドクターわるわると魔法のくに

        子ども向け映画のタイトルにでもなりそうだけど、息子が考えた「われもの」の名前が「ドクターわるわる」 まず、「わるもの」のことを「われもの」とずっと言い間違えている。 この間戦いごっこをしていたら「かあか、われものの名前を考えて、うんと怖いヤツだよ」と言われた。 頭の中に、デビル、ブラック、ダーク、などの単語が浮かぶ。 う〜ん、息子くんは?いちばん悪者ってどんな名前だと思う? と尋ねると、 少し考えた後眉間に皺を寄せながらこう答えた。 「ドクターわるわる!」 弱そ

        • 怒涛の大腸日記

          2024.2.5 血が出ている。 1週間ほどずっと血が出ている。 ことの発端は腐った牛乳だった。 一月末に会社の冷蔵庫に置きっぱなしにしていた牛乳の消費期限は22日と確かに、しっかりと印字されていた。 その日は29日だったけれど、まあいいか、まだ飲めるか、と飲んだのが始まりだった。 夜にかけてひどくなる腹痛、数日前に生理は終わったはずなのにお股から流れ出る血。 たまらず母に息子を頼み、布団で丸まる。布団で丸まっていると、痛みは嘘みたいに和らいだ。 そもそも生理痛がひど

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        その階段を降りたら

          4歳の息子と4歳のわたし

          お風呂場とわたしの父母の寝室は隣り合っている。 脱衣所には2つ扉があり、ひとつは廊下、ひとつは父母の寝室へとつながる。 犬が亡くなってから1ヶ月と少し、息子が父母の寝室へ行くことが増えた。 これまでは少しも寄りつこうとしなかったのに、この頃はお風呂に入る前や、髪を乾かした後、父母の寝室へ行き、主には母の布団に入って一緒にテレビを見ている。 ある日息子がご機嫌で、蜘蛛を紙に書いて切ったものを胸のところに貼り付け、みかんネットを切り裂いて顔に貼り付け、スパイダーマンになり切っ

          4歳の息子と4歳のわたし

          日記 無風と暴風

          「ハチ公の最後の恋人」という、よしもとばなさんの本が好きだ。 かつて大好きだった人は、わたしと付き合っているときに別な子を好きになってしまって、きちんとわたしとお別れをして、そのままその子と結婚をした。 だからわたしは彼の最後の恋人だ。 その女の子のことはわたしも大好きで、付き合っているときに彼がその子に強烈に惹かれていく様を眺めていた。 しがみつけば、気づかないふりをすれば、隣にいられたのかもしれない。 でも、出来なかった。 磁石のように、重力のように、強烈に惹かれ

          日記 無風と暴風

          全て笑い話

          次にもし、万が一、誰かとパートナーになる、となったら、絶対仕事ができる人にしようということをこの間ふと考えた。 なぜかと言うと、若い頃のわたしの好きなタイプが、「無職の冒険家」みたいな感じだったから。 それを思い出したのはこの間会社の人と話していて、後輩が「こんな人と付き合ってそう」という診断を勝手に下されているのをみて、「わたしはわたしは?」と調子にのって聞いてしまったからだ。 「ん〜やまめさんは〜…今の東出昌大みたいな人ですかね〜、昔のじゃなくて、今の」 と言われ

          全て笑い話

          犬の死と、元日

          2024年1月1日 父、母、わたし、息子の4人で近所の神社まで歩く。これは私が幼い頃から続く元旦恒例の行事。 3年前までは実家の犬も一緒だった。 去年の年の暮れ、お空に旅立ってしまった。 大型犬に近い大きさの犬だったから、16年半という長い間いてくれただけでありがたいのだけど、最後は一年近く寝たきりになってしまい、母は介護疲れしているように見えた。 16歳と言うと、高校生の年だ。 わたしの人生の半分くらいに相当するから、歳の離れた弟くらいの気持ちがある。 最初に後ろ

          犬の死と、元日

          2023.12 【振り返る】

          「あついよりさむいほうが好きなんだよね」 と息子が言う。 たった4年ぽっちしか生きていないのに、自分で暑いか寒いかなら寒い方が好きだなぁと考えられる姿に、なぜかほんの少し感動した。親バカがすぎる。 朝ごはんは何食べたい? 今日はどこに行きたい? 夜ご飯は何を食べたい? どのお洋服着る? わたしは息子によく質問をする。 わたしが決めてしまった方が早いよ、大変でしょ、と母からは言われるけれど、息子は今まだ自分の意思で食べたいものを買ったり、ひとりで出かけたりができないから。

          2023.12 【振り返る】

          最近の葛藤

          息子が急にリトルマーメイドが好き!と言い出した。保育園で絵本を読み、女の子達が着ている服を見て更にその熱は上がったらしい。 元々息子は可愛いものやキラキラしたものが大好きだし、プリンセスの塗り絵も絵本も否定してこなかった。 プリンセスの中でもアリエルがとにかく好きになったようで、アリエルの服が欲しい!とねだられたのだけど躊躇してしまった。 もうそういう時代(女の子はピンク、男の子は青のような)ではないことは分かっているし、偏見もないと思っていたから自分で自分に意外だった。

          最近の葛藤

          222文字の総括

          あっ と言う間に一年が終わる。 本当にあっという間だった。 今年を一言で表すのなら、「わたしを取り戻す年」だった気がする。自分のいいところも、わるいところもよく見えた。 よく笑い、よく食べ、よく動き、いい一年だった。 来年は「わたしをアップデートする年」にしたい。 今年よりもっと多くの人に出会って、関わって、自分を成長させていけたらいいな。 怖い、よりもワクワクが大きくなってる、少しづつ。 いいことだ。 残すところあと4週間。 穏やかな締めくくりだといいなあ。

          222文字の総括

          日記 冬の風物詩とカゴの中のおにぎり

          会社のひとから出張のお土産をもらい、そのお土産が入っていた袋が無造作にリビングに転がっていた。 朝横目でその袋を確認して、 「お母さん、あの袋あげるよ(適当に片付けておいてほしいの意)」と言うと、 母には娘の思惑などお見通しなので 「あらあらそれはありがとうねぇ(面倒を押し付けたなの意)」と嫌味たっぷりにニコニコされた。 息子を自転車に押し込め、保育園まで急ぐ。 今日は息子の保育園ストックのお洋服たちを総入れ替えした。 パンツがないなぁと思っていたけど保育園に5個もあった

          日記 冬の風物詩とカゴの中のおにぎり

          広がる世界

          「いちばん好きな花」の第4話が最高だった。最高に泣けた。 夜々ちゃんの気持ち、とてもわかる。 恋愛対象として女の子が好きな訳じゃないし、わたしには夜々ちゃんみたいな美貌もないけど、とにかく女の子として生きるのは辛かった。 辛いことが多かった。 歳をとったことによって、その辛さがどんどん軽くなっていく自覚がある。 なんだったんだろう、あの「女の子」であることの呪いは。 見た目の大人しそうな感じと中身の破天荒さもチグハグで、女の子の集団でも男の子の集団でも息がしずらくて、居

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          久しぶり、わたし

          ずっと行きたかったお店がモーニングをしていて行ってきた。 午前中皮膚科に行くことにしていて(手荒れが限界)息子は珍しくじじばばとお留守番。 皮膚科ってどうして毎度当たり前に混んでいるのだろう。 受付に初回に書く票を記入して出してすぐ「少し出てきます、すぐ戻ります」と告げて冒頭のお店に向かった。 お行儀よく待合室で2時間待てる人間には一生なれない。 秋風が気持ちいい。 ぐんぐん自転車を漕ぐ。 お店はずっと行きたかったので頭の中に場所の地図はばっちり描かれている。 これ

          久しぶり、わたし

          もう1人産みなさいおばさん現る

          たこ焼き屋さんに息子と並んでいると、後ろにいるご婦人が声をかけてくださった。 何歳?しっかりしてるわね。などなど。 まぁここまでは結構よくある光景でありがたいなぁと思うのだけど… ひとりっこ? あら、それは寂しいわね。 そろそろふたり目を産まないと。 この子もママも寂しいわよ。 こ、これは… Twitter(X)で炎上する系のやつ…? 昔、ひとりっ子は可哀想って言われた!むかつく!みたいなツイートが炎上していた。 本当にそういうこと(ひとりっ子は可哀想、もう1人産

          もう1人産みなさいおばさん現る

          切なくて甘いのが秋

          よしもとばななさんの小説を久しぶりに飲んだ。(読んだ、の書き間違えなのだけど、あながち間違いでもないと思ってそのままにすることにした) よしもとばななさんの文体なのか、なんなのか、もうとにかく好きで、滋養という言葉が浮かぶ。 癒されるのだ、じんわりと、心の底が。 インドカレーを食べた時、みたいな感じ。 (今猛烈に、辛くない、豆がたくさん入った黄色いインドカレーが食べたい) 登場人物の男の人が特に好きだ。 女の子たちもみんな魅力的だけれど、こんなに静かで穏やかな男の人に人生

          切なくて甘いのが秋