彩り
四月の東京は騒がしい
新宿駅はスーツ姿の人混みに飲まれ
時計と共に走る若者で溢れているのに
少し歩くとスーツ姿の人々はいなくなって
黒に染まった人混みは
この「春」に彩られた極彩色に溢れる
新宿御苑に人は流れ、皆団欒で花を眺める
緑は人に塗り替えられて
小鳥たちの囀りや木々のざわめきはかき消され
ただ人の声の喧騒だけが街に響き渡っている
春に浮かれた街の中で
ここから始まる人たちがいる
一月、二月の苦境を超えて門出に意気揚々としている
そんな飛躍の一歩目に皆が四月に足を揃える
各地から来た人々が交差して形作る新たな環境
顔見知りなんていないから誰もが必死にもがいている
周りで響く花見客の喝采に
憧憬を抱きながらも通り過ぎて
ただ自分の行き着く場所を目指すだけ
この街は活気に溢れている
エネルギーに満ちて輝いているようで
無関心に溢れている
良くも悪くも無関心なこの街は
順応できれば過ごしていける
どことなく合わせた会話の流れが
また新たな喧騒を生む
色んな感情に塗れている
四月の東京は騒がしい
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