消えない

君が消えない。
僕がいいと
そう駄々をこねた君の声が
ずっと頭から離れない。

そばにいたって興味もなくて
居眠りさえしてしまうほど
なんでもなかった君のはずが
いつのまにか離れない。

電車に揺られ
車窓を眺めているときも
雑貨店で
品物を眺めているときも
就寝前の布団で
スマホの画面を眺めているときも

脳裏では
君を眺めている。

君が消えない。
段々だんだんと鮮明に
思い出の数が増えるほどに
拡散転写するネガのように。

バスの移動で
うたた寝をしているときも
街頭で人と
待ち合わせているときも
風呂場でシャワーを
浴びているときも

脳裏には
君が写し出される。

もういくつもの時が過ぎて
ありふれた日常に溶けてしまったのに
君の声は未だ鮮明で
君の姿は一際目立つ。

多分いくら時が過ぎても
僕のこのフィルター越しには
いつになっても
君は消えない。

#自作詩
#詩
#詩形詩吹

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