東京のイタリアンはイタリアのイタリアンより美味しいと言う人がいるが本当だろうか。

冬に地上にいる人間は真の札幌市民ではないらしい。確かに美しくライトアップされた地上に目もくれず、大勢の人が地下街を闊歩していた。しかし出張で来ただけの東京の人間にその地下街は広すぎた。たちまち迷子になり這々の体で地上に出たら札幌タワーが見えたので、やっと方向感覚を取り戻した。

狸小路商店街を抜けた辺りに昭和の雰囲気が横溢するラーメン店があった。店内では二人の年配の男性がビールを飲みながら店主夫人とお喋りしている。それに触発された私はラーメンの他に予定外のビールも注文してしまった。北海道に来るととにかく出費がかさんで困る。しかし、天使悪魔全会一致の決定なので止めようがない。

彼らの話題は昨今の燃料値上がりについてだった。北国の人々にとってまさに死活問題だろう。だが本当に心配なのは「転売目的で家の前のタンクから灯油を盗まれること」だという。やはりスケールが違う。そんな話を聞きながら食べる札幌ラーメンは、東京で食べるラーメンとは一味違うのだった。きっとイタリアのイタリアンも東京のそれとはまた違う味わいがあるのだろう。