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【第3夜:発信の妖精】くすぶり人間と3人の尻叩き


星見当番さんのこちらの記事からインスパイアされてできたお話しです。
先にこちらのお話をお読みください。

【前回までのあらすじ】子どもの頃は作文が大好きな上に得意だったのに、日々の仕事と生活に追われて、何も書くことなく長い月日が経ってしまった、人呼んで、くすぶり人間。心の奥底に書くことへの野心がくすぶっている己に無自覚な人間である。くすぶり人間は仕事に疲れてだらだらネットサーフィンをしている際に、はたと、自分の野心に気づく。そして、そんなくすぶり人間の目の前を以前から応援していた、ツタンカーメンの装束を着た白い妖精、星見当番さんのツイートが流れていく。そのツイートを目にした途端、「3人の尻叩き妖精」を送り込むと宣言するお嬢様言葉が、聞こえたのだ。

第1夜の尻叩き妖精(複数いるけど1人)は「優先順位の妖精」だった。優先順位の妖精は「お前の尻込みリストに『いちばん無理』から『いちばんマシ』まで順位をつけろ。そうしたら初手では『いちばん無理』と『二番目に無理』を免除する」と言って消えてしまったのだという。

第2夜の尻叩き妖精は「お膳立ての妖精」だった。お膳立ての妖精は「尻込みリスト」についてリスト同士の関連性を指摘した上で、検討し、現実的にできるものに訂正した。そして「自信がない時は、自信が出るような行動をするしかありません。行動だけが、自信をもたらします」と言い、行動に至るためのお膳立ての重要性を言葉の端々に滲ませて、去っていったのである。

【訂正後くすぶり人間の尻込みリスト】
その1 仕事以外で文章を書く
その2 創作を、noteで何度も繰り返す
その3 1,600文字の手紙形式の雑文を毎日書く
その4 創作していることを家族や友達に言う
その5 創作物に感想をもらう
その6 小説のテーマや資料を探す
その7 小説を書く
その8 完成した原稿を出版社に送る 応募する
番外編 仲間を増やすために音声コンテンツなどをする

【第3夜の尻叩き・発信するぞ! 変なプライドを捨てろ!】
3番目に来た妖精は赤いプラスチックのメガホンを持っている、小学生くらいの男の子だった。頭にはライオンのたてがみのようなオレンジの髪が生えていて、大きい赤いカバンをたすき掛けしている。カバンには何故か郵便のマークがついていた。妖精はメガホンを口に当て「発信の妖精が来たぞ!!格好つけてるのはだーれだー!!」と子ども特有のキンキンした声で叫んだ。くすぶり人間は手で耳を抑えた。
お膳立ての妖精が「手強い」と言っていた妖精がこういうタイプだとは思わなかったので、くすぶり人間はじっと発信の妖精を見つめた。お膳立ての妖精は全く目を逸らさず、くすぶり人間を見返した。

【noteをやる】


「まず確認なのだけど、noteのアカウントは作ったよね?」
「つ…作りました。スマホからでも、簡単でした。名前は迷いましたが、codeではなく違うものにしました」
「何でそんな面倒なことするの?codeはこの数年X(Twitter)で使ってたアカウント名でしょ。フォロワー数はそんなに多くないけど、交流もあって、見てくれる人もいるじゃない?お膳立ての妖精もそういわなかった?」
「…言ってました…でも何となく恥ずかしくって…」
「そういうのは、つまらないんだよなぁ」
と発信の妖精は露骨にがっかりした顔でつぶやいた。
「まあいいや。で、更新はしてるの?」
「してます、してます。40日ほど連続更新ができました!手紙形式で日々のことを書いています。あとは読んだ本の感想かな。本の感想は一定読んでもらうことができるジャンルみたいですね。仕事の行き帰りで1,600文字程度書いて、夕食の後、寝る前に更新するルーティンができています」
「うん。いいね!まあ、自己紹介はもっと具体的でもいいと思うけどな。あと、スキとかフォローはもっとやっていったらどうかな」
「少し様子を見てから…と思ってしまうんですよねぇ…」
「見かけによらず警戒心が強いね!でもまあ、安全のために少し様子を見るとしてもX(Twitter)で交流がある方を見かけたらnoteではすぐフォローバックするようにした方がいいよ」
「そうですね…確かに」

【自分が何者かを発信する】


「それから、確か、君は、何人かの占星術師の鑑定を受けたり、講座を受けたりしたことがあるよね?」
「ありますね」
「それはどうやって選んだの?」
「SNSでの発言やブログの内容から、自分とそれなりに気が合いそうとか、その方の読んでいる本から実力がありそうだなとか、他の人と交流しているのを見て礼儀正しい人だな…とかを確認してから選びましたね。お金を払うものだし、人柄も知りたくって」
「そういうことだよね」
発信の妖精が一呼吸落ちた後、メガホンを使って、くすぶり人間へ向かって  
「やっぱりどういう人かわかった方が興味を持ちやすい!!」
と怒鳴った。
「…あのう…でも、占い師になりたいわけではないので…物書きになりたいのでちょっと違うんじゃないかなぁ…と思って…」
くすぶり人間は、発信の妖精の方を見ずに自らの足元を見て、煮崩れたじゃがいもみたいにぐずぐず喋った。
「「やっぱり、作品で勝負!」ってこと?」
発信の妖精はするどく尋ねる。
「はい」
「でも!!」
「君は!!!!」
「まだ!!!!!!」
「何も書いてない!!!!!!!!」
発信の妖精の大声が響き渡り、ガラスとくすぶり人間のちっぽけな自尊心がビリビリと震えた。ちなみにメガホンは使っていない。
発信の妖精は空気の震えがおさまってから、
「書いてから言え!」
と静かに言った。怒っている声ではなく、全く冷静な声だった。
「確かに君の日常に興味を持つ人は今のところいないよね。日常を書いたところで何も発展性はないかも。でも君は、自分が何を目指しているのかすら自分でわかっていないでしょう。君はまず君のために書くんだよ。自分が何を目指しているのかを見つめるために。そしてもし、そんな文章を読んで、さらに読みたいという人が現れれば、すっごくラッキー。違う?」
やや幼い声音だが大人のような正論を捲し立てられてくすぶり人間は言葉も出なかった。

【他のアカウントと交流する】


「さて、星見当番さんのところへ来た、発信の妖精さんが占い師になりたい場合にどのような交流を持った方がいいのかを明記してくれてたでしょう。あれを君向けに変えてみたよ。
・他の創作アカウントをフォローする
・他アカウントの投稿がいいなと思ったら拡散する
・拡散した投稿のどこがいいのか感想を投稿する
・他のアカウントと創作の話をする
・他のアカウントが出したお題に乗っかる
・慣れたら自分からも交流用のお題を出してみる
・魅力を感じたアカウントの投稿を観察する
ほとんど変える部分はなかった。どういう目的のアカウントでもやることは変わらないということだね」
「あー、確かにこれまででX(Twitter)1番みられた投稿は漫画の感想でした。あれが伸びるとは全く思わなかったなぁ」
「君はまずは、色々なものの感想を投稿する方がいいのかもしれない。それは資料探しにも通じるし」
「確かに」
「感想をログラインのように整理して投稿できるとより、勉強になる。人間反応があった方が次を書こうという気になるよね。今回だって、星見当番さんがファボやリツイートをしてくださってるし、朱鳥さんもリプをくださっただろう。それでここまで書けた。ありがたいことだね」
「それはそう思います。ありがたいです」
くすぶり人間が素直にそう言ったので、発信の妖精は太陽のようにニッカリ笑った。
「いいね。そうやって素直にお礼いうのはすごくいい」

【先輩方の投稿を敬意を持って分析し、真似る】

「さて、次だ。【先輩方の投稿を敬意を持って分析し、真似る】べきだ。これは、星見当番さんのところの発信の妖精が懇切丁寧に教えてくださっていたよ。わからなくなったら読もう」

「はい。どうせぼーっとSNS見るんだったら、分析をして見た方がいいですねぇ」
くすぶり人間は何だか前向きな気分になってきた。楽しいことが起きる前のようにワクワクしている。
「そうそう。意見や回答を、パクるのはダメだけど、魅力的な投稿を見たら、敬意を持って分析し真似てみよう。このさじ加減は難しいから、まずはお題に載ってみるのがいいと思う。お題に乗るのはオッケー。その時、元ネタ発信者の名前や元ポストはできるだけ表示した方がいい。自分が考えたように発信するのは絶対ダメ」
発信の妖精は明るく言った。
「SNSの向こうにいるのは生身の人間であることを忘れずに敬意を持とうね」

【音声配信について】

「音声配信については、君、以前、とあるスペースに呼ばれてお話ししたことあるでしょう。あれで実績解除じゃない?あとアストロお嬢様部にも数度参加させてもらったでしょう!」
「あ、本当だ。お呼ばれでは何度かありますね」
「だから次は主催者側に回ることも考えた方がいいかもねぇ」
「ちょっとまだ、勇気が出ません…」
「まあ、お話するテーマはあった方がいいからそれが決まってからかなぁ…」
発信の妖精が、少しのんびりした言い方をしたので、くすぶり人間はホッとした。その様子を見逃さず、発信の妖精は釘を刺した。
「それでも何なら主催側に回れるのかを日々考えた方がいいと思うよ」
「は…はい」

【自分自身がどういう人間か知ること】

「君が1番わからなきゃいけないのは、発信の妖精が、つまり僕が、この姿でいるということだよ」
発信の妖精は、ぽつりと言った。そしてカバンの蓋を開けて、ぎっしり詰まった中身を見せた。中身はたくさんの封筒だった。宛名は書いてあるものも書いていないものもある。発信の妖精は何通かの封筒をとってくすぶり人間に手渡した。くすぶり人間は困惑したが、そして、どの手紙も封がされていないことに気づいた。
「封が、されてない」
「そうだね。君は、お膳立ての妖精みたいに有能なのが自分だと思いたいみたいだけど、君が目指すべきなのはそういう人ではないんだな。君に秘密は持てない。体裁を整えて、格好良く登場することもできない。君はいつか、心の奥底に眠っていた熱い思いを言葉にして誰でも読めるような状態にするかもしれない、きっとするだろう。今のまま続けていけばね…。でも、その過程がものすごく格好悪い場合も隠したりはできないんだ。だって君の手紙は決して封が出来ないんだからね。これまでも、これからも」
「???よく…わかりません」
「君自身がどういう人間かということだよ…。自分でないものには決してなれない。君が格好をつけるたびに、この手紙は1通ずつ燃えて読めなくなってしまう。だって封ができない手紙に無理に封をしようとするのだもの…」
発信の妖精は深いため息をついた。とても悲しそうだった。くすぶり人間は、初めてそこで、発信の妖精が傷ついていたことに思い至った。
「格好悪くてもいいんだよ。君はそういうのも全て、いや、そういうものこそ、封がされない手紙に書くんだ。そうすれば僕はもっと楽しくたくさん手紙をあちこちに飛ばせるよ」
「…ええと頑張ります」
発信の妖精が言っていることの意味はほとんど、わからないが反射的にくすぶり人間は言った。
「…頑張らなくてもいいから、妙なプライドは捨ててよ」
「妙なプライドは捨てる…」
「うん。それさえわかってくれたらいいんだ」
くすぶり人間はまた頑張りますと言いかけて、
「とにかく…とにかく書いてみます。下手でも、面白くなくても…」
と言い直した。
そうすると発信の妖精はぱっと顔を上げて
「そうだね。とにかく書いてね!妙なプライドは捨ててよね」と言った。
「もう一回言うね、妙なプライドは捨ててよね、とにかく書いて!」
発信の妖精は、やってきた時と同じようにまっすぐくすぶり人間の目を見た。
「どっとはらい!!」
発信の妖精はそう叫ぶと、メガホンを肩掛けカバンにぽんっと打ち付けて、すぐに消えてしまった。
後には封がされていない1通の手紙が残った。  
    
【発信の妖精(うちの)からくすぶり人間へ】 
・最終夜まで書けたのは頑張ったよ!!
・お題を借りた星見当番さんにはお礼を言おうね。
・このお題が終わっても、書くこと、発信することは続けよう。
・格好をつけて、成果だけ発表しようとするのはくすぶり人間には向いていない。経過を報告しよう。
・とにかく書け!
・妙なプライドは捨てろ!


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