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詩ことばの森(64)「旅の涯に」

旅の涯に

若い頃から
歩くのが好きだった

私の旅も
可能な限り
よく歩いた

真冬に
山奥のお寺まで
歩いたことがあった
住職が驚いていたが
私は気にならなかった
古い順礼の峠を
昔の人のように
ひとり越えてきたことで
旅情に深く浸れたのだと
うれしかった

今でも
私の旅はよく歩くが
山にはほとんど行かない
尾根道から滑落したからである
年寄る脚力の低下を感じたのである

最近は海に行くことが増えた
砂浜をひたすらに歩いていく
どこまでゆくのだろう
この旅の涯に何があるのだろう

この問いは   おそらく
若い時から変わらない
そして   今も答えはわからない
よくわからないものを
追い求めつづけている
そのことだけは
わかるのであるが


森雪拾

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