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詩ことばの森㉒「すぎゆく夏」

まだ暑い日がつづいていますが、暑い中にも、道端の草木から虫の音がきこえだすと、夏が終わる気配を感じます。海や山の自然に身をおいてみれば、風や光の様子が変わりつつあることを知ることができます。猛暑で苦しんだ日々も、秋めいてくればくるほど、どこか思い出のように懐かしいものです。今年の夏の思い出を、一枚の大切な絵や写真にして、心の額にしまっておきたい気がします。


すぎゆく夏


すぎゆく夏は ちいさな額にいれた
海辺でひろった 貝殻をそえて

自由をもとめた雲たちは まばらに
まばゆい光を うつしだしていた

船出した少年は 帆をおろして
たそがれの町に たたずんでいた

すぎゆく夏の海が 白い波とともに
山にむかって くりかえし呼びかけている

かわりゆく季節を 惜しむかのように


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