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詩ことばの森(62)「帰路」

帰路

帰り道は   なかった
とおくで犬が吠えてるわ
月夜のなかで   君がつぶやく
薄墨の土に   のびている
大きな木の   無数な枝影を
うつくしいと
君は言ったかどうか
もう忘れてしまったけれど

犬はたしかに
私たちのあとをつけてきた
森の湿地に浸された
悔恨の花の匂いを
嗅ぎ分けて

僕は耳をすませながら
小さな足音を
探ろうとした
それは   やがて
深い闇のうちに
消えていった

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