見出し画像

詩ことばの森(55)「あの夕日が」

あの夕日が

あの夕日が沈んでしまえば
今日という一日は終わるのだ
どんなに追い求めようとしても
あるいは背を向けようとしても
僕の人生には関係のないことだ

また日は沈む  というが
僕らには  はたして
または  あるのだろうか
今日という一日は
今日だけだということ
もう二度と
同じ夕日を目にすることはない

長い海岸の道を
走り去る自転車の君は
夕日なんか見ないで
夕暮れの町に
消えていった
君のつぶやいた
言葉にならない言葉の
カケラばかりが
乾いた砂に落ちると
音もなく埋もれるだけだ

いったいなにを
残したというのだろう
僕らの姿は
夕日の前に
打ち捨てられた
流木よりも
はかない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?