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おそ松さん。

おそ松くんならぬ「おそ松さん」が大人気である。

私が子どもの頃は「おそ松くん」だった。昔のやつじゃないカラー版の方。

この「おそ松さん」にJKドカ弁、JSちゃっかりも夢中なのである。

チビ太、イヤミ、六つ子の兄弟にトト子ちゃん。

登場人物は変わっていないのに、なぜか六つ子たちは23歳くらいになっていて、全員無職のニートになっているという設定である。

六つ子の声優さんたちは、今大人気のイケメン声優さんが担当しているそうで、もはや昔のおそ松くんのストーリーの面影はなく、ひたすらスピーディな展開で畳み掛けるギャグが面白い。

グッズや雑誌も飛ぶように売れているようである。

姉妹も昨年末からおそ松さんパーカーなどをいつの間にやら予約し、ドカ弁が黄色、ちゃっかりが赤のパーカーを着ている。

パーカーの前面には松の形が描かれている。

其々自分のお気に入りの六つ子がアニメの中で着ているのと同じものを着て、毎日録画した「おそ松さん」を繰り返し観てはニヤニヤしているのだから、何が何やらである。

私が見知ったアニメおそ松くんの主役級といったらなんといっても歯が突き出た「イヤミ」であった。

しかしイヤミは今回前面に出る役どころではなく、むしろイヤミが正論を言い、六つ子を嗜める様子が見えるのが不思議な感じがする。

声優さんが好きだから「おそ松さん」も好き!って感覚なのが今の10代の子どもの新常識のようである。

六つ子全員が成長したもののニートになっている設定で、おそ松くんを「おそ松さん」にしたこのアニメ。

マイナス要因になりうるかもしれない設定を見事に吹き飛ばし、ニートでダメな様子の六つ子たちが、現代の若者の心を掴んでいる。

将来こうありたい、こうあらねばならないとか、先で苦労しないために今頑張っていい学校に行かなきゃとか、現実の子どもたちは親や教師から「可能性や選択肢を広げるためには頑張らねば!」とハッパをかけられている子が多いのだろう。

皆がそのレールから外れないよう、せっせと勉強し、学校や塾に通い、大人が考える「良い将来」と言われる道を走り続けている中で、このゆるいふんわりしたニートの六つ子たちは子どもたちの心を和ませるのかもしれない。

ずる賢くて、自慢大好きなキャラ立ちするイヤミは隅っこに追いやられ、目標もなくただ親の脛をかじっているダメな六つ子たちが「かわいすぎる!」と人気者になっている。

私が子どもの頃は、今ほど親たちは子どもに干渉しなかった気がするが、自分でこりゃまずいと気づいたら微調整しながら生活していたように思う。

今のドカ弁たちは、どちらかといえば真面目なんだなぁって子がすごく多い。

小さな頃からお稽古事や塾には親の送迎が当たり前だし、親の目を盗んで「今日はサボッてやろう」なんて考えたり実行したりする機会もないまま成長している子がほとんどだと思う。

きちんとした生活を強いられる暮らしの中で「ニートだっていいじゃない」と明るく過ごす六つ子たちは、窮屈すぎるくらい真面目な子どもたちの救いになっているのかもしれない。

「おそ松さん」を観て、「自分よりダメな人がいる」と安心するのではなく、ピンチに遭遇したとき「ダメでも生きていける!思いつめることはないんだ!」と考える子が増えることを願いたい。

#エッセイ

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