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桃から生まれない桃太郎

「AIは感動するドラマをつくることができるのか?」
この問いを考える連載をスタートします。
UNIVERSITY of CREATIVITY星出祐輔です。
 
10月に『AIバグ脚本術』と題して、劇作家のオノマリコさんと演劇演出家の田中圭介さんとAIの面白さを引き出して脚本を書いてみるゼミを開きました。
 
恋に落ちないロミオとジュリエットのプロットを作って当たり前を壊すことを楽しんだり、たくさんの童話を組み合わせて異世界ミュージカルを描いてみたり、秘密の禁止事項をつくってAIにあえて遠回りさせてみたり、プロットを分解して編集者目線で何度もリテイクを繰り返したり。脚本やドラマの新しいつくり方を模索しながら、人間とAIと世界の関係を創造的に編み直す実験プログラムを行いました。まずは、その取り組みのいくつかを数回にわたって紹介していきます。

桃太郎×AIバグ脚本術
まずは「桃太郎」のプロットを起承転結で分解します。

プロンプト(問いかけ)
「桃太郎」を起承転結に分解してください

起:桃からの誕生
ある日、老夫婦が川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきます。夫婦が桃を開けると、中から健やかな男の子が現れます。彼らはこの子を「桃太郎」と名付け、大切に育てます。

承:鬼退治の決意
桃太郎が成長すると、近くの島で人々を苦しめる鬼の話を聞きます。彼は鬼を退治することを決意し、老夫婦は彼にきびだんごを作って旅立ちの支度をします。旅の途中で、犬、猿、キジと出会い、きびだんごを分け与えることで仲間にします。

転:激しい戦い
桃太郎と仲間たちは鬼の島に到着し、鬼たちと激しい戦いを繰り広げます。最初は苦戦しますが、桃太郎の勇気と仲間たちの協力により、次第に鬼たちを圧倒していきます。

結:平和の回復
桃太郎は鬼の首領を捕らえ、鬼たちに悪事を悔い改めさせます。そして、鬼が奪った宝物を村に持ち帰ります。村人たちは桃太郎の勇気を讃え、以後、彼は英雄として語り継がれるようになります。

この物語は、正義と勇気、そして仲間との絆の重要性を伝える、日本の伝統的なお話です。

 ChatGPT4利用

AIは整理整頓・要素還元化が得意です。その能力を活かして、起承転結や序破急のプロットに分解します。ここまでが準備基盤づくりです。
では、人間だったら混乱するような問いかけで、AIにむちゃぶりしてみましょう。

プロンプト(問いかけ)
「桃太郎」と「三匹の子豚」と「鶴の恩返し」と「浦島太郎」を融合して新しい物語を作ってください

起:桃から生まれた少年と不思議な出会い
昔々、大きな桃から桃太郎という勇敢な少年が生まれました。同じ頃、彼は三匹の子豚と出会い、友達になります。ある日、桃太郎は川辺で傷ついた鶴を助け、その鶴は彼に感謝のしるしとして美しい羽衣を残して飛び去りました。その後、桃太郎は海岸で不思議な亀と出会い、海の王国への冒険に誘われます。

承:海の王国と亀の願い
亀は桃太郎と三匹の子豚を海の王国に連れて行きました。そこで彼らは、海の王国が鬼によって脅かされていることを知ります。亀は王国を救うために桃太郎たちの力を借りたいと願いました。桃太郎と子豚たちは、海の王国の人々を助けるために協力することを決意します。

転:鬼との戦いと羽衣の魔法
桃太郎たちは鬼たちとの激しい戦いに挑みます。戦いが激しさを増す中、桃太郎は傷ついた鶴からもらった羽衣を使い、その魔法で鬼たちを圧倒します。しかし、鬼の王が現れ、戦いはさらに厳しくなります。

結:平和の訪れと新たな伝説
最終的に、桃太郎と子豚たちは協力して鬼の王を倒し、海の王国に平和をもたらします。王国の人々は彼らを英雄として讃え、海の亀は桃太郎たちを元の世界に戻してくれました。桃太郎と子豚たちは村に帰り、助けた鶴と再会します。そして、彼らの冒険は永遠に語り継がれるようになりました。

この物語は、日本の古典的な民話の要素を融合させ、友情、勇気、感謝の心をテーマにした壮大な冒険を描いています。

 ChatGPT4利用

「浦島太郎」の乙姫との約束を破って玉手箱を開けて、おじいさんになってしまうシーンなどはないですが、犬・猿・キジの代わりに三匹の子豚が仲間になり、舞台は海の王国になり、鶴の羽衣も物語の中で重要なアイテムになっている。ここからプロットを磨いていくと「努力」「友情」「勝利」の少年マンガ仕立てにできそうです。ハッピーエンドにしない読後感も作れるかもしれません。

では最後に、そもそも「桃」から生まれない設定にするとどうなるのでしょうか?前提条件や無意識の常識(バイアス)を壊す試みです。

プロンプト(問いかけ)
桃から生まれない桃太郎の物語を起承転結で記述してください

起:失われた王子
昔々、ある王国に王子が生まれましたが、邪悪な魔女によって森へ連れ去られてしまいます。王子は、森の中で一人の老夫婦に拾われ、桃太郎と名付けられて育てられました。彼はその出自を知らず、平凡ながらも幸せな日々を送っていました。

承:桃太郎の冒険
桃太郎は成長し、森の奥深くで不思議な桃の木を発見します。この桃の木は、彼の運命を変えるきっかけとなりました。ある日、鬼が近隣の村を襲い始め、桃太郎は村人を助けるために立ち上がります。彼は、桃の木から落ちた桃を食べて力を得ると、勇敢に鬼退治の旅に出発します。

転:真実の発見
桃太郎が鬼を退治しようとする中、魔女と対峙することになります。その戦いの最中、魔女から衝撃的な事実を聞かされます。桃太郎が実は王国の失われた王子であることが明らかになります。彼は自身の出自と、なぜ魔女によって連れ去られたのかを知り、混乱します。

結:王国の平和
桃太郎は魔女を倒し、鬼たちを鎮めます。彼は自分の出自を受け入れ、王国に戻ることを決意します。王国では彼の帰還を喜びで迎え、長年の謎が解決されます。桃太郎は王子として、そして英雄として王国の人々に愛され、平和な時代を築いていきました。

この物語は、桃太郎が自身の出自を知り、運命に立ち向かい、最終的には平和をもたらす旅を通じて成長する様子を描いています。桃は彼の力の源となり、また彼の運命に深く関わる象徴として物語に織り込まれています。

ChatGPT4利用

桃太郎に葛藤させるという人間ドラマの要素が加わってきました。主人公の信念や価値観を揺るがすシーンを入れたり、クライマックスの画を強くしたり、見せかけの勝利≒ミッドポイントをつくったり、ここから磨いていくと一つの物語として成立しそうです。

せっかくなので「桃から生まれない桃太郎」を絵にしてみましょう。

桃から生まれない桃太郎(ChatGPT利用)

ファンキーでポップな、パリピな「桃から生まれない桃太郎」ができました。画像にすると予告編を作りたくなってきますね。
「花魁・桃太郎」「ラッパー桃太郎」「朝まで桃太郎」など新しいモノガタリにも発展できそうです。

このような形で実際に物語を生成しながら、「AIは感動するドラマをつくることができるのか?」を考える投稿をしていきます。

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