「AIは感動するドラマをつくることができるのか?」
この問いを考える連載をスタートします。
UNIVERSITY of CREATIVITYの星出祐輔です。
10月に『AIバグ脚本術』と題して、劇作家のオノマリコさんと演劇演出家の田中圭介さんとAIの面白さを引き出して脚本を書いてみるゼミを開きました。
恋に落ちないロミオとジュリエットのプロットを作って当たり前を壊すことを楽しんだり、たくさんの童話を組み合わせて異世界ミュージカルを描いてみたり、秘密の禁止事項をつくってAIにあえて遠回りさせてみたり、プロットを分解して編集者目線で何度もリテイクを繰り返したり。脚本やドラマの新しいつくり方を模索しながら、人間とAIと世界の関係を創造的に編み直す実験プログラムを行いました。まずは、その取り組みのいくつかを数回にわたって紹介していきます。
桃太郎×AIバグ脚本術
まずは「桃太郎」のプロットを起承転結で分解します。
AIは整理整頓・要素還元化が得意です。その能力を活かして、起承転結や序破急のプロットに分解します。ここまでが準備基盤づくりです。
では、人間だったら混乱するような問いかけで、AIにむちゃぶりしてみましょう。
「浦島太郎」の乙姫との約束を破って玉手箱を開けて、おじいさんになってしまうシーンなどはないですが、犬・猿・キジの代わりに三匹の子豚が仲間になり、舞台は海の王国になり、鶴の羽衣も物語の中で重要なアイテムになっている。ここからプロットを磨いていくと「努力」「友情」「勝利」の少年マンガ仕立てにできそうです。ハッピーエンドにしない読後感も作れるかもしれません。
では最後に、そもそも「桃」から生まれない設定にするとどうなるのでしょうか?前提条件や無意識の常識(バイアス)を壊す試みです。
桃太郎に葛藤させるという人間ドラマの要素が加わってきました。主人公の信念や価値観を揺るがすシーンを入れたり、クライマックスの画を強くしたり、見せかけの勝利≒ミッドポイントをつくったり、ここから磨いていくと一つの物語として成立しそうです。
せっかくなので「桃から生まれない桃太郎」を絵にしてみましょう。
ファンキーでポップな、パリピな「桃から生まれない桃太郎」ができました。画像にすると予告編を作りたくなってきますね。
「花魁・桃太郎」「ラッパー桃太郎」「朝まで桃太郎」など新しいモノガタリにも発展できそうです。
このような形で実際に物語を生成しながら、「AIは感動するドラマをつくることができるのか?」を考える投稿をしていきます。