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酒屋のかんしんパン案件

こんにちは。
JR 小出駅から徒歩1分、新潟県魚沼市にある酒屋「富士屋」の娘です。

タイトルを見て「かんしんパン?なんの話?」と疑問に思った方もいるかもしれません。いったい何かというと、そのはじまりは『ぶたぶたくんのおかいもの』という一冊の絵本にあります。

『ぶたぶたくんのおかいもの』
土方久功 さく/え
福音館書店


ちょっとブキミな二足歩行の子豚(ぶたぶたくん)が表紙に描かれたこの絵本。ぶたぶたくんがお母さんに頼まれておつかいにいくというお話です。そのなかで、ぶたぶたくんはパン屋さんに行くのですが、ひとりでおつかいにやってきたぶたぶたくんに感心したパン屋のおじいさんが「かんしん かんしん」と言って「かおつきぱんの じょうとうぱん」をぶたぶたくんにあげるという場面があります(ぶたぶたくんが提げている買い物かごに入っているのがそれです)。

子どものころの私はその場面をなぜかいたく気に入ってしまい、いつの間にか我が家では(とくに母と私の間で、ですが)、思わず感心してしまうこと、褒め称えたいことを「かんしんパン」と呼ぶようになりました。
ちなみに、どれくらい感心したかは「かんしんパン」の個数で表します(座布団10枚、みたいに)。


そんな我が家の、最近のかんしんパン案件がこちら。

これのどこが かんしんパン?と思われるかも知れませんが…

我が家では毎年、冬になると店(兼自宅)の建物周りに消雪ホースを這わせています。屋根に付いたセンサーが積雪を感知すると自動で屋根から水が出て、その水が消雪ホースをつたい、雪を溶かしてくれる仕組みです。もちろん人の手でも除雪を行いますが、それだけでは間に合わない場所をこうしてホースで補っています。雪国ではお馴染みの暮らしの工夫です。

三月も終わりに近づいたころ、雪解けも進み、もう雪が降る心配もないだろうということで、母が消雪ホースを片付けてくれました。その数 およそ20本。短いもので1m、長いものでは20m近くあります。それを1本ずつ 洗って、乾かして、巻いて…とかなり骨の折れる作業です。

わざわざ洗う必要あるの?と思われるかも知れませんが、冬のあいだじゅう地面に這わせていた消雪ホースは、砂や泥で汚れています。そのまま片付けようとするときれいに巻く事ができず、来シーズンには砂や泥が固まってパリパリになり、うまく這わせることができないのです。

私が店番をしている間、母は外でひたすら ホースを洗って乾かして巻いて、を繰り返していました。しかも花粉が舞う中で鼻を ズビズビ 言わせながら、2週間かけて。

洗って
乾かして
巻く。


私は定休日に少し手伝ったくらいで、あとはすべて母がやってくれました。これは、かんしんパン100個でも足りないくらいの案件です。
本当に、かんしん かんしん、 かんしんパンです。


振り返ってみると、かんしんパン案件は他にも。

父がいつも頭を下げて「いただきます」と「ごちそうさま」を言うこと。
姉が、たまの気晴らしにと母を遠くまで買い物に連れていってくれること。
兄が職場で余った木材を店の薪用にと トラックで運んできてくれること。
家族みんなが毎日ご飯を食べてお風呂に入って眠れること。
今日も一日無事に生きていること。

全部、かんしんパンです。


かんしんパンがもし本当にあったら、どんな味かな…とたまに想像します。
多分、噛みごたえがある硬めのパンで、しっかり小麦の味がして、それでいて中には、たっぷりカスタードクリームが入っている…重みがあって、ご褒美感のあるパン…(ただの自分好みなパンになっちゃってますね笑)。

そんな、自分なりの「かんしんパン」を、今度作ってみようかな。
そして、家族やまわりの人に「かんしん かんしん」といいながら渡せたらおもしろそうだなと想像する、酒屋なのでした。

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