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Mapf Dingbats Episode II

前回のピクトグラムをフォントにするという話の続きで、少し絵文字について話そう。え? 何故絵文字かって? 実を言うとこの回は先月の7月17日が絵文字の日ということで、実にタイムリーな感じなので、そのあたりに合わせてと思って温めていた企画だったんだけど、前回途中から地図の話を始めてしまったために収拾がつかなくなってグダグダに……絵文字の話をするはずが……まぁお察し下さい。結局一月遅れになってしまったんだけど、その後絵文字に関してはいろいろ新しい話題もでてきたので、それを含めて仕切り直し、とは言ってもいつもの如く、書いてるうちに筆が乗ってどうなるかわからないので、あらかじめ謝っておきます。すいません、なんか今回も最後まで辿り着けるかどうかちょっと不安です。


さて、Dingbatsというのが記号のことだよというのが、まぁ、前回の話の枕で、これらの記号に分類されるグリフが、符号化文字集合および文字符号化方式等を定めた文字コードの業界規格、単独にして単一の大規模文字セット、通称Unicodeと呼ばれるその業界規格の中にいったいどれくらい紛れ込んでいるかということで……まず最初にその数を数えてみよう。

現時点でUnicodeは111万文字以上を収録可能というその空間の1割ちょっとを使用して13万6千を超えるキャラクターと130を超える文字集合をコード化している。現時点という言い方をするのは、この規格はバージョンアップを繰り返す度に含まれる文字集合の数が、小形克宏いうところの世界征服を目論む陰謀組織「Unicode帝国」の人々の投票によって増えていく……というそんな仕組みになっているからだ。

現時点でその文字集合の中でも最も巨大なものは、言わずと知れたCJK漢字の約8万8千字で、現在Unicodeとして使用されている空間全体の実に6割ほどを占めているのだけれど、記号に当たる文字というものも、それに続くぐらいには大きい空間を占有している。

で、それがどれくらいかというと、まず「?」とか「๛」とかの句読記号でこれが750以上。丸数字なども含む数字記号も1500を超える。それに1750にものぼるダイアクリティカルマーク。それからトランプ、タロット、ドミノ、麻雀、チェスから音楽記号など、びっくり箱の中身のをひっくり返したようなバリエーションあふれる色々なマークや記号……どう分類すればいいのかよくわからないので全部ひとまとめにして数えると、これがなんと6800以上となる。さらに絵文字に至っては今でも新種が次から次へと開発されるので最終的にどこまで増えることになるのかはまったくの謎だが、それでも現在時点で2600以上の数におよぶ。なのでこれらの合計は軽く1万3千を超え……って、なんだ、ハングルよりちょっと多いくらいじゃないか……それでも有効なUnicode領域全体の1割ほどが何らかの記号によって占められるという計算になる。この中には国土地理院の地図記号のようなものの一部もコード化されて含まれてはいるのだが、国土地理院の地図記号という名前でコード化されているわけではないので全部が揃うわけでは無い。色々と大人の事情によって文字が追加されているのだけなので地理院が別になにかしたというわけではない……多分。

実をいうとISOではUnicodeへ文字を登録する際の原則と手続きとして、例えばロンゴロンゴのような未解読文字、ファイストスの円盤文字のような意味不明な記号、文章を書くのに使われない図形、気象記号のような単独で用いられるシンボル、占星術や錬金術記号など特定の文化宗教に依存する記号等々を「追加すべきではない文字」であるとする規定が存在する。これにのっとると本来記号が収まる場所は無いはずなのだが……ちなみにこの原理主義的考え方をN3452主義というのだそうだけれど、それはともかく、そういう原則が存在するにも関わらず、文字のコードの中によくわからない記号がなんと1割以上も紛れ込んでいるというのは、もう国際標準化機構からすれば帝国の連中は規則を守るつもりのない不良集団の集まりにしか見えないだろう。まさに悪の組織の面目躍如だ。ところで上で挙げた「追加すべきではない文字」はその全てがUnicodeに登録されていることは言うまでもない。勿論、会議の過程を見ればそれなりの理由があるのはわかるのだが……このあたり、一応、帝国の意志決定過程は全てオープンなので、コツコツ調査する気さえあれば、誰がパルパティーンで誰がベイル・オーガナだったかくらいは判るようにはなっているはず。まぁ今のところはね……。

で、まぁ、その絵文字だけれども、成り立ちはご存知の通り前世紀の日本に発する。もっとも最初の絵文字がどこで生まれたのかは、すべての技術的進歩の過程というものがそうであるように……つまり、まぁ、正確なところはよくわからない。ポケベルの窓にも♥マークぐらいは表示できていたとか、ピッチのPメールとかでも使えていたよなぁという記憶から、かなり大昔からあったということだけは覚えている。Emojipediaの編集長Jeremy Burgeによれば、これも現時点ではの但し書きつきではあるが、確認出来る最古の文字セットはJ-Phoneの端末SkyWalker DP-211SWの90文字で、その登場は1997年11月1日だとしている。もっとも、この端末はあまり売れなかったので、本格的に普及しだすのはその翌年、NTTDocomoのiモードの登場あたりからということになるのだが、それはともかく、ある意味絵文字の馬鹿馬鹿しさを代表するといっても過言では無い💩のキャラクターはその最古の文字セットからも存在が確認されている。

とはいっても当時はまだこういうものは各キャリアごとにバラバラに作成されていてた。💩みたいな担当者の悪乗りもはなはだしい頭の悪そうなものののコードポイントを各キャリアで集まって調整しようという発想には最初からならなかったのだろう。また、初期にはキャリアのプラットフォームでしかメールをやりとり出来なかったということも理由の一つだ。互換性? いや、まあ、そんな金にならない面倒なことをするよりも、ひとりでも多くの顧客を他のキャリアから引き抜いてくることにコストを使えよ! というのも会社の本音だ。それにまぁ、こんなものはラインのスタンプみたいなものなので、あきられればそれで終わりになるだろう。標準化の意味がわからない……といったこともあった。つまるところ日本の通信会社は自分たちが、いったいなにをやらかしてしまったのかということに関してこのときはまだ呆れるほどに無自覚だった。

そういうことで、各通信事業者は絵文字のコードポイントの調整をほとんどしていなかったため、ネットでプラットフォーム間の相互通信が可能になると今度はユーザー達が社会的混乱の危機に直面してしまう。それに対してキャリアは、仕組みは詳しく説明しないけど、相互変換方式という接続可能なキャリアがひとつ増える度に幾何級数的に手間が増えるというやってはいけない最悪の解決方法を選択してしまったためにGoogleが日本でGmailを普及させようとしていたころには、既にもう本当に収拾がつかなくなってしまっていた。しかしこのとき何故かGoogleは、自身のGmailに絵文字を採用することを決断してしまう。Googleは絵文字の採用が日本とアジアにおける自分たちのプレゼンス拡大に関わる重用事項のひとつだと認識してしまっていたためだ。それと同時に日本の通信事業者に対してコードポイントの混乱を一挙に解決するというその金にならない面倒な仕事に志願すると言い出した。各キャリアは大喜びで提案を受け入れ、その結果これ以降もうデススターの設計図は通商連合……じゃなかった、絵文字に対するイニシアチブは、通信3社のキャリア連合から奪われGoogleやAppleなどが主導権を握る……つまり帝国の連中の手の中へ、かっ攫われてしまうことになるのだけれども、まぁ、その後の話はどうでもいいよね? 簡単に言うと、もともと日本のローカルな文化だったそれは主導権を乗っ取った帝国の手によって大改造されることになるのだが、もっとも帝国自体もその結果、絵文字のダークサイドに触れることによって変質していく。「世界の文字を集める」といった、まぁなんというか比較的ぬるく牧歌的な願望をもっていた共和国を「世界を文字で征服する」という過激な野望を秘めた帝国へと変質させてしまうのだ。シスの暗黒卿は誰だ! っていう……まぁ、そういうお話。どう? インペリアル・マーチが聞こえてこない? 

しかし、絵文字をEmojiとネーミングしたのは、まさに慧眼、この文字が意味ではなくemotionを伝えるために存在するのだというそのことの本質を的確にいいあらわしている。GoogleがAndroidQの宣伝に「伝える言葉が見つからないとき、つたわる文字がここにあります。65文字増量キャンペーン!」みたいなコピーを使っていたけど、え? 超訳が過ぎる? まぁ、大体あってりゃいいでしょ? そんな感じ。

それで、そういうわけなのでガラケー時代の絵文字は絵文字でいいけど、できればEmojiを直訳する場合にはエモい文字という感じで「エモ字」と呼んでさしあげたい。いや、もう、そのくらい、もはやルーツの絵文字とはアナキン・スカイウォーカーとダース・ベイダーぐらいの違いが出来てしまった感じなんだよねコレ。というわけで以下からはEmojiのことは絵文字ではなくエモ字って呼ぶけど誤植じゃ無いからね。

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それで、今年のエモ字の日の前日……つまり先月の16日に帝国からのアナウンスがあって……これも主にはGoogleからの提案だったと思うのだけれど、Appleが始めた多様性への対応をさらに推し進める形で、あらゆる色の肌や髪をした人物から、性差を明確にしない人物、あらゆる職業と性別の掛け合わせ、そんなかんじでドンドンしっちゃかめっちゃか……というかエモ字自体が素性文字化して兇悪な順列組み合わせにチャレンジしているので……なにしろ今度のAndroid QとiOSではカップルを表現するエモ字をそういうふうな理由で一挙に71種類に拡大するという暴挙……失礼、快挙に及ぶということまでやってのけているのでね……あれ? さっき65文字増量って言ってなかったっけ? いや、そう、増えるのは65なんだけど今みたいな順列組み合せは数にはいっていないんだよね。なのでそれもあわせて数えると実際に増えるグリフの数は200を優に超える。いやホント……まぁそれでも、まだその方針を家族のエモ字に拡大するというところにまでは至っていないのでそれくらいで済んでいるだけなのだが……だいたい親子最大四人で家族っていうのも……おじいちゃん、おばあちゃんは良いのかとかイスラム圏みたいに奥さんだけでも四人いたりするともうえらいことに、ペットの犬猫も家族の一員……いやそもそも家族が異性共同体である必要性すら……なんていう『GQ JAPAN』9月号みたいなこといいだしたらキリがないんだよなぁ実際……まぁそれはともかく、現状でさえこんなことになってきているんで……エモ字の色とか向きなんかを変更するためのメカニズムを見直し、この技術的方法の検討にはいりましたという、そういうアナウンスがありました。それで、そのあたりも含めて今後いったいどういうことになってしまうのかというのは10月の第43回帝国議会……じゃなかった、Internationalization and Unicode Conference(IUC43)をお楽しみに……という感じになってきている。まぁ、そういうこと。それで結論として結果こういうことなので、文字数というものは増え続けこそすれ、これを整理削減しようという気配というものはさらさらない。

しかし、Emoji バージョン12.0のエモ字2600字っていうのも、もう、そろそろ本気で辞書字典作らないとどうにもならないというレベル。なにしろ類書中最大を誇る三省堂の小学漢字辞典でさえ親字で3200あまりだからそれに迫る勢い。小学生の漢字ですら全部覚えてるかどうかも怪しいのに……エモ字だけで会話できるレベルだとは言うけれどフロントエンドプロセッサの工夫がないとどうしようもできないなコレ……Googleは誇らしげにWhen you can’t find the words, 65 new emoji are here for youとかっておっしゃっていますけど、こんなにあると言葉が出てこないどころか、逆に目的とするエモ字すらcan’t findだよ……簡単にみつけられる気がしない。絵文字検索のときに重宝しているLet’s EMOJIは、なんかTwitterが6月から更新止まっちゃってる感じなんで、12.0に対応が追いつきません。もうお察しください……的なことになってます?……いや、その辺わからんけど。ちなみにemojipediaのほうは、次次期バージョン13.0のドラフト候補ページまでが存在する。


まぁでもぶっちゃけこのあたりのカオスっぷりというのも、ひとつの文化の成立過程に付き合わされているのだとすれば……納得出来るかということはともかく、理解できなくはないということもないということもないのだろうが……帝国は本気で世界征服を目指しているのかも……いや、もう、ホントに……しかし、今、嫌なことに気が付いたけど、これほど普及しているにも関わらず、このエモ字っていうのはもしかして、誰にも手書きされない文字なのではないだろうか……絵文字で書道とか聞いたことないし、文字のデザインもどんどん複雑になっていってるように思うので、読めるかもしれないが思い出して書いたりできるかというと、そういう気がしない……まぁ、それが出来たとして、そのことに意味があることなのかどうなのかはまた別だけど……そうだなぁ、でもまぁ、それはそれで面白そうだから、別で何かやってみてもいいのかも……ん〜〜。

で、まぁ、それもともかく、話を戻すと、さっき言いかけたけど、Unicodeでは当然地図記号も一部コード化されている。で、具体的にはそれが、どこにあるかというと、これの位置をちゃんと捜そうとする場合、また結構難儀だ。いろいろなものが、理不尽に、てんでんばらばらな位置に分散している。一応エモ字ではU+1F680から1F6FFがTransport and Map Symbolsとなっていて関連したものがまとまっているように見えるブロックは存在するにはするのだが、1F680のロケットから始まり、1F6A4のスピードボートまでが乗り物。続く1F6A5からが信号機やパトライトなんかのTraffic signsに割り振られ禁煙やトイレマークなどのSignage and other symbols、Accommodation symbolsなどを経て、やっと地図記号らしいものが1F6D0の礼拝所のピクトグラムからって感じなんだけど、数えるほど、この後も空いているスペースが見つかると、そこに軍用機やら消防車、果ては空飛ぶ円盤やらトゥクトゥクに至るまでのいろいろな乗り物が後から後から侵略してきているので……のりもの図鑑かよ! ん〜、このブロック周辺に地図的な何かをまとめるというのは本当は無理があったんじゃないの……いや、まぁ無理と言えば乗り物と地図記号を一緒に分類しちゃった流れにも無理があるような気もするんだけど……まぁそこはいいや……また、もともとJISからの流れで特殊文字に扱われていたものや、そのときJISからあふれちゃったんだけど日本の電波産業会がデータ放送等のときに必要なのでコード化して欲しいといって追加された外字の集合……これのなかにも地理院の地図記号が含まれていて……これはARIB外字として国内で規格化されたので、この部分も後からUnicodeにもマッピングされることになった。そのためもともとあった日本語の特殊文字のブロックとは別の位置のMiscellaneous Symbolsなんかの位置に割り振られたりしているものもあるので、他にもいろいろあるのだけれど、このあたりも相当にややこしい。

もちろんこうなってしまった理由は明確だ。さっきも話したとおりピクトグラムや地図記号はもともと規格が成立した初期にはN3452主義で、追加すべき文字としては認識されてはいなかったからだ。今でもUnicodeで国土地理院の地図記号を全て登録しろという提案には、ちょっと無理があるだろう。ところが、どんなルートにも抜け道というものはある。それが、まぁ今回の……というか本来は前回話すべきテーマでもあったのだけれどトホホ。


そう、まぁ、お察しの通り延々と絵文字の話をしていたので気が付いた方もいるだろうけど、N3452的にはNGなはずの国土地理院の地図記号のような単独で用いられるシンボルは、今やそのほとんどがエモ字で代用できてしまうのだ。で、あるならば、そのシンボルを使用して地図にはその位置にテキストを突っ込んで、フォントを変更してそのテキストを切り替え正しい地図記号のピクトグラムに差し替えてしまえばいいじゃん、というのがMapf Dingbatsのコンセプトだ。そういうアイデアをもとに設計された地図記号用のフォントというわけ。帝国の作り上げた巨大システムに穴を開けそこに自前のキャラクターを突っ込むという、なんという反乱同盟軍。気分はルークかハン・ソロか、May The Force Be With You!


さて、自分でいうのもなんだけど、このコンセプトの秀逸なところは、仮にMapf Dingbatsをもっていなかったとしても、それに対応するエモ字が表示されるため、ピクトグラムの意味を読み間違える……つまりフォントの差によるロスト・イン・トランスレーションを気にする必要がないということだ。前回言いかけたけど、エモ字ならこれがある程度可能になるので地図記号を文字化しておくメリットが生まれるという話でもある。

どういうことかというと……エモ字は単独でつかわれると、その絵の中に多くの意味が包摂される。たとえば「🛌」だけが単独で置かれた場合それが「眠い」なのか「寝ている」なのか「おまえの話しは聞きたくない」と言っているのかは前後の文脈次第なのだが、この形の文字が地図の上に置かれていれば「宿泊施設」を暗示していることは容易に想像できる。日本ではこれにあたる記号として、訪日外国人からはヘリポートや病院と混同するといった苦情の巻き起こっているらしいU+24BDの「Ⓗ」(CIRCLED H)を当てることがあるが……ただ、まぁ、エモ字の持つ意味からすればU+1F6BBにもうちゃんと「🏨」(HOTEL)を意味する文字があるのでその字を地図上においてそれだとなんだかやっぱり子供っぽいのでそこだけグリフを作成して🏨のエモ字とフォントを替えればいいじゃない? ということなんだけれど。

またこうしてフォントを切り替えることが可能になると、1つのコードポイントで特定の文化に依存する記号を柔軟に共存させるということも可能になる。

これも具体的に解説すると、エモ字には郵便局をあらわす文字が2つ存在していてそれがU+1F3E4の🏣とU+1F3E5の🏤なのだが、前者はともかく後者はラッパポストホルンまたは郵便ラッパ:U+1F4EF📯POSTAL HORN)のマークがポストマークだという認識が無い日本人は正露丸から薬局を連想するかもしれない。逆に欧州人にとっては🏣では意味不明だ。さらに地理院地図では郵便局は丸に〒の字の形、U+3036の〶(CIRCLED POSTAL MARK)をそれに当てている。ローカルには〠などという郵便局が独自で使っているマークもあるのでこれでもいいのだけれど、これらはさっき言ったみたいにエモ字とは別のブロックでコード化されているから、記号を統一的にあつかおうとするとまた面倒になる。そこで郵便局は一律🏣としておいてMapf Dingbats JapaneseとかMapf Dingbats European、Mapf Dingbats Japanese Kokudo-Chiriinのように別々にフォントを作っておいてローカルごとに切り替えて地図記号というドメスティックなピクトグラムの問題に対応しようというわけだ。さらには神社仏閣に使われている記号のような文化圏ごとに多少センシティブにならざるを得ない文字……という問題も、グリフがピクトグラムをローカライズしてしまうので、受け手の都合で勝手にナチスが想起させられて、文句を言われたり誤解が生じたりするケースなんかを心配しなくてもいいというメリットもある。

まぁ、で、結論として、何が言いたいかというと、ピクトグラムがノイラートやモドレイらによって発明、開発されてからほぼ100年、だいたい3世代ぐらいは経過するので、その後の進化は各文化圏ごとに現地化されすぎていて、もともとのコンセプトとはズレまくり郵便マークのように外との間で相互に理解が働かなくなってしまうピクトグラムも数多く存在しているという話。こうなってくると、もうその記号は、その文化圏でしか通用しないので、結果ピクトグラムで相互理解的な手法がまったく効かなくなるどころか相互誤解のもとにもなる。

日本では前回のオリンピック以来の成功体験が大きいので、いまだにこの方法をちゃんと極めれば言語を跨いだコミニケーション手段としての唯一で万能の解決策みたいになると考える人が多いかも知れないけど、そういうわけでもない。地図記号の例でいえばピクトグラムを訪日外国人にわかりやすくしてしまうと今度は逆に在日日本人にわかりにくくなってしまうというジレンマが存在する。それで、どっちにもいい顔をしようとすると中途半端なことになって誰にも理解出来なくなり、結果左右双方向から弾が飛んでくるという事態となる。この魔法が上手く働いているように見えるのは、前のオリンピックの時代に日本の優秀なデザイナーたちが大勢プロジェクトに結集して、初めて世界がそれらの視覚言語に触れ、以降のオリンピックでも継続的に採用され、世界中で持続可能的に発展していったという僥倖の賜物。勿論最初にデザインをオープンソースするよう提案したという勝見勝の先見の明も大きい。まぁ、こういう幾つもの偶然とマメなメンテナンスの結果なのでそういった国際交流の機会を逃すとピクトグラムも言語同様容易に孤立化する。また、その孤立化したイメージが強固に意識に固定化してしまうともう厄介だ。そのコミュニティの構成員は逆にそれ以外のイメージを受け入れがたくなるのでね。まさにconfusio linguarum……ということでエモ字で世界言語をという帝国のやっていることも神の怒りにふれなきゃいいけど……。

まぁ、なんにせよ、そういった感じで現代はエモ字の恋人たちにでさえ71種類もの多様性が求められている時代なのだから……オリンピック繋がりでいえば「いだてん」のお芝居みたいに大声を張り上げて「ユニバーサルに通用する全ての訪日外国人にわかりやすいピクトグラム!」などという、何をやっても炎上苦情がおさまらないようなことに無駄なエネルギーをつぎ込むよりは、それぞれの文化圏ごとにフォントを切り替えたほうが、よっぽど疲れないし、そもそもの目的には合致していると思うんだけどね……ただ、まぁ、そういう戯れ言もGAFAがemojiで世界征服なんてことになればまた変わってくるんだろうけど、その話もスターウォーズ並みに長くなりそうなので機会があればいずれまた。

さて、まぁ、そういうワケで、ここまではなんか、わりと良い感じにまとまったたので、ここから具体的な実作業の説明に入る……と、言いたいところなんだけど、実はまだ、とてつもなくでっかい穴が開いたままなのだ。

🕳

普通にデザインアプリを利用して作業していれば気が付くと思うけど、クリエーター側から見るとエモ字の使用は大抵鬼門だ。アドビのCCもやっとエモ字を表示出来るようになったとはいえ、アプリによってはエモ字の色や多様性を変更するためのメカニズムには対応できていないことのほうが多い。実際問題Illustratorもここに関しては全滅だ。それに加えて、肝心のエモ字のほうもフォントによってはちゃんとその規格に対応出来ていなかったりするというものもある……まぁ理由はあるのだが……ので、互換性ということに関してもグチャグチャ。予測可能な振る舞いを期待できないというところでもある。今のところ利用できるエモ字のフォントなんて数えるほどしか種類がないうえに、個人でデススターっじゃなかった、エモ字を製作しようなどという無謀な人間も少ないだろうから問題が発覚していないだけということもあったりするのだけれど、それらの問題にちゃんと対応するようにフォントのtableやfutureをどう書けばいいのかということも考えると、これもこれで結構悩ましい問題だ。バージョン12.0でちゃんと稼動している実物をリバースエンジニアリングしてみてみたいところでもあるのだけど……これもまたローグ・ワン以前の問題も多い……帝国軍を出し抜いて難攻不落の宇宙要塞にどうやって立ち向かうかというような実に難易度の高いミッションが待ち構えている。

まぁアプリは年末にヴァージョンアップもあるだろうし、10月の帝国議会の結論次第の部分もあるにはあるよというわけなので……次回のMapf Dingbats Episode III Revenge of the Emojiの上映は年末以降までお待ちください……って、いやいやホント。いったいなんのコッチャ?






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