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小説『新元号「平和」』

「新元号は、平和です」

菅官房長官は、笑顔でそう告げた。記者たちは、フラッシュを焚く者、ペンを走らせる者、出入口で出入りする者等様々だ。平和な物語が始まる誰もがそう信じて疑わなかった。

新元号平和では、元号達成改革として、第一党が平和のための政策の多くが進み、数えきれない法律が施行されていった。後にこの時代に法廷でコートに袖通していた定年後に司法試験を突破した日野源三郎弁護士によると、「確かに平和のためではあったが、後にも先にもあの時代の司法試験が最も詰め込み式教育だった」と語る。

消費税が3度に渡り増税したもこの元号のときである。
1度目の増税を時の首相は「平和のために」と言い、
2度目のとき大統領は「死んだ人間は金で生き返らないが、生きた人間は金で生かせる」と、
そして、3度目で国王は何も言わなかったが、多くの国民は「平和のため」と納得していた。
その結果、3度目の増税で一部の商品が消費税50%を超えて世界一の消費税となった。
これは、ほんの一例に過ぎないが、僕達の生活は「平和のため」にどこか窮屈になっていた。

私の娘の漆洋は小学校で、「平和のため」にプログラミング言語や相手のパソコンを見ることができる方法を教わり、「平和のため」に大学レベルの化学や物理を学ばされていた。反対に「平和のため」にならない文学や数学はほとんど教わらなかったという。

そんな中、日本をはじめとして、アメリカ、ロシア、フランス、インド等、世界各国では、サイバーテロが頻発していた。第五の戦場で、遂に第三次世界大戦が勃発したという訳だ。GAFAの個人データはばらまかれ、YouTubeの広告収入はデタラメになり、どの政府の核開発すらも、サイバー攻撃により直ぐに頓挫した。ネットでは、「#4V」(for peace)がデータと共に呟かれた。

そんなある朝、noteLIVEという動画配信アプリで、「パートナーのスマホをクラッキングする人の割合」が75%を超えると言った特集が組まれていた。いまや、誰もがクラッキングを当たり前のようにでき、他人の生活を覗き見できるのだ。最近では、大事なことをノートに手で書く人が大多数を占めた。

「友達の携帯はよく見るよ!だって平和のためだもん!」そういいながら、デスクパソコンに齧り付く漆洋を、私は見ていることしかできなかった。


最後までありがとうございました!
こちらでも同じ内容ですが、公開しております。
「新元号がもしも、「平和」だったら」
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