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圧倒的正義 - オラファー・エリアソン展 -

美しいものがつくれるって、素晴らしいなと感嘆してしまった。

ほんとうは、崇高な理念や理想を掲げているという、ただそれだけで素晴らしくあるべきで、実際素晴らしいと思う。

自由とか平等とか平和とか、自然との共生とか、愛とか、そうしたことが根底にあるというだけで、すべてのものはほんとうに尊い。

でも、O.エリアソンがつくる作品を見てしまうと、そうした素晴らしさがなんだか少しぼやけてしまうように感じる。

《蛍の生物圏(マグマの流星)》(2023)
《瞬間の家》(2010)


とてつもなく煌めく球体が回り続ける時の、移ろいゆく影が重なり合う時の、そして水が光に照らされる時の、その一瞬との邂逅に、ああ、美しいな、とほれぼれするとき、人間は圧倒的な魅力に対して本当に無力なのだと思う。

それは、美しさに対する服従のようですこし悔しい。美しければなんでもよいわけではないということを、わたしたちはちゃんと知っているはずだし。

それでも、彼の作品たちはどうしようもなく美しく、それゆえにただただ惹かれてしまう。

O.エリアソンは、そういうことをよくわかっているのかもしれない。環境問題に関心を寄せつつ、美しさでもってそこに光を当てようとしている。

崇高な理念が、美しさを媒介にして伝わるとき、それは本当に力だ。

圧倒的な正しさのまえで、理想しか持たないわたしは一体どうしたら良いのだろう。

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