見出し画像

配信ありきでゲームをデザインする

闇鍋人狼には観戦モードがあり、遊んでいる人達のゲーム画面を見れるだけでなく、観戦者も鍋に食材を投入することができます。これは、ゲーム配信文化を強く意識しており、またそこに付随する問題に何かしらアプローチしたいという意図もあります。

既存の問題意識やこれまで試されてきた事例を参照しつつ、闇鍋人狼をどうデザインしたかの議論を紹介します。

問題意識

ゲーム配信が一般的になった昨今、配信されたときどうなるか?というのはゲーム制作では避けて通れない要素です。過去にはフラッピーバードやAmongUsなど、最近だとスイカのゲームが配信をきっかけに盛り上がっています。人気のストリーマーに取り上げてもらえる、というのはゲーム制作、特に大規模な広告ができないインディー・個人制作の目指すべきことの一つでしょう。

一方で、取り上げてはもらえたもののさほど売上に繋がらないケースもあります。動画を見ている人が必ずしも全員そのゲームに興味があるわけではないので、わざわざ購入するほどではないと思われているかもしれません。

ストーリー重視のゲームが配信でだけ視聴して購入まで至らない、といった話は作り手の立場で考えると悲しいですが、消費する人の立場も理解できます。

膨大なコンテンツが溢れる中で、それらを軽く大量に消費したいというニーズは確実にあり、面白いかどうか分からないゲームを誰かが買って見せてくれるなら別にそれでいいや、というのは自然な感想です。

これらの話題は、ここ数年で様々な角度から議論されてきました。センシティブなトピックではあるものの、何かしらチャンスもありそうです。

視聴者が求めているもの

ゲーム配信という状況に絞って考えたとき、視聴者が何を求めているか?というのはバラバラです。

演者のことが大好きでその人の配信は何でもチェックする人もいれば、扱っているゲームに興味があって見ている人もいるでしょう。演者もゲームも知らないけどなんとなく暇つぶしで見始めたという人もいるかもしれません。

見ている人全体を考えるとモチベーションは色々あるので、求めているものを予測するのは難しいです。もっと具体的に言うと「何にならお金を払ってくれるか?」を予測するのは難しいでしょう。

なので、部分的に絞って考えています。例えば投げ銭をしている人のモチベーションは「応援したい」「コメントを読んでもらいたい」など、何かしら演者との繋がりを求めていると予測できます。

なので、一緒に遊べて楽しい、会話するきっかけになる、何か面白いことが起きて思い出になる、といった状況が作れれば価値を感じてもらえ、購入してもらえる可能性があります。

さくらみこさんの視聴者参加型企画はリスナーの皆さんもクリエイティブでとっても面白いです

ラーメン屋でカレーを売る

ゲームを作っているとき、デザイナは「ゲームを遊ぶ人が楽しめるように」という思いで作っており、それを商品価値として売ろうとしています。

これは、ラーメン屋がラーメンを作っている状況で例えられます。お客さんは美味しいラーメンを食べに来ているはずなので、店主としてはよりラーメンが美味しくなるよう頑張ります。

この例えの中でゲーム配信を表現すると、ラーメンを食べにきた1人のお客さんがカレー好きの友達をいっぱい連れてきてくれて、その人達が店の前にいる状況です。まだ店には入っていないので、美味しいラーメンを勧めるというのは一つの手ですが、カレー好きなことが分かっているならカレーを売った方が良いでしょう。

つまり、ゲームを作っていた過程で別のものを欲しがっているであろう人達にリーチする機会を得られたのでゲームとはまた別の商品を売るべき、という主張です。

音楽や映画だとこれは難しいですが、自由なソフトウェアでもあるデジタルゲームなら、いろんな商品を柔軟にデザインし併せて売ることはできるはずです。

せっかくお店の前まで来てくれたので、この人達が欲しがっているものも売ろう

既存の取り組み

視聴者にも何かしらの商品を売る、という試みは既に世の中にあります。

Mirrativ ライブゲーミング

ライブ配信アプリMirrativ内で遊べるゲーム群です。例えばエモモバトルドロップはプレイヤが車に乗って殴り合うゲームなんですが、プレイしている配信者の視聴者も一緒にゲームに参加することができます。

視聴者は一般的なゲーム配信のようにコメントするだけでなく、装備やアイテムを購入してプレゼントすることができます。いわゆる投げ銭をゲーム内アイテムに置き換えた形です。

fingger

finggerは演者と視聴者が一緒に遊べるゲームのプラットフォームです。視聴者のコメントがゲーム内に反映されるブロック崩しや、皆で参加できるクイズなど様々なゲームがあります。

Youtubeと連動しているのがポイントで、既存の仕組みをうまく活用していると思います。

Genvid

Genvidはライブ配信とゲームを組み合わせたサービスを提供しています。少し前話題になったRival Peakや、国内ではデモリッション ロボッツ KKの事例があります。

SDKが公開されており、これらの仕組みを自作ゲームに取り入れることができます。

鍋ライブ

さて、闇鍋人狼に話を戻します。このゲームで提供できるカレーは何でしょうか。

視聴者に商品を提供することを考えたとき、そもそもの世界観や舞台を都合の良いようにデザインすべきだと思いました。観客が自然に舞台に入り込めるようにして、そこで何かしらの価値を提供するということを目指します。

その結果生まれたのが鍋ライブです。プレイヤは料理を作る様子をライブ配信しているという設定にすれば、そこに観客として第三者が介入するのは自然な世界観です。

このシーンだけカメラが引きになっているのは観客も見えて皆で盛り上がっている感を出したかったからです

企画当初はリアルライブのように会場のS席を売る、ということを考えていたんですが断念しました。デジタル上で座席位置によるプレミア感を出すのは難しく、視聴者としてもあんまり楽しくなさそうです。

他にもスパチャのように目立つコメントを商品にする、という案もあったんですが、それならYoutubeなりTwitchなりそもそもの配信プラットフォームで買うだろうと思い採用しませんでした。

異世界食材の投入

単にコミュニケーションが取れる、ということはゲーム内で商品にするには弱いので、そのゲームならでは体験を提供すべきです。

闇鍋人狼では観戦者も鍋に食材を投入できるようにしました。視聴者は好きな食材(任意の画像)を鍋に入れれるので演者とのコミュニケーションのきっかけになります。

闇鍋は誰が何を入れたか分からない、という性質を持っているので世界観とも噛み合っています。

まとめ

ゲーム配信文化での問題意識と闇鍋人狼での試みについて紹介しました。界隈を取り巻く様々な課題がある中で、インディー・個人制作こそ何か新しいことを試してみるべきだと思います。

闇鍋人狼は現状そこまで知名度のあるゲームとは言えず、ここで議論したようなことはまだ試せていません。Steam版リリースをきっかけに何か起こればいいなと思っているので、ぜひウィッシュリスト登録お願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?