見出し画像

2斎王


一切の汚れを知らない雪のような顔を持つ女性が本を広げて椅子に座っている。産まれてから1度も太陽の光に照らされたことがないのだろうか?
 
雪の柔らかさは誰をも子ども時代にタイムスリップさせると同時に、1歩間違うと、飲み込まれて2度と抜け出せなくなる。彼女は私たちの存在を丸ごと受け止めてくれる、受容的な母なのか、冷徹に子どもの成長を阻止する魔女なのか、、
 
彼女の顔の白さは、夜空に輝く月を彷彿とさせる。顔の形はまるで卵のようだ。よく見ると彼女のそばには卵がそっと置かれているようにも見える。卵を孵化させるために必要なこと。それは暖かさをもたらす保護環境を保ち、じっと待つことであることは、鳥たちが教えてくれる。この女性は処女でありながら、産まれ来る生命を育てているのかもしれない。
 
彼女の顔の後ろにはカーテンのようなベールがある。ベールは何かを隠すために使われる?
私たちは月のベールを通してしか、他のものを見ることは出来ない。見てはいけないという忠告を破るのはいつも男たちである。そんな昔話はいくつもある。
 
秘密は守られることで初めて意味を持つ。しかし、彼女の持っている本は開かれているし、その本に視線を向けているわけでもない。家計簿なのか、勉強の教科書なのか、彼女の日記なのか、、それはわからない。
 
彼女は秘密の共有者を探しているのかもしれない。秘密は秘密を共有する相手がいることによって、意味以上の意味を持つ。よく見るとこの本は17行あるではないか!きっとそこにも意味があるのだろう。
 
この世に起こった出来事を本に書き止め、蓄積している。その無限の知識は披露される日を待ち望んでいる。母の元型である彼女は、私たちを無限の愛で育ててくれる。
 
そんな彼女を怒らすと、聖なる女神は物質的にも性的にも荒れ狂う存在になりかねない。月は変動が激しいのだ。
 
女性でありながら、斎王と言う名のカードであることから彼女は王である。しかし、古代の価値観からして、女性が王になることはご法度のはずである。彼女は自分の身分をも隠す必要があったのかもしれない。本当に大切なものは隠されるのである。
 
私たちにも秘密がある。【秘密は見てはいけない】という考えは無意識のうちにプログラムされている。それを乗り越える様々な工夫が、宗教や哲学、科学、心理学、そして占いなのかもしれない。(しかし、秘密を見るためのそれらの学びが逆に、秘密を隠すために使われてしまう、というパラドックスが起こるのが世の常である。革新が保守を打ち倒すと、その革新は保守へと姿を変えるのである)
 
彼女に受け入れられるためには、私たちが彼女を受け入れなければならない。
 
愛を育みましょう。無条件の愛を眼差しで示しましょう。斎王という名の王である彼女の無限の可能性をここに孵化させるために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?