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映画『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』レビュー

【マシュの尻が良い。あと黄瀬和哉はどこを描いたのだろう】

 来た、観た、面白かった。『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』に黒味なし。

 もちろん白味も歪みも崩壊も制作上のヤバい感じはいっさい無しに、前編からの物語をしっかり引き継ぎ前編以上のアクションを乗せて円卓の棋士ベディヴィエールの彷徨に決着をつけている。

 アーサー王の最期を看取ったという彼が、いったいどんな罪を背負っているのか。そして、今またどうしてアーサー王に対峙しようとしているのかが次第に明らかにされていくストーリーを骨子にして、復活しては世界を自身は救おうとしながらも、実際は一部の選民たちだけを残そうとする非道なものでもある-サー王の計画に、賛同をした騎士達を相手にしたそれぞれの戦いも描かれては、ひとつひとつに見せ場が用意されど派手なアクションが繰り広げられては納得のカタルシスをもたらして幕を下ろしていく。

 そんな連続に魅せられ続けて時間をしっかりと過ごしていけるから心配せずに映画を見に行くのが今はお薦めだと言っておく。

 詳細について、とりわけベディヴィエールの存在している意義については観てのお楽しみとして語ることは避けたいし、ファラオにして太陽王オディマンディアスによる尊大にして尊厳にあふれた振る舞いも、映画で観て驚いて欲しいから何かを観たとだけ言っておく。いやもうすでに言っていたか。

 ここで展開とは別に讃えるならば、一時、どうにもけだるげな演技ばかりが耳についてすっかりやる気を失ってしまったかのように思えた子安武人が、この数年またぐいぐいと声の艶を取り戻していたように感じていたのが、ここに来て一気に大爆発したといったところ。全身を震わせる子安叫び(こやす・さけび)を聞くだけでも、映画に行く価値はある。

 あとはマシュとランスロットの不思議な縁とか。ゲームの『Fate/Grand Order』を一切触っていない人間なので、そういう設定が以前から有ったのかどうかは知るよしがないけれども展開の中、まずはど派手にしてど迫力のバトルが繰り広げられ、高圧に押しつぶされそうになってしゃがみ込み、耐えるマシュの筋肉が膨れあがったマッチョなボディスタイルに感嘆したその後に、明かされてはやりとりされるマシュとランスロットの会話に心をザワザワさせられる。傍目でもそうならランスロットに心中かばかりか。文字通りに心臓に悪そう。

 ニトクリスだとか三蔵だとかの活躍もなかなか。三蔵はあれで坊さんのくせに円卓の騎士に説法して納得をもたらすのだから、仏教とはなかなかな宗教なのかもと思わせる。それとも三蔵の巨大な胸から違う何かビームのようなものでも放たれているのか。とまあそんな個別のバトルを経た果てにたどりついた決戦から先、起こった世界の救済のその先に、何があるのかが仄めかされてはいたけれど、やっぱりゲームをやらないのでどういう意味があるのか分からない。まあずっと続くってことなんだろうなあ。

 エンディングの宮野真守の歌がとにかくカッコいい。声優が演じて唄っている感じではないプロのシンガーとしての歌声って感じ。時が時なら大ヒットしていたんじゃなかろうか。それからスタッフ。キャラクターデザインで名を連ねつつ前編では作画監督を務めていた黄瀬和哉が後編では作画に名前を連ねていた。

 プロダクションI.Gの作品なんだから当然なのかもしれないけれど、事前にそうしたスタッフの情報ってあまり伝わってこなかっただけに、重鎮も参加してのアニメーションであり、結果としてどこまで迫力でハイクオリティのアクションシーンがあって、キャラクターもしっかり可愛い映画に仕上がっていることを、世間が知ったら前編でおやおやと思った人も、改めて映画館に向かうことになるんじゃなかろうか。

 マシュの尻を観に。

 結局そこかい。そこなんだよ。それがFGO。(タニグチリウイチ)

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