裏掟シニメ

18歳のうらさだです。きみを愛したことが最大の罪だった。

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マガジン

  • 夢現の狭間より。

    フィクション

  • 恋愛小説「水彩紙」シリーズ

    実話から始まった、私とあのひととの恋愛小説「水彩紙」のシリーズまとめ。表紙は全て私作。しばらく書きません。

  • 天使とともに。

    親友同士のミナトとカナデの、カイロみたいなお話。触れるのは温もり、待ち受けるのはゴミ箱。 1話:泣いた日 2話:落ちた日 最終話:死んだ日

  • あなたへ。

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【小説】切れかけ電球逃避行

貴方はいつだってそういうことを言う。頼り方も愛され方も慰められ方も知らないあたしを、何度だって抱きしめて同じことを言う。 「僕が愛してあげるから、まだ死なないでよ」 と。 あたしは別に自分がこの世で一番不幸なんだなんて言ってるわけではないんだ。ただ、苦しくてもう息も吸えないような夜に一人になっちまうのが耐えられないだけなんだ。あたしは何も知らなかったから。 「どうして向日葵と太陽は恋仲なのかな」 「どうしてって、そういうものなんだよ」 貴方は心底興味なさそうに吐き捨てる。貴方

    • 【超短編】性善説の申し子

      信じるのは性善説か性悪説か。悪と名付けられた例の男はどう答えるのか、世界はもう知ることもなかった。銃声のような音が誰かのイヤホンを突く。アスファルトに滲んだ体液はもう、誰も彼のものとは思えぬほどだったろう。 そんな男にも少年だった頃があった。そして青年、壮年、重ねた嘘と優しさとが到底等しくなれぬまま、男は呼吸を繰り返してしまう。 しかし自惚れとは恐ろしいものだ。男は勤める先で圧倒的な自信、信頼、人脈、人気など、勿論ひとつの実績もなしに得たわけではないそれらを両腕に抱えていた

      • 【短編】海を崇拝

        確かに僕は言った。きみを独りになんてしないと。きみはちょっと目を離したら消えちまいそうだったからね。たとえるなら何だろう、風船かシャボン玉か。いや、やっぱりきみはきみでしかない。 「自然の法則なんてものはなくて、すべて神様の気紛れだと思う」 きみが呟いた言葉を知った喉が勝手に答えを紡いだ。 「そうでなければ、こんなに海は綺麗じゃないよ」 ねえ、僕はもっとキザな台詞でも探せばよかった?どれだけ丁寧に扱っても、僕らが愛と呼んだものは酷く脆くて仕方なかった。 きみはどこからを嘘に

        • 【短編】海の欠伸

          世の中のすべてを知った気でいた。勿論そんなことはなくて、それを知っていながら、すべてを知った気でいた。 だって、誰かが定義した青春はワンパターンで、どれも一言で片付けてしまえるような、冷たい心の奥底に沈めて、何重にも鎖をかけて永遠に見ることもない、そんなもの。二番煎じの人生を歩んで、捨ててきた感情の名前も知らず、罵詈雑言を言い合って死ぬ。どうせ、そんな世界だろ。 「いつまで斜に構えて生きていくつもりなの」 そうからかった君に私は言うんだ。 「死ぬまでさ」 私が太宰治を読んじゃ

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        【小説】切れかけ電球逃避行

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        • 夢現の狭間より。
          46本
        • 恋愛小説「水彩紙」シリーズ
          4本
        • 天使とともに。
          3本
        • あなたへ。
          5本

        記事

          【短編】シーラカンスの背骨

          愛で世界を救えるらしい。馬鹿だよ、それでほんとうに世界が救われるなら、僕みたいな捻くれた人間なんてとっくにいなくなっている。骨になったら残りもしないのに、愛だの心だのが皆は好きだ。 で、そういうのは強がりで、結局あのひとに惚れちまって、だって、中途半端な優しさでひとを弄ぶような、美しいひとだったから、なんて、これもまた言い訳で。 あのひとは優しいんだ。とっても。他人の痛みを己の前でだけでも最小限にしようとして、結局己が痛い思いをしている。あんな、すべてを背負い込んでひっそり

          【短編】シーラカンスの背骨

          【短編】白薔薇

          爪。あのひとの爪。長くて綺麗に磨かれているでしょう、それはもう恋人がいるひとの爪なの。だから、あたし、それが叶わない恋だなんてのは初めから知っていたの。 悪く思わないで頂戴ね。あたしがあんたを一番に出来ないこと、ちゃんと話してあったでしょう。そうしてあんたもそれで、うん、それでもいいや、と、しっかり頷いてくださったでしょう。こうしてあたしがあのひとの話をしていたって、あんたはもう泣かないでしょう。だって、あたし、それでもちゃんとあんたが好きなんだもの。 嗚呼、そうやって全部を

          【短編】白薔薇

          【超短編】消しゴム顔(再投稿)

          2022年06月05日投稿作品 「毎週ショートショートnote」企画 お題は「消しゴム顔」 ーーああ、この顔には表情がないばかりか、印象さえない。特徴がないのだ。たとえば、私がこの写真を見て、眼をつぶる。すでに私はこの顔を忘れている。 「人間失格」の四文だ。顔だけ消しゴムで消されたように何一つ浮かばないような、そんなことがあろうか。十歳の少女は一旦、本を閉じて考えた。 たとえば、顔を触ってみる。ある。確かに、額が、眉が、眼が、鼻が、頬が、口が、ある。鏡の中の少女は粋な笑

          【超短編】消しゴム顔(再投稿)

          【超短編】檸檬と鞦韆(再投稿)

          2021年03月21日投稿作品 まだ蕾のままの花を抱えて、僕は歩き出す、夜明け前ーー。 あなたの香りがした。 何も嘲るもののない無機質な部屋。透明な四角に夜景が映る。もう、今夜は終わる。 とうとう帰って来ませんでしたね。わかっていたけれど淋しくて堪らない。どうせ僕らはこれきりの関係で、小さい子を出鱈目な玩具で弄ぶくらい安易な設営なんだ。さらさらのシーツがいやに冷たい。あなたがいないから。 僕は二歳の頃にはブランコに一人で乗れていたらしい。となると今の僕はそれ以下だ。あ

          【超短編】檸檬と鞦韆(再投稿)

          【超短編】偽善のキューピッド

          恋愛小説「水彩紙」没案 サイドストーリー はじめて天使に出会ったと思った。 入学式で隣の席になった少女はまるで、この世界の理不尽さによって私達が息をしているという哀しい秘密を、たった一人で背負っているかのような、そんなひとだった。猫背にだらしないポニーテールが飾らない美しさを演出して、私は今までどうやって友達を作っていたのかを忘れてしまうほどに。 その彼女、高崎さんはどうも本を読むのが好きらしく、休み時間には喧騒を傍観するようにオブラートの中にいる。一人で、けれども淋しそう

          【超短編】偽善のキューピッド

          【超短編】コレクション

          2022年4月3日執筆 不恰好な爪先が、女のパーカーの袖口から覗いている。目深に被ったフードを軽く持ち上げながら、女は近寄ってきた。項垂れた私の前で立ち止まったその女は、気持ち悪いほど甘ったるい笑みを浮かべて尋ねてくる。 「お嬢ちゃん、行くとこが無いのかい?」 無いわ、こんな駅前に座り込んで泣いている小娘なんて、家出少女くらいじゃないの。 心の中で蔑みながら女を睨む。現実逃避もいいところだ、隣町に来てみたってエスケープ出来るわけじゃ無いのに。冷たいアスファルトにももう身体が

          【超短編】コレクション

          【超短編】セピア

          たとえば、私がそのひとのうなじをじっと見つめていたらそのひとがうなじを隠してしまったりとか、そこにある林檎を見つめていたら誰かが拾い上げて買って行ったりとかして、本当は視線というものが目に見えるのかもしれないと思ったりする。それを信じて誰かを、なにかを見つめてみたりする。 窓の外は薄く赤に染まりかけているのに、ここだけ切り取られたようなセピア色の世界。古びた商店街の雑貨屋で、弟の手を引き立ち止まる。店主がいない。 オルゴールが歪んだ音になっていきやがて止まるそのときに、私は一

          【超短編】セピア

          【小説】水彩紙、紫

          前作はこちらから↓ 死にたいな、と思った。 君をあたしの隣に居させてしまって、あたしはどんな顔をしていたらいいのだろう。君を彼女さんと別れさせて、一緒に地獄に堕ちてくれる?なんて台詞を吐かせてまで、手に入れて。すごく最低で残酷なのに、幸せだなんて思ってしまって、死にたいな、と。 「天音さん?」 大学の図書館で机に突っ伏しているのを君に見つけられてしまった。“一緒に地獄に堕ち”たあの日以来、初めて会った。高校からの仲のくせにどう接すれば良いのか分からなくなって、顔を背けたま

          【小説】水彩紙、紫

          【超短編】ネクロフィリアと呼べないで

          高校生にもなって小学生のときの様な宿題を出されるとは。思わず唸ってしまった。授業が退屈で作ってしまった犬の耳だらけの教科書を読む気もなく閉じ、もう一度黒板を眺める。チョークで記された宿題とは、自作枕草子を書くことだった。前から二番目の窓際、葉桜の匂いがする私の席。頬杖をつくと自分の髪が机にぱらりと抜け落ちた。こいつも春になれれば良かったのに。 春は曙。その文に準えて“春”を書き、そしてそれをクラスで発表するという宿題。きっと桜とか蒲公英とか書いておけば遊ぶ時間も増えるだろうに

          【超短編】ネクロフィリアと呼べないで

          【超短編】狂愛の餌食

          きっといつまでも毒されていくんだ私は。 母親と手を繋いだ記憶がないと呟く私を、優しく抱きしめてくれるあなたが好き。もうこの傷は一生治らないことを知っていて、精一杯の治療を施してくれる。二度と消えることのない手首の傷をタトゥーで誤魔化してしまうように。 恋人と親を混同させてはいけないとなにかで読んだ。それはきっと母は料理してくれたのに彼女はしてくれないとか、そういう言葉を禁じるためのものだったと今ならわかる。だけれども手を繋ぎたいとか頭を撫でられたいとか、甘えたい感情に蓋をし

          【超短編】狂愛の餌食

          【小説】水彩紙、赤

          対(前編):「水彩紙、青」 《水彩紙、赤》 僕はあんたの小説の中で生きたい。 その繊細で青の淡色のような、曖昧ながらも夏のような、そんな世界で生きられたらーー僕もきっと少しは愛されていられるのだろう。天音さんの原稿用紙を彩るのは小さくて癖のある字なのに、明朝体で書かれたような気もしてしまう。初めて読んだときから、そう、図書室で高崎天音の名が目にとまったときから、僕はずっとファンでいる。僕を再び創作の世界に連れ込んだのは、紛れもない、天音さん、あんただったから。 何を考え

          【小説】水彩紙、赤