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パイサーン師タンマヤートラでの説法~20年前、パイサーン師が日本人から学んだこと~


今年12月1日~8日まで

東北タイのチャイヤプーム県内で行われた

タンマヤートラ(法の巡礼)で

パイサーン師がお話しされた説法が

ネットにアップされましたので

少しずつ翻訳していきます。

今日は5日目の朝にお話しされた

説法から抜粋してお届けします。

テーマは

「20年前、パイサーン師が日本人から学んだこと」

としました。

この日の説法は、

20年前、パイサーン師の日本での体験の話から

始まりました。

この話に、日本から参加された皆さんも

とても喜ばれていました。


私たち日本人が誰でも使っている、あのコトバ!

その大切さがパイサーン師によって

タイの方に伝えられました。

馴染みのある、シンプルなその言葉。

もしかしたら、もう一度

私たち自身も振り返ってみる必要が

あるのかもしれません。

。。。。。。。。。。
(2017年12月05日 朝の読経後の説法より抜粋)

約20年前、私は

日本で行脚をしたことがありました。


タイのお坊さんが2、3人。

日本とタイの在家の方が数人。

山を歩くのではなく、日本の長野県というところの

街を歩きました。


その目的というのは、当時

日本に出稼ぎに行ったり、日本で住むタイ人が

様々な苦しみを抱えており、

彼らの元を訪れて苦しみを減らしていく縁となるための行脚でした。


当時は、冬季長野オリンピックの前で

建設ラッシュが続いていて、タイ人も多くの人が

日本へ出稼ぎに行っていました。


しかし、日本での生活の中で、ストレスを抱えて

悪行(酒、ギャンブルなど)にはまり

お金は稼げても、家族や他者との関係が

うまくいかなくなってしまった人も多かったのです。


行脚は6、7日間でしたでしょうか。

その行脚の様子を現地のメディアが放映してくださったこともあり

それを見たタイの人たちが

道すがらタンブン(徳を積むこと、ここでは

ご飯やお菓子、お金を捧げること)

をしてくださったり、苦しみを抱えた人が相談に来ることもありました。


ある日、こういう出来事がありました。

私たちが道を歩いていると、一台の車が横を通り過ぎました。


そして助手席の窓ガラスがあき、

小学生くらいの男の子が何かを私たちに向かって

大きな声で叫びました。


私ははじめ、こう思いました。

きっと私たちの姿を見て、怒っているのだろう、と。

なぜなら私はそれ以前、イギリスのロンドンにある

アマラワティー寺というタイのお寺に行った時

托鉢に歩いていると、道行く人たちから私たちへ

怒りの言葉を向けられたことがあったからです。


食を頂くために歩く托鉢の習慣はイギリスにはありません。

あるいはタイ人が嫌いだったのかもしれませんね。

ですから彼らから

「このー、乞食め💢!」と言ったニュアンスの怒った表情で

吐き捨てるような言葉を向けられました。


そんなことがありましたら、日本でも同じなのかな、と

思ったのです。


しかし、その日本の男の子の表情は違いました。

大きな声で言った言葉。


それは

「ガンバッテ!!」

でした。


ガンバッテ!!

これをタイの言葉で訳すと、スースー(頑張って、の意)です。


つまり、あなたの努力をこれからも続けてくださいね、

簡単に負けないでくださいね、という意味なのです。


このガンバッテ!!という言葉。

日本の方は、とてもよく使います。


別れ際で相手に励ましの言葉を捧げる時に、

よく使うのですね。


私は日本の方たちのその姿を見て、

タイの私たちの姿を思い起こしました。


私たちは別れ際になんと言いますか?

「コー・ハイ・チョークディー・ナ

 (あなたに幸運が訪れますように)」

と言いますね。


チョーク・ディー(Good Luck)

意味は日本の方と全く逆ですね。


自分の努力ではなく、運任せ。

タイ人は運任せを好み、日本の人は自分の努力を好む。

そうした傾向があるのだと感じます。


日本の方は自分の努力によって、運命を切り開く

幸せをつかんでいくということを重んじていますね。

目標を描いて、そこに向かって努力していく。

そのことをとても重視しています。


ガンバッテ!!


この言葉は、仏教の教えにも沿うものでありますよ。

自らの力を信じ、努力していく。

日本の方はタイの人よりも、仏教を信仰しているという意識は

あまりないかもしれませんけれども

ガンバッテ!の精神の中に

仏教の大切なエッセンスがあるのを感じます。


ウィリヤ、という言葉がありますが

これは「精進」ということですね。

よく聞く仏教用語でありましょうが、

私たちタイ人は普段の生活の中では

自分の努力や精進よりも

幸運・不運を重んじてしまいがちかもしれません。


運が悪いから、何かお祈りをしてもらおう、、

良いことが続くのは、私の運がいいからだ、、

などと自分がなすべき精進を忘れていることも多いのです。


昨日私たちは、このタンマヤートラ

19.4kmを歩きましたけれども

今日も19kmと長い距離を歩きます。


途中で諦めたくなってくるかもしれません。


ぜひこの日本の方の言葉

ガンバって!!

を思い起こしてみましょう。


自分の力を信じて、歩いていくこと。

心に力が湧いてきますよ。

一歩一歩の歩みに頑張ってみる。


頑張ること、と同時に忘れてはならないことがあります。

心を正しく置いていくこと、です。


心を手放しながら歩くということです。

ある人はこういう疑問がわいているかもしれませんね。


「頑張る」と同時に「手放す」ことなんてできるのか?と。


それは両立することなのですよ。

両立しない、矛盾すると見えているのは

手放すことを、「実際になすべき行動を行わない」と

思い込んでいるからです。


手放すのは心の方です。

手放すのは何も動かない、動かさないということではありません。


タムキット(実際に目にみえる行い)は「頑張って」

タムチット(目に見えない心の行い)は「手放す」

矛盾はどこにもありません。


目的地にいつ着くのか、とか早く成功したいという

心に生じる勝手なおしゃべりを手放しながら

足は一歩一歩、頑張って歩くのです。


心は穏やかで安らかでありながら

頑張って歩く!


ぜひ今日の長い距離をこの心持ちで歩いてまいりましょう。

。。。。。。。。

浦崎感想


このお話は以前もnoteで訳したことがあるので

以前からお読みくださっている方は

「あー、あの話だ!」と思い出してくださっているかもしれません。


私は今回、生説法を日本の方に訳していたので

「おお〜、この話をこの日に持ってくるかー!」

と、とても嬉しい気持ちになりながら訳していました。


今回のタンマヤートラは

4日目、5日目が最も長い距離を歩くという行程。


5日目の朝は

「あー、今日も長い距離を歩くのかあ。

 しんどいなあ」

と言った参加者の心のささやきを見抜いて

このお話をされたのかな、とも思いました。


いずれにせよ、ガンバって!という

私たちには馴染みのある言葉を

こうして励ましの言葉として活用してくださる姿に

私はとても温かいものを感じました。


この日、歩いている間何度か休憩時間がありましたが

その時にタイの方が

「ガンバッテ!!」と楽しそうに

声を掛け合っていた姿もありました。


心は成果への執着を手放しながら、

行ないは自らの頑張りを信じる。


パイサーン師が日本の方から学ばれたことを

また私たち自身も、さらにバージョンアップして

身につけていきたいものですね!


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