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DBJ「日本政策投資銀行」:PPP/PFI20年の歩み、「新たなステージ」での活用とその方向性を読んで

 本書は、1999年のPFI法成立から20年が経過し、PPP/PFIのこれまで取組とこれからを提言したことから、タイトルを「地域創生と未来志向型官民連携」と名付けられている。

1.本書の目的

 本書は、PFI法成立から20年間が経過したイマにおいて、PFIなど官民連携の第一線で活躍する有識者(内閣府、DBJ、大学機関、シンクタンク等)の知見により、振り返り、新たな令和の時代における官民連携の活用の方向性を示すものである。

2.PFIの特徴と新たな概念

 PFIの特徴として、本書では、以下の5つを掲げている。官民連携というとよく特徴として挙げられる①財政負担の軽減と②財政負担の平準化といった公共のお金の視点で記載されることが多いが、本書はPFIを用いることによっての事業全体の効果を俯瞰的に説明している。

・パッケージでのサービス提供を通じた付加価値創出
・プロジェクト・マネジメント
・リスク分担
・VFM(Value For Money)
・公共施設と民間収益事業の融合・協働

3.PPP/PFIの20年間

 本書によるとPPPの大きな区切りとしては、2011年のPFI法の改正によるコンセッションの導入であり、そこでステージ2に分けられるという。
 確かに、よくPFIでは「ハコモノPFI」と言われるように、公共施設のハード~管理運営をサービス購入型と類される方式によりPFIを用いられてきたことが多い。
 しかし、整備中心から運営中心に比重が大きくなっていることがPFIの傾向、ステージ2と思われる。運営重視型PFIについては、公民連携最前線において、まとめられているので、参考にすると良い。

4.これからの官民連携

 これからのステージは、ステージ1からステージ2へは、①扱う範囲(スケール)の拡大と②ハードからソフト、の2つから分類化しているが、今後のステージ3では、スケールの拡大とソフト至高の2つがミックスされたものであると記載されている。
 その例として、隣接する市町村が広域連携し下水道事業のコンセッション事業に取り組むような事例である。
 つまり、点として公共施設をPPPにより整備~管理運営するのではなく、エリアマネジメントのように面として事業を捉え、ソフト事業にも注力しながら事業を遂行していくエリア全体での価値創造が求められている。

5.感想

 この本を読んで、確かにPPPは1施設の手法論として捉えられることが多いが、BIDで有名なブライアントパークのように、点から面を変えていく仕組みづくりをつくっていくことが、今後重要だと感じた。

 しかし、民間事業者はエリアマネジメントのようなソフト事業を実施する上での「見えないリスク」が多く含んでおり、官民のリスク分担がさらに重要になる可能性が高い。一般的に金融機関からSPCに融資する際はデューディリジェンスを実施し、リスクがSPCに内包されていないか、パススルーを徹底されているかを重要な判断指標とすることが多く、金融機関側から見ても課題がある。

 ステージ3の新たな手法として「SIB(Social Impact Bond)」と言われるような成果連動型PPP(PFS)がまちづくり分野での適応も検討されており、今後のまちづくりに必要となってくるものと思われる。


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