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稼ぐインフラをつくる「コンセッション」とは

 地方公共団体は厳しい財政状況の中で、どのように稼いでいくかが重要となり、その手法の1つとして、美術館や高速道路等のインフラ・公共施設をより民間活力を導入する「コンセッション」が注目されている。
 コンセッションは2011年のPFI法の改正により追加された制度で公共施設等運営権と呼ばれている。PFI法の流れは、以下に整理しているので参考にしていただきたい。

1.コンセッションとは

 コンセッションとは、「利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式」と内閣府により定義されている。
 つまり、公共施設である美術館等を利用する際に支払う「利用料金」を直接民間事業者が受け取り、それらの収入を基に美術館を民間のノウハウを使ってより魅力的な=稼げる施設にするといった、行政が所有する公共施設を使って民間が運営することである。

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図 直営とコンセッションの収支のイメージ(出典:文科省)

 民間は、公共施設を使って運営させてもらう権利「運営権」を得る代わりに、地方公共団体に「運営権対価」を支払っている。関西国際空港がコンセッション事業としては有名であり、年間490憶円を支払っている。

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図 コンセッション事業のスキーム(出典:三井トラスト基礎研究所)

2.コンセッション事業の特徴

 コンセッション事業は、指定管理制度(地方自治法)といった制度と比べて自由度が高く民間事業者のノウハウを活用し易いと言われるが、その自由度について解説していきたい。

①民間の使いやすいように公共施設をアップデートできる
 運営権の中には、新築や更新を除く大規模修繕等を民間事業者の裁量で実施する事が可能であり、収益アップに繋がりやすい改修が可能となる。

②長期間の運営を実施することができる
 公共施設を管理運営する手法は指定管理は凡そ5年間程度と長期の見通しが立てれないことから①のような施設投資も出来なかったが、コンセッションは事業期間の上限がなく、関西国際空港は44年間、愛知県有料道路は30年間と設定され、長期運営が可能となる。

③本体事業だけでなく、付帯事業として多様な事業を実施できる
 コンセッション事業の収入として、公共施設の利用料金だけでなく、レストラン・カフェ等の付帯施設事業やコンサート・イベント等のソフト事業を実施することにより総合的な事業収支を見込むことが出来る
 また、PFI法の第69条等を活用して、第三者に転貸することが可能となり、デベロッパー的な収益構造が可能となる。

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図 収入源の例(出典:文科省)

④専門性の高い学芸員等を確保しやすい
 文教施設等でコンセッション事業を用いる場合には、学芸員等の専門的な人材を確保することが重要となるが、コンセッション事業は以下の手法を用いることが可能となり、専門員を確保しやすい

・PFI法に基づく退職派遣制度の活用
・公益的法人への一般職の地方公共団体の派遣等の法律に基づく派遣
・条例の規定に基づく休職派遣
・退職した公務員を運営権者として雇用する

⑤みなし物件として金融機関の資金を活用できる
 運営権は、建築物等のモノではないが「見なし物権」とすることができ、金融機関からの融資や投資家からの投資を受けることが可能になり、自己資金だけでなく、金融機関の資金・モニタリングを活用した安定した事業を実施する事が可能となる。

3.今後のコンセッション事業

 内閣府が公表する「PPP/PFI推進アクションプラン(令和2年度)」において、コンセッション事業は平成25年から令和4年の10年間で4兆円の事業目標を掲げていることからも、一層の推進が予想される。
 分野としては、空港や水道、下水道、道路、文教施設、公営住宅が具体的に示されている。
 また、キャッシュフローを生み出しにくいインフラについても工夫したコンセッション事業の実施が望まれる。



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