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【SNK】おにいさまへ【SNK】

 これ、昔別のところでアップした記事に加筆修正した記事ダス。

 SNKの格ゲータイトルには、意外と兄&妹という組み合わせが多いような気がする。いや、たぶん多い。
 おそらくその筆頭に来るのは『龍虎』のリョウとユリであり、それに次ぐのが『餓狼』シリーズのビリーとリリィであろう。『餓狼』には牙刀とほたるもいる。また、『サムスピ』にはタムタムとチャムチャム、蒼月&火月と葉月、『月華』には守矢と雪がいる。『KOF』オリジナルキャラでいえばハイジとローズ、デュオロンとシャオロンがそうだし、庵とデュークにも、画面や紙面に出たことこそないが、設定上では妹がいることになっている。
 もしかしたら誰かを取りこぼしてしまっているかもしれないが、まあだいたいこんなところだと思う。
 で、こうしてつらつらと列挙してみると、兄と妹の関係にはいくつかパターンがある。

 まずひとつ目は、何らかの理由で親が不在だったため、兄が幼い妹を守って戦うパターン。具体的にいえばリョウとビリー、それにデュークがこれに当てはまる。というか、実はこの3組は境遇がやたら似ている。
 リョウは母が事故死、さらに父タクマが失踪したためにストリートファイトで金を稼いでユリを育てていた。
 ビリーは両親が死んだあと、リリィを育てるために工場ではたらいていたところをギースの目に留まって裏社会入り。
 デュークは両親に先立たれた状態で妹が難病にかかり、その治療と引き換えに秘密結社アデスに加わり、D型改造人間の実験体に志願した、という設定。
 ビリーとデュークはサウスタウンで暮らしており、おそらくリョウたちもサウスタウンのすぐ近くに住んでいたとおぼしい(初代『龍虎の拳』は、ユリを救出するためにリョウロバがサウスタウンに乗り込む、というストーリー)。ところが、これほど境遇が似ているというのに、リョウは空手バカだが善人に育ち、ビリーはギースの右腕となり、デュークにいたっては人間をやめている。
 リョウが悪の道へ進まなかったのは、失踪したとはいえ父が生きていたことと、父から叩き込まれた極限流(の精神論的なあれこれ)が少なからず関係していたからだと思われる。死んだ親の代わりにギースから強い影響を受けたビリーや、親代わりになるような大人もなく、少年時代から悪の組織にどっぷりつかるはめになったデュークのことを考えると、人間の人格形成においてどれだけ親の影響が大きいか、よく判ろうというものである。

 次は、兄を追って妹も過酷な戦いの道へ進むというパターン。これに該当するのは牙刀&ほたると守矢&雪、デュオロン&シャオロンの3組だが、みんな揃って親殺し要素がかかわってくるところが業が深い。
『KOF15』参戦も記憶に新しい牙刀は、理由は不明ながらも父が母を殺して失踪したため(少なくとも彼はそう確信している)、ほたるに何も告げずに父を捜すための旅に出た。もちろん母の仇として父を倒すためである。
 片や、ほたるからすれば母の死とほぼ同時に父と兄が失踪するという最悪な状況だが、それでも絶望せずに前に進もうとする健気さは、あの男臭い世界観における一服の清涼剤といってもいいだろう。ただし、牙刀と対面したほたるは、彼を見ても兄だと認識できず、「イトカツがなついている……ってことはきっとこの人が兄さんなんだ!」とペットのなつき度で判断するあたり、実はたとえようもない悲劇のせいで記憶障害を起こしている可能性もある(『15』ではさすがにちゃんと自分で兄と判断している)。
 続いて守矢と雪のケース。彼らは嘉神慎之介に義父を殺害されているのだが、守矢が義父の遺体のそばにいるのを見た義弟の楓が、「義兄さんがおとうちゃんを殺したのか!?」と早とちりし、なぜか守矢もそれを否定しなかったため、以降、守矢は楓から義父の仇として追われることになる。
 それに対して、雪は守矢が殺したのではないと信じているが、とにかくふたりの衝突を防ぐために守矢を捜している――という状況。ちなみに、守矢が自分が義父を殺したのではないとその場で弁解しなかったのは、本当の仇(=嘉神)のことを教えれば、楓は「おとうちゃんの仇!」とばかりに嘉神に挑んで命を落としてしまうと危惧したためだろう。別に寡黙でクールな剣士を気取っていたからではない(はず)。
 そして最後にデュオロン&シャオロン。ふたりの父であるロンは、飛賊四天王のトップであると同時に一族の長だったが、ある夜、里に住む一族のほとんどを虐殺して逐電してしまった。ロンの真意は不明ながらも、デュオロンは一族の裏切者となった父を捜し出して殺すための旅に出る。
 そしてシャオロンも、父と兄の骨肉の争いを防ぐため、兄よりも先に父を見つけ出そうと旅に出た――と書くと、守矢たちのパターンに似ている気がするが、実は守矢が潔白だったのに対し、ロンのほうは自分の妻も含めて里にいた一族のほとんどを本当に殺している。最初のパターンの締めといっていることが矛盾するような気がしなくもないが、人格形成に影響しようとしまいと、ヒドい親ならいないほうがなんぼかましかもしれない。

 そして3番目のパターン、妹を救うために戦う兄。ふたたび登場のリョウ&ユリ、風間兄妹、ハイジ&ローズがこのパターンといえる。
 これらは3組とも妹が敵キャラもしくは敵組織に拉致され、その奪還のために兄が戦いに身を投じる。ただ、このうちローズだけは素で性格が悪く、プレイヤーからすれば、拉致された(厳密にいえば牡丹に洗脳された)のも自業自得としか思えない。しかも、それを助けに向かったハイジの活躍はゲーム中では描かれない(だって『KOF XIII』にハイジ参戦してないしなあ)。

 最後におまけで、兄はともかく妹は何も考えていないパターン。これはタムタム&チャムチャムだけで、兄タムタムのほうは仮面の力を借りて戦ったり、異国の地でブッ倒れて死にかけていたり、さんざんな目に遭っているのだが、妹のほうはかなりお気楽。
 おそらくチャムチャムの中で兄への思いが占める割合はせいぜい30パーセントほどで、残りはすべて「バナナンうめえ!」で埋め尽くされていると思われる(当社独自調査による)。

 以上、兄妹たちは大雑把にこのように分類できるわけだが、さりとて「どいつもこいつも似たような設定じゃねーか!」と感じるより、「ほほう……どの子(妹)も可愛いですね。ぼくは光合成ができそうな葉月ちゃん推しです」という印象がまず先に立つのは、SNKのキャラ作りのうまさというべきだろう。
 ちなみに、守矢&雪は血縁関係のない義理の兄妹で、雪は(おそらく完全に)守矢を兄ではなく異性として愛しているようなので、厳密にいうとここに含めるのは正しくないかもしれない。デュオロン&シャオロンは異母兄妹なのでかろうじてOK。

 ちなみに次回は、SNK格ゲーの一大派閥、双子キャラ解説。

なぜ双子キャラが多いかって? 流用が利くからに決まってるじゃありませんか。

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