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【SNK】身分格差【侍魂】

『サムスピ』関連の記事といえば? そう、無駄に中途半端なアカデミックさがウリ! 中途半端に詳しいぼくが解説! そう、ぼくが!

 ということで、今回は江戸徳川幕府体制下におけるお侍たちの身分制度について。
 ひと口に侍といっても、実際には細かい定義みたいなものがあって、おそらくだが、覇王丸や右京さんは侍ではない
 まず、一般的に「侍」だと思われている人々(=腰に二本差しのちょんまげども)は、そこそこ厳密にいうと、ひとくくりに「士分」と呼ばれる階層に相当する。もしかすると武の身で士分ということなのかもしれない(よく判らんが)。
 で、その士分は大雑把にいって上士と下士に分類される。そこそこ厳密にいうと、この上士のことを侍、下士を徒士かちと呼ぶ。このへんの分類は、戦国時代に馬に乗って戦うか徒歩で戦うかという身分差も関係してできた呼び方だと思うが、とにかく侍というのは士分(=武士)の中でもハイクラスな人々のことを指すのである。

 それでは戦国の世が過去のものとなった江戸時代、侍=上士たちは何と呼ばれていたか。
 もともと馬に乗って戦場におもむくのはかなり身分の高い武士だけであり、彼らは自身が仕える大名たちにじかに目通りすることが許されていた。すなわち、徳川家のお膝元に限定していうなら、それは徳川将軍に拝謁することが許される身分、いわゆる御目見おめみえが許される旗本たちを意味している。つまり、旗本たちより身分が低く、御目見が許されていない御家人たちは、そこそこ厳密にいえば侍ではなく、徒士、あるいは下士なのである。
 ということを踏まえ、覇王丸、右京、十兵衛、幻十郎、慶寅について見てみよう。

 まずは覇王丸。以前の記事の中で触れたように、覇王丸はもともと旗本の長男坊として生まれた。つまり、順当に父親の隠居後に家督を継げば殿さまと呼ばれる身分となり、裃を着て江戸城にも出入りできる侍になれたはずなのだが、ご存じの通り、家督を継ぐ前に家を捨てて出奔してしまった。そのため、現在の身分は侍ではなく浪人ということになる。

 次に右京さん。途中で設定が変更されたこともあったが、おそらく最終的には、右京さんは野武士の末裔とされており、近江で生まれ育ったことになっている。おそらく農村に住む武士、郷士ごうしと呼ばれる階級だったのではないだろうか。
 そして、覇王丸の「お、しず……!」と同じくらいに知られている「圭どの――!」でお馴染みの小田桐圭は、右京さんが住んでいた土地の領主の娘である。右京さんは彼女のために病身を押して究極の花を捜しに出かけるほどの圭どのラブであったが、たがいの身分が違いすぎるということを承知していたために、最後まで思いを打ち明けることはなかった。つまり、身分的には侍ではなく徒士である可能性が濃い。

それにしても中国人の右京さん好きは謎なんだぜ。

 一方、十兵衛の旦那については、土佐の貧乏武士の子として生まれ、のちに柳生家の養子となったという設定だが、この養父が宗矩だとされていたりして、どうにも時空のゆがみが生じていて整合性が取りにくい。
 ただ、いずれにしても、柳生家というのは一時期を除いてずっと大名だったはずなので、十兵衛は大名の養子、なおかつ江戸城に登城してふつうに将軍や老中たちとばんばん会っているので御目見以上の旗本格、すなわちまぎれもないといえる。

まあ、10代の幼妻を持つサラリーマンだったこともあるが……。

 そして牙神幻十郎。そもそも彼の場合は父親の身分が明確ではない。エキセントリックだった幻十郎の母親は、幻十郎の父はどこぞの殿サマだと口走ることもあったようだったが、可能性としては低いだろう。
 結果的に、彼はあくまでただの町人として生まれ育ったのち(まあ、ふつうの町人は母を斬り殺したりしないわけだが)、勝手に刀を持ち歩いて人斬りをやっているだけの凶状持ちである。見た目は覇王丸よりよほど清潔そうだし、髪も総髪に結っているし、侍っぽく見えるのは事実だが、幻十郎もまた侍ではない。よくて町人。もしくはファッション侍やビジネス侍あやかり侍といってもよかろう。

 そういうわけで、もともと『サムスピ』にはそんなに侍は多くない、といわれていたように、正しい意味での侍はごく少数といえる。上に列挙したメンツの中では十兵衛のみが明確に侍と呼べるキャラであるが、当然、彼が仕えている徳川慶寅もまた、格としてはれっきとした侍である。武士としての格はもちろん、慶寅くらいになると朝廷から官位のひとつふたつはもらっているだろうし、その意味でも、ゲーム中に登場するすべての侍っぽいキャラの中では彼が一番地位が高い(従三位くらい?)。

『サムスピ』にはほかにも蒼志郎や刀馬、銃士浪などの侍系キャラはいるのだが、あいつらみんな御庭番衆とかいう謎の組織の出身なので、今回はカッツ・アイ!

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