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【SNK】食材の見極め【SNK】

 ぼくが二次創作を書く場合、設定そのほかの情報が十二分に出ていて、ぼくがちゃんと把握できるキャラでないかぎり、それをメインに据えようとは思わない。
 また唐突な自分語りどうした? といわれそうだが、誰で二次創作を書くかという意味でのキャラ選の話。

 当然といえば当然だが、そのキャラのことをよく知らなければきちんと描くことはできない。たとえばパンダの絵を描こうと思った時に、
「……パンダの白と黒の塗り分けってどうだったっけ?」
 みたいにうろ覚えだったらちゃんとしたものは描けない。たとえうろのまま書いたとしても、パンダをよく知る人間が見れば、
「あ、こいつパンダのこと知らねえな」
 と即座に見抜かれてしまう。そうなると、よほど面の皮の厚い人間でないかぎり、とても恥ずかしい思いをする。要はそれと同じだと、ぼくはそう考えている。

ちな、SNKのパンダといえばこれな。

 テリーというキャラ、リョウというキャラ、京というキャラ――それぞれの設定、性格や口調、口癖のようなもの、そういった要素について詳しく細かく把握できていればできているほど、それだけ「本物」に近いテリーたちを描くことができる。キャラを食材、でき上がる二次創作作品を料理とするなら、食材についてよく知らなければおいしい料理は作れない。つまりはそういうことである。

 もちろん、食材に関する詳しい知識がなくても料理を作ることはできる。ナスは水に浸けてアクを抜いたほうがおいしいよとか、豚肉は焼く前にスジを切っておくといいよとか、エビの背ワタはきちんと取ったほうがいいよとか、おいしい料理を作るためには、そうした細かいポイントまで把握しておくほうがいいのはいうまでもないわけだが、仮に知らなかったとしても、麻婆茄子なりポークソテーなりエビチリなりは作ることができる。問題は、でき上がった料理に自分で納得できるかどうか。
 現実の料理のことでいうなら、ぼくはかなり妥協できる。特に、自分だけが食べるものなら手間をかけるより時短したいから、ガンガン手を抜くのもためらわない。70点くらいのデキの料理でもぜんぜんいい。健康を害するとかでなければ明らかな失敗作でも平気で食べる、それがこのぼく。
 ただ、二次創作となるとそうはいかない。いや、もちろん商業でもそうなのだが、たとえ二次創作であったとしても、というべきか。とにかくこの手のものを書くという作業においては、まず第一にぼく自身が楽しくて、なおかつ気に入る仕上がりでなければならない。
 そうなると、食材を吟味し、その特徴を把握し、念入りに下ごしらえするところから始める必要がある。逆にいうなら、そういう食材が手に入らないかぎりは料理はしない。
 ――というのが二次創作についてのぼくのスタンス。あくまで現実の料理の話ではなく二次創作の話な。
 だからといって、とにかく旬の食材を買い集めてきて心のおもむくままに料理することを否定するわけではない。いや、ほんと、そういうのもアリだと思う。初めて目にしたキャラにびびっと来るものを感じ、ほとんど情報がないままパッションに突き動かされて一気に書き上げてしまうとか、そういうケースもたくさんあるだろう。
 だからそれもアリ。ただし、ぼくの調理のスタンスがこういうものだというだけ。あとで振り返った時に、「あー、ダメだ、これキャラの解釈間違ってる」って思いたくないから。

 そんなこんなで、ぼくが昔からいるキャラの二次創作ばかり書くのは、食材としての彼らの特徴がよく判っているからである。SNK格ゲーキャラ史の中では相対的に新参に近い『MI』キャラの二次創作が多いのも、食材の特徴をわりと正確に把握できているから。
 逆に2010年代以降、具体的には『KOF XIV』以降の新生SNK時代の新キャラたちの二次創作をあまり書かないのは、それらの特徴をまだ把握しきれていないためである。昔はムックや雑誌によって設定を補足するような情報がどんどん追加されたり、食材への理解を深めやすい時代だったのかもしれないが、最近はそういうものもなく、むしろキャラ設定の項目が以前より減っているくらいなので、自分で納得がいく二次創作を書くのに二の足を踏んでしまうところもある。
 一応シュンエイやククリについては、『XV』で理解が深まった部分もあるが、それ以外のキャラに関してはわりと謎が謎のままで終わってしまった気がする。まあ、これまでのすべてのキャラがその過去をすべて明かされていたかといわれればそうではないし、別にそれはそれでかまわないのだが、その状態の食材が使いやすいのかという意味では、これまたケースバイケースになる。
 たとえばセスは、何やらよう判らんエージェントという職業をしていてどうも家族がいるらしい、くらいのことしか判らない状態のまま、20年以上も『KOF』の常連をしているが、食材としてはとても使いやすい。彼をメインにして私生活を描くという方向性では使いにくいが、ほかの食材――怒チームとかアルソワとかヴァネッサとか――と組ませることで、実にいい味を出してくれるキャラである(とぼくは考えている)。
 がしかし、同じように私生活が謎に包まれているキャラでも、『XIV』でデビューを果たしたルオン、あるいはハインあたりのキャラは、逆にメチャクチャ使いにくい食材である(とぼくは考えている)。これは、素材としてのルオンたちがどういう方向性の味なのか、イマイチよく判っていないからそう感じるのだろう。
 前述のセスには、「いろいろ謎はあるが、大雑把にいって正義側の人間。おおむね犯罪者や犯罪組織を追い詰めるために行動している」という具合に、素材の味がわりと明確になっているから、どんな料理に使えばその味が際立つか、こちらとしても判りやすい。
 一方ルオンやハインに関しては、『XV』のエンディングの段階でギースに敵対するような行動は取っているものの、だからといって単純に正義側の人間かどうかもまだ判断がつきかねるし、その行動原理も不明のままになっている。ちょっとかじっただけではまだ味の方向性が掴みきれないというのが正直なところで、だから彼らの二次創作を書く踏ん切りがつかない。うっかり妙なことを書いて、あとから公式で否定されたら恥ずかしいじゃん? キャラの解釈が明らかに間違ってたら恥ずかしいじゃん? じゃんじゃん?

 ただ、今後もシリーズが続いていけば、彼らに関する情報も徐々に追加されていって、どんな食材なのか、その味も鮮明に理解できてくると思う。そうなればぼくも、
「これなら(ぼくがぼくに対して)自信を持ってお出しできる……!」
 と考えて、ルオンやハインの二次創作を書くかもしれない。

 ただ自分でもちょっと不思議なのは、同じような新参キャラのはずなのに、『サムスピ』の夜叉丸だのレイシャンだのは、さほど悩まずにふつうに書けてしまった。もしかすると、どちらも馴染みのある食材と組ませたからよかったのかもしれぬな。


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